74 / 81
第2章 国
第74話 フーラ
しおりを挟む
「あれから一週間……。ケビンの姿は見えないな」
いつも通り、冒険者ギルドにやってきた私達。ラッドが周りを見回して声を上げる。
ビードさんがケビンに話をしてから一週間が経った。
ケビンの故郷はここから馬でも一週間かかる。
馬を飛ばせば四日くらいでつくらしいけれど、棺をもってくるってことはもっと時間がかかるはず。
今いないのは当たり前なんだよね。
「おはようございます、ジュディーさん」
「おはようございますファムちゃん」
これもいつも通り、ジュディーさんに声をかけて依頼の貼ってある掲示板を眺める。
今日も薬草とオーク討伐の依頼書を。
「あ! ファムちゃん。指名依頼が来てるんだけど、受けてもらえる?」
「え? 指名依頼ですか?」
「そ、【フェアリーファーム】に指名依頼が来てるの」
ジュディーさんが思い出したように声を上げる。
どうやら、そこそこ私の名前が有名になっているみたい。なんだか恥ずかしい。
「どんな依頼なんですか?」
「なんだか荷物を運んでほしいっていう依頼なんだけど」
「荷物運びですか?」
私を指名してるのに配達の依頼? なんだかおかしな感じがする。
「この依頼おかしくないですか?」
「そうなのよね。ギルドマスターに見せたら調べてみるって言って出て行っちゃったの。もしかしたらこの場所にいるかも?」
「……心配ですね。ちょっと行ってみます」
ジュディーさんもおかしいと感じたみたい。ギルドマスターのランスさんにも見せてくれてる。
ランスさんはしっかりと調査の為に足を運んでくれてる。
「ラッド達は家に帰ってて」
「え? でも」
「ラッド……」
「わ、わかったよ。俺達じゃ足手まといだもんな……」
冒険者ギルドの扉に手をかけて二人に言い聞かせる。いうことを聞いてくれるように上目遣いで話すとラッドは話を聞いてくれる。
「えっと、中央広場の横の路地かな?」
教えてもらった場所へと歩いて向かう。
ブルース様達と話していたように人通りが多くなったので走るのは少し危険。
少し時間がかかって路地に着くと、見知った人が私に気が付いて手を振ってくる。
「来ましたねファム君」
「ランスさん」
ランスさんは無造作に置いてある樽に腰かけて声をかけてくれる。
あたりを見回すけど、ランスさん以外はいない。
「荷物はこの樽のようです。ですが依頼人がいなくてね」
ランスさんが樽から下りて樽をクルッと回転させる。樽に紙が貼られていて、白い綺麗な紙に配達場所が記されてる。
「私もついて行きましょう。最初から怪しい依頼だと思っていましたが、更にきな臭くなってきました。こんな真っ白な紙を普通の人が使うことはありませんからね」
ランスさんはそう言って真剣な表情になる。私も頷いて答える。
これは罠の可能性が高くなってきた。だって、配達の目的地がお墓なんだもん。
「誰もいませんね」
ランスさんと共に町を出て町はずれのお墓にやってきた。シャーリー達と戦ったお墓。今も戦った傷跡が残ってる。
「建物から視線を感じる? 中に持っていけばいいんでしょうかね」
「そうみたいですね。……え!?」
ランスさんの言葉に答えて彼が持ってくれていた樽を見ると急に矢が飛んでくる。彼が剣を抜いて更に飛んでくる矢を落としていく。
「わざと外したの。あなた良い腕だね」
「それはどうもお嬢さん……」
お墓の建物から出てきた少女。彼女はランスさんを褒めると矢を構える。
「私の名前はフーラ。兄貴の敵を取らせてもらうよファム!」
「え?」
フーラと名乗った少女はそう言って腰を落として弓を構える。
兄貴ってもしかしてケビンのこと? 妹さんって死んでしまったんじゃなかったっけ?
