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36.ごめん…………
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皆にお礼を言った僕たちは、一度、砦に帰ることにした。山の結界も確認しなきゃならないし、あまり砦をあけておくわけにもいかない。
レオトウェルラレット様には、すでに宰相様がいらしたことは連絡してある。やっぱりかなり驚いていた。
帰路に着く僕たちを、街の警備隊と、王都から残党の捕縛のために来た部隊が見送ってくれた。
これからロステウィス様を連れて、砦まで帰ることになる。
宰相様と砦に行くのは初めてだ。それに、会うこと自体、ずいぶん久しぶりな感じがするな……
また来るよ、とは言っていたけど、相手はこの国の宰相。正直、半信半疑だった。だって、宰相様だぞ。そんな方が直接あの砦にこなくても、用があるなら使者を送ればいいだけのことだ。
それに……
なんで、一人なんだ?
なんで宰相様は護衛も連れずに飛んで来たんだろう。宰相様は、「急いでここまで飛んで来た、部隊は後で来る」って説明してくれたけど、まだ誰も来ない。
いくらなんでも、遅くないか?
この国の宰相様が一人でここにいるなんて、警備隊の人たちも驚いていたし……
部隊が後で来るのも作戦、とも言ってたけど……
砦に帰るなら、警備にも普段以上に気をつけなくてはならない。
このまま砦に向かっていいのか? 僕らで宰相様の護衛につくにしても、人数が少ないような気がする。ロステウィス様は宰相様なんだし、その安全は確保しなくてはならないのに。
僕が口を出すようなことではないのかもしれないけど……
「あ、あのっ……宰相様っ……!」
思い切って声をかけると、宰相様は、僕に振り向いた。
「フィルロファル? どうしたの?」
「え……えっと…………あの、宰相様の部隊の方は……もうすぐいらっしゃるのですか?」
「……あ………………」
どうしたんだろう。宰相様、黙っちゃった。
も、もしかして、聞いたらダメだったのか!?
「あの……申し訳ございません。砦の警備を考える上で重要なことだと思い、お尋ねしたのですが……もしかして、作戦上、僕らには部隊の居場所を明かせないとか、そう言った事情があってのことですか?」
すると、王都から残党の捕縛のために来た部隊の隊長も、宰相様に尋ねた。
「私も、気になっていました。あなたのことです。深いお考えがあったのでしょうが、宰相閣下がお一人で、このようなことをなさるなど……よほど綿密に練られた作戦があるのでしょうが、すでに、王都の敵の脅威は去り、残党たちも拘束されました。そろそろ、護衛の配置を考えるためにも、作戦の内容を教えていただきたい」
「…………」
宰相様は、顔を背けて俯いてしまう。そんなに複雑な作戦があるのかな……
「あーー……その、作戦なんだけど……」
そう言った宰相様に、みんなが注目する。
だけど、宰相様はますます話しにくそう。こんなに歯切れの悪い宰相様も、初めてだ。
「その……作戦、なんだけど……あの、ごめん………………実は、ないんだ」
……ない…………?
それを聞いたみんなが、目を丸くしている。
ないって……どういうことなんだろう。
宰相様が一人でここに来たのって、深いお考えがあったからじゃないのか?
「その…………作戦なんて、実はないんだ。ここを凶悪な竜が狙っているって聞いて……部隊は編成されたんだけど、俺の護衛がどうとか、そんな話をしてなかなか思うように進めないから……置いて飛んで来ちゃったんだ……」
「………………」
「………………」
王都の部隊の隊長も、警備隊の隊長も黙ってしまう。
置いてきちゃったって……部隊を? そんなに急いでここまで飛んで来たの??
でも、部隊を置いてきたなんて……え…………お、大事じゃないか!!
