ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 ゲームの世界へ

第39話 開戦

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「見えてきた」

 先頭に立ち黒く厚い雲の流れてくる方角を見据えている。大地もその雲が降りてきているように黒く変わっていく。あのすべてがグレータースケルトンか。オルコッドでやっていたらアドラーさん以外は危なかっただろうな。

「ノンナちゃん。君は【手紙】とエリクサーを絶対に手放さないでね。それと合図を出す前にお父さんに呼ばれてもみんなから離れないこと」

「うん! 分かった!」

「はは、偉い偉い」

 再度作っておいたラストエリクサーをノンナちゃんに手渡しておいた。これはクリアした時のバッドエンドを覆すためのもの。だから彼女が傷ついて使うことを考えていないから絶対に守らないといけない。

「みんな危なくなったら峡谷に降りて横穴に入るんだよ。リトルの友達達が守ってくれる」

「はい! お任せください!」

 僕の声に元気よく答えるリトル。誇らしげに翼を広げて見せてくる。背水の陣じゃない。逃げ道はできてる。

「まずは耐えるよ。二人一組。僕とレッド、アスノ君とルドマン。アンナさん達はリトルの背に乗って空へ」

「空からスケルトンを生み出し続けるんですね」

「そういうこと。じゃあ、先陣を切る!」

 それぞれのチームを指さして話していくとアンナさんがリトルにノンナちゃんを乗せる。みんなに言い終わるとレッドと顔を見合って走り出す。今回は武器も完璧だ。両手に片手剣を握って黒い大地へと駆け走る。作った武器は間に合わなかったから一本は普通のアダマンタイトの片手剣だ。

「ランカは二刀流なのね」

「場合によるかな。おっと話している場合じゃないよレッド」

 走りながらレッドの声にこたえて前を見据える。黒い大地が迫ってくる。まるで一体の獣になったかのように蠢いてる。お~怖い怖い。今までの装備だったらそう言う感想が出る。だけど、今は違う!

「凄い!? グレータースケルトンがスライムみたいに切れてく!?」

「だよね!」

 レッドと共に黒い大地へと突撃。並走しながらグレータースケルトンを切り捨てていく。ただただ左右に剣を走らせるだけの簡単なお仕事。切り捨てるとすぐに霧散していくから、空から見たら黒い大地に一筋の道が出来ているだろうな。

「ハァ~!」

 レッドの激しい声が聞こえる。僕もそれに合わせて声を放ち、グレータースケルトンを薙ぎ払っていく。
 アスノ君とルドマンの声を次第に近くに聞こえてくる。しばらくするとグレータースケルトンが後退していく。それと同時に新たなスケルトンが奴らの後方に見え始める。

「白いスケルトン。という事は第一段階終了だな。そして、グレーターリッチの登場だ」

 真打登場とでもいうのだろうか。白いスケルトン、普通のスケルトンを連れてグレーターリッチが現れた。アンナさんがリッチになっていた時のように赤い瞳を僕らに向けてくる。やっぱり周りに彼らの一族らしきスケルトンはいないな。ここはゲームと違うみたいだ。

「今回は倒せばいいの?」

「いや、倒せないんだ」

「え? じゃあ勝てないじゃない!?」

 レッドの疑問に答えると驚いて聞き返してくる。僕は微笑んでグレーターリッチへと走る。

「策はノンナちゃん?」

「そういうこと、近づくよ!」

 並走するレッドと再度スケルトンを切り捨てていく。スケルトンの群れの中に潜り込むように切り込んでいく。しばらくの間、殺伐とした剣の音しかしない。レッドやアスノ君達の戦闘音だけが耳に入ってくる。

「いた、一回目」

「え? 一回目って?」

 スケルトンの群れを抜けてグレーターリッチが目の前に現れた。僕の声に首を傾げるレッドの声と共にグレーターリッチが消えていく。

「消えた!? ど、どこに?」

「後退したんだよ。次々」

 驚いて周りを見回すレッド。いつの間にか残りのスケルトン達も消えてる。
 グレーターリッチは追い込まれると逃げる。一回追い込んで逃がすと本気になるんだよな~。

「これからがグレーターリッチの本気だよ」

「なるほど、手ごたえがないと思ったよ」

 レッドは楽しそうにしてる。確かにスケルトン達は弱すぎだった。僕らの装備が強すぎたんだけどね。

「ね、ねえランカ……」

「どうしたのレッド?」

「あ、あれ……」

「え? な、何あれ?」

 レッドが顔を青ざめさせてある方角を指さし始めた。彼女の指し示した方角を見ると僕も体が冷めていくのを感じた。

「巨人の骨?」

 レッドの声に頷いて答える事しかできなかった。あれはSランクの魔物の【ギガントスケルトン】だ。ゲームではグレータースケルトンまでのスケルトンしかいなかった。ここも現実となった弊害が生まれてしまったんだろう。グレーターリッチは一族のスケルトンじゃなくてギガントスケルトンを引き連れてきたみたいだ。選択制だったとは僕も知らなかったな。

「足から削る。行くよレッド!」

「ま、まってランカ! 一体じゃない!」

「ええ!?」

 近づかれる前に攻めて出てやろうと思ったらもう一体の顔が見えてくる。二体のギガントスケルトンか。この装備でも時間がかかる。

「動きは遅い。攻撃に気をつけながらやるよ!」

「ら、ランカ。こ、怖くないの? わ、私はこ、怖い」

 僕の声に怯えて答えるレッド。30メートルはあるであろうギガントスケルトンに恐怖を感じてしまったか。普通の魔物じゃあんなに大きくないもんな。
 僕はゲームで見たことがあるから少しの恐怖ですんでいるけど、初めてあんなでかい魔物を見たら委縮しちゃうよな。レッドは僕より年上でも16歳だしね。

「レッド見てて」

「ランカ!」

 怯えるレッドを置いて駆け走る。ギガントスケルトンの払う手を避けて、足元に着くと見下ろしてくる。僕はニッコリと微笑んで足を切りつける。簡単に足を切り落とすとバランスを崩していく。

「こんなの全然怖くない!」

 倒れ込んでくるギガントスケルトンの首を切り落として声をあげる。霧散して消えていくギガントスケルトン、消えきる前にもう一体の足を傷つけていく。

「もう一体は一発で切れないか」

「じゃあ私が仕留める!」

 仕留められなくてため息をついていると、一陣の風と共にレッドがギガントスケルトンを切り捨てていく。さっきまで怯えていたのに、もう恐怖に打ち勝った。

「あなたのおかげ、ありがと」

「はは、レッドは元々強い子なんだから僕がいなくても大丈夫だったよ。もっと自分を信じてあげて」

「ん、ほんとアスノ君が言っていたとおりね」

 レッドが顔を赤くさせてお礼を言ってくる。彼女に笑って答えると顔を背けて呟いてる。アスノ君何か言ってたのか?

「ランカ、あなたは本当に凄い」

「ああ、その口癖ね」

 レッドの声にポンと手を叩く。アスノ君の口癖だ。二言目には僕を褒めてくれるんだよな。

「さらに追加が来てるな」

「私とあなたならいくらでも倒せる」

「そうだねレッド。アスノ君達も暇しているし、行きますか!」

 レッドと後ろを振り返りながらギガントスケルトンへと警戒を強める。アスノ君とルドマンの出番はなさそうだ。
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