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30.俺の従者
しおりを挟む狸耳の人は、今回のことに興味津々みたいだ。僕にどんどん迫ってくる。なんでそんなに、顔近づけてくるの!?
「じゃあ、違うんですか? レヴェリルイン様が魔法で城吹っ飛ばしたって話……!!」
「え…………あ、え、えっと……そ、れは…………」
「やっぱり本当なんですか!?」
「……は、い…………」
「なんだ……じゃあ、あってるじゃないですか!!」
「え!? あ、ち、ちがっ……!! 違うっ……あ、あ……そ、そうじゃなくて…………っ!! し、してないって言うのは……だ、だって……ご、ごかいっ……!」
「誤解?」
「誤解…………です……ま、マスターは……人を傷つけたり……しないからっ……!」
このままじゃ、レヴェリルインが一方的に悪くなる。そう思って言ったけど、今度は、警備隊の人が僕に迫ってきた。
「何が誤解だ? 集まった貴族ごと、城をぶっ飛ばしたって聞いたぞ?」
「そ、そんなっ……そんなの、ちがっ……!」
「何が違うんだ!! はっきり言えよ!! さっきからずっとウジウジしやがって!!」
「ご、ごめんなさっ……で、でもっ…………ち、ちがっ……!!」
ついに怒ったのか、相手は僕の胸ぐらを掴んできた。
「ひっ……!」
すくみあがる体。
違うって言いたいのに、口から何も出てこなくなる。
目の前の人の姿が怖い。その姿が揺らいで見える。
息が苦しい。否定するはずの口が震えて胸がじわじわ啄まれていくよう。
怯える僕を、二人が見ている。何か言わなきゃ。そう思っても、声が出ない。レヴェリルインはそんなことしないって言いたいのに……
「……ぁっ…………あのっ…………」
「あ? 聞こえねえぞっっ!!」
「……ぅっ……!」
締め上げられて、声が出ない。
すると、隣にいた狸耳の人が、警備隊の人を止めてくれた。
「や、やめて! ソアドルト! その人を離して! それに、マスターって……そ、その人もしかしたら、レヴェリルイン様の従者か何かかもっ……!!」
けれど、警備隊の人は頭に血が昇ったらしく、僕を離そうとしない。
怖くてたまらなかったけど、レヴェリルインの名前を聞いたら、微かに体に力が戻った。
「……れ、レヴェリルイン様はっ…………」
「あ? なんか言ったか?」
警備隊の人は、ますます強く僕を締め上げる。息ができなくなりそうで、僕は目を閉じた。
その時、レヴェリルインの声が聞こえた。
「何をしている?」
その声とともに、僕は抱き寄せられた。レヴェリルインだ。警備隊の人から隠すように僕を抱き寄せた彼は、さっきみたいに強く抱きしめてくれる。
その腕と体に包まれて、すぐ耳元で囁かれた。
「……もう……大丈夫だ」
「あ……」
驚いて見上げる。彼は僕に優しく微笑んでいた。そして、僕を二人から隠して、二人を睨みつける。
「俺の従者に何か用か?」
彼に睨まれて、警備隊の人が一歩下がる。
「レヴェリルイン……さまっ……! い、いえ……」
「俺の従者と何を話していた?」
「な、何もっ……」
「何も? 何もってことはないだろう。確かに、何か話していた。俺は、その声に気づいて来たんだ」
「だ、だからっ…………な、なんでもっ……」
「警備隊がこんなところで何をしている? そっちは新聞記者だろう?」
彼が、隣の狸耳の人に言うと、狸耳の人は胸ポケットからのぞいていた手帳を慌てて隠していた。
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