オフィセイール様が、困った様子で言った。
「では……宰相様……もしかして、その……本当に、作戦などはなく、ただ部隊を置いて飛んで来ただけ……なのですか?」
「……うん。えーっと……そう……」
「……」
ついに、オフィセイール様も黙ってしまう。
そこに、一人の男が空から降りてきた。息を切らしながら魔法で飛んで来たのは、レオトウェルラレット様じゃないか。
「みんなっ……! 宰相様が、ここにっ…………!」
彼はすぐに、僕らと一緒に宰相様がいるのを見つける。それで驚くかと思いきや、宰相様に駆け寄った。
「ほ、本当にっ……!! こちらにいらしているなんてっ……!」
「レオトウェルラレット……どうしたの?」
「ヴィクトウェトル様の使い魔が来ておりますっ……! 宰相様を探しておられたようで……」
「…………あ…………」
ぼそっと、あ、とだけ言った宰相様は、そのまま黙ってしまう。
レオトウェルラレット様の背中から、小さな、光り輝く犬の姿をした使い魔が顔を出した。もふもふで毛は輝き、思わず触りたくなるくらい可愛い使い魔だけど、それを見た宰相様は、顔色を変えた。
「それ……ヴィクトウェトルの使い魔…………あ、あいつ、もう追いついてきたの……?」
真っ青になって言う宰相様に、レオトウェルラレット様が「はい……」って、苦しそうに答えている。
そして、続いて空から、エメラルドのような色の長い髪の男性が降りてきた。とても美しい人だったけど、かなり怒っているのか、ひどく恐ろしい顔をしている。確か、この国で魔法の管理をしている大臣のヴィクトウェトル様だ。
彼は、宰相様を睨みつけて、ゾッとするくらい冷たい声で言う。
「やっと追いつきましたよ……ロステウィス……」
「ヴィクトウェトル……その……これは……」
「どういうつもりですか!! せっかく編成した部隊を置いて一人で飛んでいくなんてっっ!!」
「で、でも……残党は取り押さえて、竜のことも解決して……」
「残党を拘束したのも、竜のことを解決したのも、警備隊と砦の部隊の功績です。あなたには、これからじっくり説明していただきます!! 覚悟しておいてください…………」
「あ、うん……ごめん……」
そう言って、宰相様は肩を落としている。
宰相様が怒られるところ、初めて見た……
レオトウェルラレット様には、すでに宰相様がいらしたことは連絡してある。やっぱりかなり驚いていた。
帰路に着く僕たちを、街の警備隊と、王都から残党の捕縛のために来た部隊が見送ってくれた。
これからロステウィス様を連れて、砦まで帰ることになる。
宰相様と砦に行くのは初めてだ。それに、会うこと自体、ずいぶん久しぶりな感じがするな……
また来るよ、とは言っていたけど、相手はこの国の宰相。正直、半信半疑だった。だって、宰相様だぞ。そんな方が直接あの砦にこなくても、用があるなら使者を送ればいいだけのことだ。
それに……
なんで、一人なんだ?
なんで宰相様は護衛も連れずに飛んで来たんだろう。宰相様は、「急いでここまで飛んで来た、部隊は後で来る」って説明してくれたけど、まだ誰も来ない。
いくらなんでも、遅くないか?
この国の宰相様が一人でここにいるなんて、警備隊の人たちも驚いていたし……
部隊が後で来るのも作戦、とも言ってたけど……
砦に帰るなら、警備にも普段以上に気をつけなくてはならない。
このまま砦に向かっていいのか? 僕らで宰相様の護衛につくにしても、人数が少ないような気がする。ロステウィス様は宰相様なんだし、その安全は確保しなくてはならないのに。
僕が口を出すようなことではないのかもしれないけど……
「あ、あのっ……宰相様っ……!」
思い切って声をかけると、宰相様は、僕に振り向いた。
「フィルロファル? どうしたの?」
「え……えっと…………あの、宰相様の部隊の方は……もうすぐいらっしゃるのですか?」
「……あ………………」
どうしたんだろう。宰相様、黙っちゃった。
も、もしかして、聞いたらダメだったのか!?
