いつも役立たずで迷惑だと言われてきた僕、ちょっとヤンデレな魔法使いに執着された。嫉妬? 独占? そんなことより二人で気ままに過ごしたいです!

迷路を跳ぶ狐

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6.これから二人で住むんです

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 ヴァソレリューズ様が来た時は、いつもお菓子を用意する役目を担っていたし……多分、分かるはずだ!!

 そう思って選んだけど、当たっているかは分からない。

 喜んで……もらえるかな…………

 ドキドキしながら注文していたら、会計をしてくれた店員さんが、僕に微笑んだ。

「今日は…………お連れ様がいらっしゃるのですね……」
「え……? あっ…………い、いえっ…………お連れ様と言うわけでは……」
「え? そちらの方は、あの城のお方ではないのですか?」
「い、いえ……」

 振り向こうとしたら、ヴァソレリューズ様はいつの間にか僕の隣にいて、僕を抱き寄せて言う。

「今日から二人で住むんです」
「…………っっ!!??」

 なんで急にそんなこと言うの!!??

 二人でって…………

 確かにそうだけど。

 だけど、その言い方は何か違う気がします!!

「あっ……あのっ……違うっ……そうじゃなくてっ…………!!」

 ますます慌てる僕だけど、店員さんはにっこり笑った。

「そう……よかった…………」
「え…………?」
「あの城、出られたんですね」
「あ…………」
「また来てくださいね!」

 商品の入った紙袋を渡す店員さんは、どこか嬉しそうに見えた。

 立ち尽くしてその後ろ姿を眺めていたら、ヴァソレリューズ様に隣から抱き寄せられる。

「また来ようね」
「え!? は、はいっ……!!」
「顔見知りみたいだけど、よくここには来るの?」
「は、はい…………」
「じゃあ、馬車の中で食べながら、話、聞かせて?」
「え!?」
「だめ?」
「えっと…………そ、それは構いませんが…………あ、あのっ……これ……僕が食べるんですか!?」
「うん。そのために買ったんだよ?」
「え…………」

 そうなの!??

 てっきり、ヴァソレリューズ様に食べてもらうためのものだとばかり思ってたのに!!

 か、かなりたくさん頼んじゃったけど…………

 ヴァソレリューズ様は、僕に商品の入った紙袋を渡してくれる。そして、先に店を出て行った。

 僕は彼に喜んで欲しくて選んだんだけど……違っていたのかな……

 急いで、僕も彼の後を追って店を出た。

「あ、あのっ…………」
「……どうしたの?」

 ヴァソレリューズ様が振り向いたら、ますます緊張した。

 こんなこと……言っていいのか?

 だけど、せっかく美味しいんだから、ヴァソレリューズ様に喜んでもらいたい。

「……僕は、ヴァソレリューズ様が好きなものを選んだつもりでした…………」
「え…………?」
「…………」

 僕は、ヴァソレリューズ様を見上げた。
 すると彼は、今までで一番驚いたような顔をしていた。

「…………どれも、俺が好きなものだったよ……」
「え……?」
「……ありがとう…………」
「…………」

 うわ…………そんな顔してお礼を言われると…………

 や、やっぱりひどくドキドキするっ……!!

 なんなんだこれ……

「あ、あのっ…………こ、ここは本当に美味しくて……ま、街でも人気の店なんです!!」

 嬉しくなってきて言うと、ヴァソレリューズ様も「屋敷に着くまで一緒に食べよう」って言ってくれた。
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