いつも役立たずで迷惑だと言われてきた僕、ちょっとヤンデレな魔法使いに執着された。嫉妬? 独占? そんなことより二人で気ままに過ごしたいです!

迷路を跳ぶ狐

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8.今は俺に仕えてるんだから

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 僕は戸惑いながらも、ヴァソレリューズ様に話そうと思っていたことを話し出した。

「あっ……そ、それより、ちょうどよかった!! あのっ……いくつか修復が必要なものがあります! 中でもこちらのリストのものは、優先して修復するべきかと……」

 ……なんだか、ヴァソレリューズ様の前だと緊張する……

 辿々しく話しても彼はリストを確認して、「そうか……ありがとう」と言って、頷いてくれた。

「……フェイヴェレルのおかげで、ずいぶん進んだよ」
「そ……そんな…………お役に立てて嬉しいです。これまでは全部、ヴァソレリューズ様がしてたんですか?」
「うん。俺だと動かないものもあるけど、安全を確認して、動かないように魔力で抑えることくらいはできるから」
「…………だ、だったらっ……これからもずっと、僕にさせていただけませんか!?」
「え…………?」
「僕でも、精霊の道具なら動かせますっ……ヴァソレリューズ様の力になれるなら、嬉しいです!!」
「…………俺も。フェイヴェレルと一緒にできるなら、嬉しいな」
「…………」

 僕と?

 そんなの、僕の方が嬉しいのに……

 ヴァソレリューズ様を見上げたら、なんだかますますドキドキして、僕は顔を背けた。

 な、何してるんだ……これじゃまるで、逃げてるみたいじゃないか……

 すると、彼は微笑んで言う。

「行こうか。そろそろお昼ご飯の時間だ」
「へ!? あっ……! は、はいっ……」

 僕は、持っていた道具を棚に戻して、走り出そうとした。

 だけど、僕が離れた途端、さっき棚に置いた道具は光りだし、そこから細い光の鎖のようなものが伸びてきて、僕らが出ようとしたドアに絡みついていく。

「え…………!???」
「わあ」

 びっくりする僕と、あんまり驚いていないような声を上げるヴァソレリューズ様。

 僕は慌ててドアに触れるけど、それは開かなくなっていた。

「なっ……なんでっ…………!? え、え!??」

 光の鎖を出している魔法の道具とドアを何度も見比べてみるけど、やっぱり何が起こったのか、さっぱり分からない。

 けれど、ヴァソレリューズ様は、落ち着いた様子で言った。

「魔法の道具が暴走したみたいだね……」
「へ!?」

 僕は、慌てて魔法の道具に駆け寄った。

 本当だ……道具は微かに光っている。魔力は抑えたはずなのに……ドアが開かなくなったの、これのせいだ。

「も、申し訳ございませんっ……!! これが持つ魔力を抑えきれていなかったみたいで……」
「フェイヴェレルのせいじゃないよ。あれはかなり古いもので、その上多くの魔力が込められたものなんだ。一人で抑え切れるものじゃない。暴走する前に、フェイヴェレルが気づいてくれてよかった」

 そう言って、彼は道具をつまみ上げると、それに魔法をかける。だけど、道具の光は収まらない。

「……少し、時間がかかりそうだ」
「え……?」

 言って彼は、部屋の端にあったテーブルの椅子に腰を下ろした。彼はずっと、それに魔法をかけている。

 ど、どうしよう……僕のせいなのに!!

「あ、あのっ……道具を抑える魔法なら、僕も使えます! 僕が道具の魔力を抑えるので…………」
「……じゃあ、一緒にしようか」

 彼がそう言ってくれて、僕もそれに魔法をかける。
 すると、ヴァソレリューズ様はどこか嬉しそう。

「幸運だったなー……」
「え……?」
「だって、これがドアを開かないようにしてくれたおかげで、こうして、君と二人きりになれたし」
「…………」

 そんなの、僕だって。ヴァソレリューズ様と一緒にいられることは嬉しい。でも、こんな風に迷惑をかけて、申し訳ない。

 それなのに、こんな時にまで心臓が高鳴って、集中できなくなりそう。

 ……僕、何考えてるんだ……

 ヴァソレリューズ様は、大金を出してまで僕をここに連れてきてくれたんだ。だったらそれに報いないと……

 だけど真っ赤になるばかりの僕に、ヴァソレリューズ様は、にっこり笑う。

「緊張してる?」
「へ!? え、えっと……」

 もちろん、してる。だって、ヴァソレリューズ様がこんなにもそばにいるんだから。

「何か、分からないことがあったら、俺に言ってね?」
「へ!? え、えっと…………大丈夫です。領主様のお城で、ずっとやっていましたから……」
「………………領主様……? ……また?」
「え……?」

 僕、何か変なこと言ったか……?

 戸惑っていたら、ヴァソレリューズ様は魔法の道具をテーブルに置いたまま、立ち上がった。

「…………フェイヴェレル……昨日も領主様って言ってたよね?」
「へ!??」

 い……言ったのか?

 ……多分、言ったな……ここに来る前のことを話したような気がするし…………

 だけど、だからなんだって言うんだ?? 領主様は領主様だし、僕はあの城でのことを話しただけだ。

 けれど、ヴァソレリューズ様は、また一歩、僕に近づいてくる。

「………………フェイヴェレルは……そんなに、あの男が大事?」
「へ!?」

 ……な、何を言い出すんだろう…………大事って、何が??

 領主様は、僕の仕えていた人だ。だから、そう言う話をしているに過ぎないんだけど……

 …………も、もしかしてっ……何か怒らせた!?

 ヴァソレリューズ様、怖い顔をして僕に迫ってくる。

「あ、あのっ…………えっと…………領主様は、僕が仕えていた方で……」
「今は俺に仕えてるんだ。俺のことだけ、考えてればいいよね?」
「え………………?」
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