10 / 33
10.エスコートするから
しおりを挟む
僕は訳がわからなくてキョトンとしているのに、王子殿下は僕の話を聞いているのかいないのか、窓の外に目をやる。
「そろそろ着くよ」
「……着く? どこに…………」
窓の外をのぞけば、そこには僕が今朝足止めを食らった街道のそばにある砦が見えてきていた。
……王都に行くんじゃなかったのか?
なんでこんなところに来るんだ。
なんだか行き先もよく分からなくなってきた。行き先も分からない馬車に乗っているなんて怖いから、もう今すぐにでも降りたいのだが。
けれど、殿下はここに来るのが当然と言わんばかりの態度だ。
「……よく今日と同じことをされていたんだろう?」
「……なんのことですか…………それにそんなこと、殿下に関係ないですよね?」
「そんなことはない。大事なことだよ」
「…………」
何がどう大事なんだ。そんなこと殿下には関係ないし、僕の断罪にも関係ないし、そもそも、僕を王都に連れて行くって言ってたのに、なんでそんな話を始めるんだ。
僕を虐げた貴族を断罪……とか言ってたけど、そんなこと、できるわけがない。
特に、ここは。
この周辺の魔物を退治する拠点として使われる場所で、王都からは離れているけれど、王都にいる魔法使いが管理している。貴族の魔法使いや騎士たちがここに集まって、魔物を退治しに行くための場所だ。
今ここを管理しているのは、王城でずっと大臣をしている有力貴族と懇意にしている一族の魔法使い。こんなところの貴族を、今朝僕に嫌がらせをしたから、なんて理由で、王家が敵に回せるはずがない。
考えている間にも、馬車は止まってしまう。
殿下は、僕に手を差し出した。
「行こう」
「……なんで、こんなところに立ち寄るんですか? ここに立ち寄らなくても、王都には行けますよね? それなのに……なんでわざわざ……」
たずねたけど、殿下の様子はいつもと変わらない。
「用があるからだよ」
そんな風にしか言ってくれない。
噂の真相を確かめたいとでも言うのか?
だったら行きたくない。砦の連中は、揃って僕のことを悪く言い立てるに決まっているからだ。
「やめた方がいいと思います。何をしたいのか分かりませんが、時間の無駄です」
と言ったところで、王子殿下が聞いてくれるはずなんてなくて。
「大丈夫。俺が、エスコートするから」
「……」
そんなこと、望んでない。
意味が分からなかったけど、行かないと言ったところで聞きそうにない。
もしかしたら、王家から僕の噂の真相を確かめるように言われているのかもしれない。
さっき、ごめんって言っていたけど、問答無用で断罪されて処刑ってことはない……のか…………?
僕の断罪を望む貴族たちの言葉を鵜呑みにしてここまで来たんだとばかり思っていたのに。
僕は、まだ無言で警戒したまま王子の手を取り、馬車を出た。
「そろそろ着くよ」
「……着く? どこに…………」
窓の外をのぞけば、そこには僕が今朝足止めを食らった街道のそばにある砦が見えてきていた。
……王都に行くんじゃなかったのか?
なんでこんなところに来るんだ。
なんだか行き先もよく分からなくなってきた。行き先も分からない馬車に乗っているなんて怖いから、もう今すぐにでも降りたいのだが。
けれど、殿下はここに来るのが当然と言わんばかりの態度だ。
「……よく今日と同じことをされていたんだろう?」
「……なんのことですか…………それにそんなこと、殿下に関係ないですよね?」
「そんなことはない。大事なことだよ」
「…………」
何がどう大事なんだ。そんなこと殿下には関係ないし、僕の断罪にも関係ないし、そもそも、僕を王都に連れて行くって言ってたのに、なんでそんな話を始めるんだ。
僕を虐げた貴族を断罪……とか言ってたけど、そんなこと、できるわけがない。
特に、ここは。
この周辺の魔物を退治する拠点として使われる場所で、王都からは離れているけれど、王都にいる魔法使いが管理している。貴族の魔法使いや騎士たちがここに集まって、魔物を退治しに行くための場所だ。
今ここを管理しているのは、王城でずっと大臣をしている有力貴族と懇意にしている一族の魔法使い。こんなところの貴族を、今朝僕に嫌がらせをしたから、なんて理由で、王家が敵に回せるはずがない。
考えている間にも、馬車は止まってしまう。
殿下は、僕に手を差し出した。
「行こう」
「……なんで、こんなところに立ち寄るんですか? ここに立ち寄らなくても、王都には行けますよね? それなのに……なんでわざわざ……」
たずねたけど、殿下の様子はいつもと変わらない。
「用があるからだよ」
そんな風にしか言ってくれない。
噂の真相を確かめたいとでも言うのか?
だったら行きたくない。砦の連中は、揃って僕のことを悪く言い立てるに決まっているからだ。
「やめた方がいいと思います。何をしたいのか分かりませんが、時間の無駄です」
と言ったところで、王子殿下が聞いてくれるはずなんてなくて。
「大丈夫。俺が、エスコートするから」
「……」
そんなこと、望んでない。
意味が分からなかったけど、行かないと言ったところで聞きそうにない。
もしかしたら、王家から僕の噂の真相を確かめるように言われているのかもしれない。
さっき、ごめんって言っていたけど、問答無用で断罪されて処刑ってことはない……のか…………?
僕の断罪を望む貴族たちの言葉を鵜呑みにしてここまで来たんだとばかり思っていたのに。
僕は、まだ無言で警戒したまま王子の手を取り、馬車を出た。
66
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!
或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」
***
日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。
疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。
彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界!
リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。
しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?!
さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……?
執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人
ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー
※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇♀️
※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです
※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
隔日更新予定に変更させていただきます。
♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております!
感想も頂けると泣いて喜びます!
第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる