いつも役立たずで迷惑だと言われてきた僕、ちょっとヤンデレな魔法使いに執着された。嫉妬? 独占? そんなことより二人で気ままに過ごしたいです!

迷路を跳ぶ狐

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9.俺だけで

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 確かに、今仕えているのはヴァソレリューズ様だけど…………僕はいつか、領主様のところに帰るんだし、そんな怖い顔をして迫ってこなくても良くないか!!??

 なのに、ヴァソレリューズ様は、また一歩、僕に近づいてくる。

「……フェイヴェレル…………領主様、とは、こうして二人で魔法の道具の調整をしたりしたの?」
「へ!?? え……えっと………………そ、そんなことはない……です…………」
「……そう……か…………」

 近づいてくるヴァソレリューズ様にあわせて後ろに下がっていたら、体に何か触れて、後ろに倒れそうになる。背後にあったテーブルに体をぶつけたんだ。

 ……どうしよう…………

 それでも彼は、さらに僕に近づいてくる。

 すでに逃げ場がなくなって、のけぞりそうになる僕の頬に、ヴァソレリューズ様は、そっと触れた。

 目の前の彼にばかり夢中になっているから、別のことに対する注意が疎かになる。

「ひゃっ…………!!」

 な、なに!?? 突然……手首がひやっとした!??

 見下ろせば、魔法の道具から伸びてきた鎖が、僕の手首のところまできている。

 なんなんだ!? これ……どんどん腕に巻き付いてくる!!

 気づいたら後ろ手に縛られていて、急に怖くなった。

 な、なんで…………こんなことになってるんだ?

 顔を上げたら、ヴァソレリューズ様は僕を見つめてニコニコしてる。魔法の道具が僕の腕を拘束して驚く様子もない。むしろ楽しそう。

「もう、領主様のことは忘れて? 今は俺のなんだから、俺のことだけ考えてればいいよ」
「へっ……!? で、でも……えっと…………ひゃっっ……!!」

 腰の辺りに、柔らかいものが触れた。ヴァソレリューズ様の手だ。腰に回ったそれが僕を引き寄せて、すでに縛られた僕とヴァソレリューズ様の体が触れ合った。

 ど、どうしよう…………

 鎖はすでに僕の両手に絡みついている。だんだん強く縛られていくようで、さ、さすがに怖い!!

「え、えっと…………ヴァソレリューズ様……あの、これ…………」
「これからは、俺のことだけ考えて?」
「……え…………えっと……」

 俺のことだけって言われても……

 今以上にですかっっ!!??

 今だって、僕はヴァソレリューズ様のことで頭がいっぱいなのに。

 朝からずっとヴァソレリューズ様のことばっかり考えて、さっきだってヴァソレリューズ様のことで頭がいっぱいで棚に頭ぶつけていたのに!?

 戸惑う僕のすぐそばで、魔法の道具は光を増していく。

 お、おかしいなーー…………

 あの道具、ヴァソレリューズ様と僕とで、込められた魔力を抑えていたはずなのに、とてもそうは見えない。どう考えても、魔力が増していっている。魔法の道具から溢れた鎖が、僕の体にまで絡みついてきた。魔力が増すごとに、ますます縛られていってるんだ。

「あ、あのっ……! ヴァソレリューズ様!!」
「ん? どうしたの?」
「……あ、あの…………これ、魔力を抑えてるんですよね!?」
「うん」
「そ、そんな風に見えません…………」
「え? そうかな?」

 そうかなって……そうだよ!?

 だって、魔法の道具の光、激しくなってる! 魔力が増えている証拠じゃないか!!

 しかも、鎖はどんどん僕に巻き付いてきてるし……抗おうとしても、ヴァソレリューズ様に抱き止められているから、逃げられない。

 焦るばかりの僕。

 それなのに、ヴァソレリューズ様は「そんなことないよ」って言って、首を傾げるだけ。

 そんなことない!? 絶対にあるよ!!

 それなのに彼は、ずっととぼけたまま僕を見つめていた。

「フェイヴェレルは、俺のことだけ見てればいい…………俺だけを……ね?」
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