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第一章 ゲームの世界へ

第40話 ハッピー

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「これで最後だ!」

 レッドと共にギガントスケルトンを倒し切った。グレーターリッチの姿は見えない。僕の予想通りなら必ず現れるはず、あの子の前に。

「きゃ!?」

「来たか! 戻るよレッド!」

 アンナさんの叫び声が聞こえてきた。リトルでずっと飛んでいることはできない着地を狙われたか。でも、想定内だ。僕はすぐに彼女の元へ走り出す。思った通り、【手紙】のある場所に現れてくれた。

「迎えに来たぞ。さあ、リッチとなり我らと共にこの地を地獄へと作り変えよう」

 グレーターリッチが目を赤く輝かせてアンナさん達に手を伸ばす。彼女の召喚したスケルトンは相手にならなかったようだ。一瞬で霧散して消えてる。

「お父さんなんだよね! これを見て!」

「ノンナなのか? ん? 私宛の手紙?」

 ノンナちゃんが手紙を差し出す。グレーターリッチは手紙を受け取るとすぐに開いていく。

「ノンナ。やはり死……、私はすべてを壊す!」

 手紙を読んだグレーターリッチは赤い涙を流して決意を口にする。

「ノンナちゃん! お父さんにラストエリクサーを!」

「え!? は、はい!」

 ノンナちゃんはすかさずラストエリクサーを、グレーターリッチにかけた。アンナさんのようにグレーターリッチの姿が変わっていく。元の人間の姿に変わる。

「わ、私は何を……」

 ノンナちゃんのお父さん、ノイシュさんが元に戻っていく。彼は自分の手を眺めながら呟くとアンナさんとノンナちゃんへと視線を泳がせる。涙を流しながら抱きしめあう三人。

「あなた……おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

 二人は涙して互いに声を掛け合う。ノンナちゃんはキョトンとしてる。

「お父さん?」

「ノンナ、お前のおかげだよ。……本当にありがとう」

 首を傾げるノンナちゃん。ノイシュさんはその様子を見ていたたまれない様子。彼の様子からゲーム通りの設定なのが伺える。僕はラストエリクサーをインベントリから取り出す。

「お父さん!? 私の体おかしいの、とってもあったかくてとっても嬉しくて」

「成就された願いを叶られたからだよノンナ」

「え? 成就?」

 嬉しそうに驚いてるノンナちゃんをノイシュさんが抱き上げる。その瞳からは涙があふれている。

「ノンナ、実はね。ノンナは死んでしまっているんだ」

「え?」

 抱き上げられたノンナちゃんが輝いていく。これがノンナちゃんのクエストのエンディングだ。本当は両親の二人も死んでしまって成仏してしまう。ほんと最悪なエンディングだ。

「そ、そんな!? ありえないわ。だって、ずっと私と、皆さんと過ごしていたのに!」

「私も信じたくはないよ。だけど、事実なんだ。ノンナは死にゆく時、願ったんだよ。私達の幸せを。そして、それが叶った」

 戸惑うアンナさんにノイシュさんが答える。そして、その願いがあの手紙にあった。手紙を読んだ人のもとに現れてクエストを授けてくるわけだ。

「やだ! まだみんなと一緒にいたい! ランカお兄ちゃんにお礼も出来てないの! だけど、なんでこんなに嬉しいの! た、助けてお兄ちゃん!」

 輝きが増すノンナちゃんが泣いて叫ぶ。

「すぐに助けるよノンナちゃん」

「お兄ちゃん!」

 輝きを増していくノンナちゃんにラストエリクサーをかける。輝きが収まっていくと僕に抱き着いてくるノンナちゃん。嬉しそうに頬をこすりつけてくる。

「ど、どういうことです!? た、確かに死んでいたのに?」

「ふふふ、それは勘違いですよ。ノンナちゃんは死んでいません。そんなことは気にせずに家族の再会でしょ? うれし涙を流しましょう」

「は、はい!」

 ノイシュさんが驚いて問いかけてくる。僕の声に同意するとすぐにノンナちゃんを抱き上げていく。良い不思議な事は運が良かったと思えばいいんだよな。ノンナちゃんはアンナさんとノイシュさんと同じだ。
 手紙を読んで元の精神に戻り、クエストクリアになる。その後、成仏してしまうというのがノンナちゃん達のクエスト。それを無理やりラストエリクサーを、使ってHPを回復させる
。更に状態異常を治して死を免れるというわけだ。
 ノンナちゃんはうまくいくかわからなかった。ゲームではプレイヤーと話して消えていく子だったからね。助けられてよかった。

「ランカやったわね!」

「師匠! お祝いです!」

「酒を飲みたい風景じゃな」

 レッドとアスノ君が抱き着いてくる。ルドマンも嬉しそうに腰を叩いてきた。お酒はドーシャさんのせいで飲みたくないけど、彼に同意してしまう。
 
「お母さん! お父さん!」

 ノンナちゃんがアンナさんとノイシュさんに抱き着く。二人でノンナちゃんを抱き上げる姿は、どんな大金をかけても見れない美しさがある。

「皆さん! 食べ物をたくさん用意しています! 豪勢にお祝いいたしましょう!」

「流石リトル。みんな支配者の間にもどるよ~」

『は~い』

 リトルに案内されて支配者の間へと戻る僕ら。
 予定していなかったクエストを無事に終えられた。バッドエンドを覆すことが出来ることが証明された。これで僕はレッドを本当に救うことが出来る。惚れた女性を救うことが出来るんだ。

「この世界にこれたことを本当に感謝するよアルステードさん」

「師匠?」

 支配者の間へと歩きながら呟く。抱き着いたままのアスノ君が首を傾げている。僕が別世界から来たっていうことを説明するのはまだ先になるだろうな。みんなになら言ってもいいかななんて思ってるんだけどね。
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