いつも役立たずで迷惑だと言われてきた僕、ちょっとヤンデレな魔法使いに執着された。嫉妬? 独占? そんなことより二人で気ままに過ごしたいです!

迷路を跳ぶ狐

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7.思い出して頭抱えてました

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 ヴァソレリューズ様の屋敷までは、魔法をかけた馬車で、夜になる頃にはついた。彼はそれまでの間、魔法の話をたくさん聞かせてくれた。

 屋敷につく頃にはもう夜で、僕は、風呂に入って眠るように言われた。

 部屋も用意してもらえたけど、彼は忙しいのか僕を部屋まで送ると、「詳しいことは明日話すね」って言って、部屋を出て行った。

 もう少し話したかったけど……

 また明日も会える。

 なんだかまだ信じられない。

 だけど嬉しくて、ドキドキしたまま布団に入ったら、その日はすぐに眠ってしまった。







「なんなんだ……一体…………」

 一人呟いていたら、僕は力が抜けて、本棚にこん、と頭をぶつけてしまった。

 ここは、ヴァソレリューズ様の屋敷の一室。そこにはずらっと棚が並んでいて、魔法の道具が並んでいる。

 ヴァソレリューズ様が僕を呼んだのは、僕にここにある魔法の道具の状態を確認して修理や調整をして欲しいかららしい。
 朝からたくさんの使用人の方に挨拶をして、ずっと緊張していたけど、みんな優しくしてくれて、ほっとした。

 部屋に並んだものには、精霊の魔法の道具が多い。ヴァソレリューズ様の一族が集めたもので、ここは、その管理のために設けられた屋敷らしい。
 中にはだいぶ古い道具もあって、他では見ることができないものもあった。それだけのものがこれだけ並んでいるなんてびっくりしたけど、そんなものに僕が触れて、それの管理をできることは嬉しい。

 屋敷の至る所に魔法の道具が保管されていて、それに関する研究もここで行われているらしい。

 中でもこの部屋にあるものはかなり古くて、動くかどうかも分からず、魔力が暴走しないように抑えておくだけで放置されているもののようだ。

 なんでヴァソレリューズ様が僕をここに呼んだのか不思議だったけど、それなら僕でも役に立てそうだ。

 早速仕事を始めた僕だけど、仕事がひと段落ついたら、今朝のことを思い出してしまった。

 今朝はいつも通り早く目が覚めたけど、朝起きたら、いつもと全く違うところにいて、もう一回昨日何があったのか確認するまで、ちょっと時間がかかった。

 まだ僕にはヴァソレリューズ様に召し抱えられたことが信じられなかったらしい。

 だって、ずっと領主様の城で会えるだけだったのに……

 ここへ来た時のことを思い出したら、ますます心臓が高鳴りそうだった。

 ヴァソレリューズ様のことばかり考えて、ベッドの中でしばらく天井を見上げて、ごろんと寝返りを打ったら、一人でいるはずだった部屋に、ヴァソレリューズ様がいた。

 びっくりして、ベッドから転げ落ちそうになった。

 僕、起きてから結構長い間天井を見上げてぼんやりしてたのに、その時間、ドアが開くような音はしなかった。どうやら、ずっと部屋にいたらしい。

 何してるんだと思ったけど、ヴァソレリューズ様は窓を開けて、やけに爽やかに「おはよう」って言っていた。

 「窓を開けるなんて、そんなことは僕がします!」と言って駆け寄ろうとしたら、「今日は朝早くから、君の寝顔を見に来たから、そのついでだよ」と言って笑っていた。

 朝からヴァソレリューズ様に会えたのは嬉しいけど……

 顔? なんだそれ。なんでそんなもの見に来るんだ??

 というか、そんなものを見るために、どれだけ早く部屋に来ていたんだ。

 寝てる間に、変な顔してたりしないかな……

 何をしていたのかもう少し詳しく聞きたかったけど、なんとなく怖くてできなかった。

 そんなことがあって、朝からびっくりしていたけど、仕事は丁寧に教えてくれた。

 棚にある道具一つ一つを手に取り魔力を込めて、安全を確認していく。

 どれも、かなり貴重なものばかりだ……なかなか手に入らないものも多いんじゃないかな。

 そんな風に仕事を続けていたけど、それがひと段落したら、いきなり今朝のことを思い出した。その度に、変な顔してなかったかな、とか、もう少し気の利いたこと言えばよかった、とか、そんなことで頭がいっぱいになる。

 何してるんだ、僕……

 この屋敷には、魔法の道具が保管された部屋がいくつかあって、隣の部屋には、この屋敷に仕える魔法使いの方がいて、道具の調整をしているらしい。

 だけど、今僕がいる部屋には、僕だけ。ちょっとくらい思い出して頭抱えていても、誰にも見られないからいいか……って思ってたら背後から、声をかけられた。

「何してるのー?」
「わっ……!!」

 びっくりして振り向けば、そこにはやっぱりヴァソレリューズ様。

「大丈夫?」
「へ!? だ、大丈夫って……」
「君の声が聞こえた気がしたんだ。何かあった?」
「え?? あ…………な、なんでもないっ……なんでもっ……ないんです!」

 今朝のこと思い出して頭抱えてました、なんて、言えるわけない。
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