「あの……申し訳ございません。砦の警備を考える上で重要なことだと思い、お尋ねしたのですが……もしかして、作戦上、僕らには部隊の居場所を明かせないとか、そう言った事情があってのことですか?」
すると、王都から残党の捕縛のために来た部隊の隊長も、宰相様に尋ねた。
「私も、気になっていました。あなたのことです。深いお考えがあったのでしょうが、宰相閣下がお一人で、このようなことをなさるなど……よほど綿密に練られた作戦があるのでしょうが、すでに、王都の敵の脅威は去り、残党たちも拘束されました。そろそろ、護衛の配置を考えるためにも、作戦の内容を教えていただきたい」
「…………」
宰相様は、顔を背けて俯いてしまう。そんなに複雑な作戦があるのかな……
「あーー……その、作戦なんだけど……」
そう言った宰相様に、みんなが注目する。
だけど、宰相様はますます話しにくそう。こんなに歯切れの悪い宰相様も、初めてだ。
「その……作戦、なんだけど……あの、ごめん………………実は、ないんだ」
……ない…………?
それを聞いたみんなが、目を丸くしている。
ないって……どういうことなんだろう。
宰相様が一人でここに来たのって、深いお考えがあったからじゃないのか?
「その…………作戦なんて、実はないんだ。ここを凶悪な竜が狙っているって聞いて……部隊は編成されたんだけど、俺の護衛がどうとか、そんな話をしてなかなか思うように進めないから……置いて飛んで来ちゃったんだ……」
「………………」
「………………」
王都の部隊の隊長も、警備隊の隊長も黙ってしまう。
置いてきちゃったって……部隊を? そんなに急いでここまで飛んで来たの??
でも、部隊を置いてきたなんて……え…………お、大事じゃないか!!
オフィセイール様が、困った様子で言った。
「では……宰相様……もしかして、その……本当に、作戦などはなく、ただ部隊を置いて飛んで来ただけ……なのですか?」
「……うん。えーっと……そう……」
「……」
ついに、オフィセイール様も黙ってしまう。
そこに、一人の男が空から降りてきた。息を切らしながら魔法で飛んで来たのは、レオトウェルラレット様じゃないか。
「みんなっ……! 宰相様が、ここにっ…………!」
彼はすぐに、僕らと一緒に宰相様がいるのを見つける。それで驚くかと思いきや、宰相様に駆け寄った。
「ほ、本当にっ……!! こちらにいらしているなんてっ……!」
「レオトウェルラレット……どうしたの?」
「ヴィクトウェトル様の使い魔が来ておりますっ……! 宰相様を探しておられたようで……」
「…………あ…………」
ぼそっと、あ、とだけ言った宰相様は、そのまま黙ってしまう。
レオトウェルラレット様の背中から、小さな、光り輝く犬の姿をした使い魔が顔を出した。もふもふで毛は輝き、思わず触りたくなるくらい可愛い使い魔だけど、それを見た宰相様は、顔色を変えた。
「それ……ヴィクトウェトルの使い魔…………あ、あいつ、もう追いついてきたの……?」
真っ青になって言う宰相様に、レオトウェルラレット様が「はい……」って、苦しそうに答えている。
そして、続いて空から、エメラルドのような色の長い髪の男性が降りてきた。とても美しい人だったけど、かなり怒っているのか、ひどく恐ろしい顔をしている。確か、この国で魔法の管理をしている大臣のヴィクトウェトル様だ。
彼は、宰相様を睨みつけて、ゾッとするくらい冷たい声で言う。
「やっと追いつきましたよ……ロステウィス……」
「ヴィクトウェトル……その……これは……」
「どういうつもりですか!! せっかく編成した部隊を置いて一人で飛んでいくなんてっっ!!」
「で、でも……残党は取り押さえて、竜のことも解決して……」
「残党を拘束したのも、竜のことを解決したのも、警備隊と砦の部隊の功績です。あなたには、これからじっくり説明していただきます!! 覚悟しておいてください…………」
「あ、うん……ごめん……」
そう言って、宰相様は肩を落としている。
宰相様が怒られるところ、初めて見た……
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