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37.僕のことはもう、心配しなくていい
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こうして、途中からヴィクトウェトル様も連れて、砦に戻って来た僕ら。
その頃には、もうとっくに夜になっていた。
今日は山の中もずいぶん寒い……早く砦を温めなきゃ。
山の中の結界はいつも通りだったし、魔物も増えていない。あまりにいつも通りだから、僕もホッとしたくらい。
毎日、ここに異常がないか確認して、砦に帰れば、のんびりお風呂に入って、まだ壊れかけのままの廊下から夜空を見上げて、部屋に戻って、暖かい布団に潜り込んで、ぐっすり眠る。
最近では、砦に帰ると、オフィセイール様が出迎えてくれて、レオトウェルラレット様が、いい匂いがする鍋をかき混ぜてくれて、遅いぞって言ってくれた。すっかり住み慣れてしまった僕の砦に、いつもとは違う人が二人。
「だから……悪かったよ……」
「悪かったで済むと思っているんですか? 部隊を置いて一人で飛んでいくなど、もってのほかです! あなたは宰相なんですよ! 勝手なことをされては困ります!!」
「いいだろ……無事だったんだから……」
宰相様は、あまり言い訳になっていないようなことを繰り返して、ヴィクトウェトル様は、もうこんなことをしないように、と繰り返している。
宰相が一人で護衛を振り切って、王都を憎む敵がいるかもしれないところに飛んでいったんだから、その身を案じて当然だ。
宰相様は、「もうしないよ」と言って、ヴィクトウェトル様に詫びていた。
ここは戦力なんてほとんどないし、心配になるのも分かる。でも、だからって、一人で飛んでくるなんて……
誰にも真似できないような速さで飛んだ宰相様を追うために、ヴィクトウェトル様も、一人で飛んで来たらしい。宰相様の部隊は後で追ってくるようだ。明日には、この砦につくみたい。
それだけ部隊を引き離して来るなんて、どんなスピードで飛んで来たんだ……
そして、急に宰相様とその側近の大臣を迎えることになってしまい、僕もみんなも、内心ハラハラしている。
だ、だって、普段のんびりしている砦に公爵家の方々が二人!!
こんなの、焦るに決まってる。
緊張しながら、砦の扉の前に立つ。そこには魔法の鍵がかかっている。
僕は、魔法を解いて、扉を開いた。
「あ、あの……宰相様をお迎えする用意はできていなくて……も、申し訳ございませんっ……!」
僕が詫びると、宰相様は気さくな様子で微笑む。
「そんなこと、気にしなくていい。俺たちも、客として来たわけじゃなくて、砦と街の防衛のために来ているから」
「は、はい……」
だからって、公爵家の方を蔑ろになんてできない。って言っても、この砦に誰かを迎えるなんて初めてだ。
相手は宰相様なんだし、失礼のないようにしないと……
「俺たちも、今日は砦の見張りに回るよ」
「えっっ!!??」
びっくりして、振り向いた。公爵家の方が、見張り!?
「で、でもっ……!」
「大丈夫。そもそも、ここの砦を守るために来たんだ。俺たちのことは、新しく来た護衛とでも思ってくれればいいから。気にしないで」
「宰相様…………」
いや……そんなの、絶対に無理だろ。気になるよ!!
相手は宰相様。
失礼があってはならない。
そうだ……せっかく宰相様が来てくれたんだ。
僕も、この砦のことも、めちゃくちゃ心配されているみたいだし、ここで、ちゃんと示すんだ。
ここのことは、もう心配しなくていいって。
宰相様がいなくなって、ヴィクトウェトル様は顔色を変えて飛んで来た。ロステウィス様は、宰相様なんだ。王都でやらなくてはならないことも、たくさんあるはず。
僕は大丈夫だし、ここも守ってみせる。
もう、そんなふうに心配しなくていい。
ここに飛んで来たりもしなくていいって、分かってもらうんだ!! ここのことに気を揉んだりせず、宰相としての仕事に集中してもらえるように!!
その頃には、もうとっくに夜になっていた。
今日は山の中もずいぶん寒い……早く砦を温めなきゃ。
山の中の結界はいつも通りだったし、魔物も増えていない。あまりにいつも通りだから、僕もホッとしたくらい。
毎日、ここに異常がないか確認して、砦に帰れば、のんびりお風呂に入って、まだ壊れかけのままの廊下から夜空を見上げて、部屋に戻って、暖かい布団に潜り込んで、ぐっすり眠る。
最近では、砦に帰ると、オフィセイール様が出迎えてくれて、レオトウェルラレット様が、いい匂いがする鍋をかき混ぜてくれて、遅いぞって言ってくれた。すっかり住み慣れてしまった僕の砦に、いつもとは違う人が二人。
「だから……悪かったよ……」
「悪かったで済むと思っているんですか? 部隊を置いて一人で飛んでいくなど、もってのほかです! あなたは宰相なんですよ! 勝手なことをされては困ります!!」
「いいだろ……無事だったんだから……」
宰相様は、あまり言い訳になっていないようなことを繰り返して、ヴィクトウェトル様は、もうこんなことをしないように、と繰り返している。
宰相が一人で護衛を振り切って、王都を憎む敵がいるかもしれないところに飛んでいったんだから、その身を案じて当然だ。
宰相様は、「もうしないよ」と言って、ヴィクトウェトル様に詫びていた。
ここは戦力なんてほとんどないし、心配になるのも分かる。でも、だからって、一人で飛んでくるなんて……
誰にも真似できないような速さで飛んだ宰相様を追うために、ヴィクトウェトル様も、一人で飛んで来たらしい。宰相様の部隊は後で追ってくるようだ。明日には、この砦につくみたい。
それだけ部隊を引き離して来るなんて、どんなスピードで飛んで来たんだ……
そして、急に宰相様とその側近の大臣を迎えることになってしまい、僕もみんなも、内心ハラハラしている。
だ、だって、普段のんびりしている砦に公爵家の方々が二人!!
こんなの、焦るに決まってる。
緊張しながら、砦の扉の前に立つ。そこには魔法の鍵がかかっている。
僕は、魔法を解いて、扉を開いた。
「あ、あの……宰相様をお迎えする用意はできていなくて……も、申し訳ございませんっ……!」
僕が詫びると、宰相様は気さくな様子で微笑む。
「そんなこと、気にしなくていい。俺たちも、客として来たわけじゃなくて、砦と街の防衛のために来ているから」
「は、はい……」
だからって、公爵家の方を蔑ろになんてできない。って言っても、この砦に誰かを迎えるなんて初めてだ。
相手は宰相様なんだし、失礼のないようにしないと……
「俺たちも、今日は砦の見張りに回るよ」
「えっっ!!??」
びっくりして、振り向いた。公爵家の方が、見張り!?
「で、でもっ……!」
「大丈夫。そもそも、ここの砦を守るために来たんだ。俺たちのことは、新しく来た護衛とでも思ってくれればいいから。気にしないで」
「宰相様…………」
いや……そんなの、絶対に無理だろ。気になるよ!!
相手は宰相様。
失礼があってはならない。
そうだ……せっかく宰相様が来てくれたんだ。
僕も、この砦のことも、めちゃくちゃ心配されているみたいだし、ここで、ちゃんと示すんだ。
ここのことは、もう心配しなくていいって。
宰相様がいなくなって、ヴィクトウェトル様は顔色を変えて飛んで来た。ロステウィス様は、宰相様なんだ。王都でやらなくてはならないことも、たくさんあるはず。
僕は大丈夫だし、ここも守ってみせる。
もう、そんなふうに心配しなくていい。
ここに飛んで来たりもしなくていいって、分かってもらうんだ!! ここのことに気を揉んだりせず、宰相としての仕事に集中してもらえるように!!
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