「対話をせずに戦う? なぜ疑問に思わないんです? このファム君があなたのお兄さんを殺すなんて考えられますか?」
「私を拾ってくれたレイスロード様が言っていたんだ。ファムという少女が兄貴をだまして殺したってね!」
「「!?」」
フーラはランスさんの言葉に答えて矢を射かけてくる。
風切り音を奏でて飛んでくる矢。私にはダメージがないけれど、ランスさんの耳から血が出ているのがわかる。
「【耳鳴りの矢】。音は躱せないでしょ?」
得意げにそう言うとフーラは素早く矢をつがえる。ケビンと同じで弓の扱いに長けてる。
「待って! 私はケビンさんを殺めるわけがない」
「ふふ、殺人犯はみんなそういうのよ。少女だからって容赦しない。兄貴は唯一の肉親だったんだ。この左手が疼くんだよ。あの時、助けられなかった私の弱さに傷が疼くのさ!」
私の声にも答えずに矢を放ってくる。
縦横無尽に放たれる矢、どこに躱しても紙一重。ラッド達を置いてきてよかった。これはステータスがはるかに高くないと躱せない。
「ふふふ、これを躱すなんて。やっぱりそうよ。あなたじゃないと兄貴は、ケビンは殺せない!」
顔を抑えて怒りを抑えようとするフーラ。冷静な表情に変わると弓の質が変わる。
「女性の無益な争いは好きではありません! 戦うのをやめなさい!」
「無益? なぜそんなことが言える?」
「だ、誰です!?」
ランスさんが声を上げてフーラへと走り出す。その時、建物の中から別の人の声が聞こえてくる。
黒いローブに身を包んだ男が姿を現す。まるで幽霊かのような白い肌の男。
いつも通り、冒険者ギルドにやってきた私達。ラッドが周りを見回して声を上げる。
ビードさんがケビンに話をしてから一週間が経った。
ケビンの故郷はここから馬でも一週間かかる。
馬を飛ばせば四日くらいでつくらしいけれど、棺をもってくるってことはもっと時間がかかるはず。
今いないのは当たり前なんだよね。
「おはようございます、ジュディーさん」
「おはようございますファムちゃん」
これもいつも通り、ジュディーさんに声をかけて依頼の貼ってある掲示板を眺める。
今日も薬草とオーク討伐の依頼書を。
「あ! ファムちゃん。指名依頼が来てるんだけど、受けてもらえる?」
「え? 指名依頼ですか?」
「そ、【フェアリーファーム】に指名依頼が来てるの」
ジュディーさんが思い出したように声を上げる。
どうやら、そこそこ私の名前が有名になっているみたい。なんだか恥ずかしい。
「どんな依頼なんですか?」
「なんだか荷物を運んでほしいっていう依頼なんだけど」
「荷物運びですか?」
私を指名してるのに配達の依頼? なんだかおかしな感じがする。
「この依頼おかしくないですか?」
「そうなのよね。ギルドマスターに見せたら調べてみるって言って出て行っちゃったの。もしかしたらこの場所にいるかも?」
「……心配ですね。ちょっと行ってみます」
ジュディーさんもおかしいと感じたみたい。ギルドマスターのランスさんにも見せてくれてる。
ランスさんはしっかりと調査の為に足を運んでくれてる。
「ラッド達は家に帰ってて」
「え? でも」
「ラッド……」
「わ、わかったよ。俺達じゃ足手まといだもんな……」
冒険者ギルドの扉に手をかけて二人に言い聞かせる。いうことを聞いてくれるように上目遣いで話すとラッドは話を聞いてくれる。
「えっと、中央広場の横の路地かな?」
教えてもらった場所へと歩いて向かう。
ブルース様達と話していたように人通りが多くなったので走るのは少し危険。
少し時間がかかって路地に着くと、見知った人が私に気が付いて手を振ってくる。
「来ましたねファム君」
「ランスさん」
ランスさんは無造作に置いてある樽に腰かけて声をかけてくれる。
あたりを見回すけど、ランスさん以外はいない。
「荷物はこの樽のようです。ですが依頼人がいなくてね」
ランスさんが樽から下りて樽をクルッと回転させる。樽に紙が貼られていて、白い綺麗な紙に配達場所が記されてる。
「私もついて行きましょう。最初から怪しい依頼だと思っていましたが、更にきな臭くなってきました。こんな真っ白な紙を普通の人が使うことはありませんからね」
ランスさんはそう言って真剣な表情になる。私も頷いて答える。
これは罠の可能性が高くなってきた。だって、配達の目的地がお墓なんだもん。
「誰もいませんね」
ランスさんと共に町を出て町はずれのお墓にやってきた。シャーリー達と戦ったお墓。今も戦った傷跡が残ってる。
「建物から視線を感じる? 中に持っていけばいいんでしょうかね」
「そうみたいですね。……え!?」
ランスさんの言葉に答えて彼が持ってくれていた樽を見ると急に矢が飛んでくる。彼が剣を抜いて更に飛んでくる矢を落としていく。
「わざと外したの。あなた良い腕だね」
「それはどうもお嬢さん……」
お墓の建物から出てきた少女。彼女はランスさんを褒めると矢を構える。
「私の名前はフーラ。兄貴の敵を取らせてもらうよファム!」
「え?」
フーラと名乗った少女はそう言って腰を落として弓を構える。
兄貴ってもしかしてケビンのこと? 妹さんって死んでしまったんじゃなかったっけ?
「対話をせずに戦う? なぜ疑問に思わないんです? このファム君があなたのお兄さんを殺すなんて考えられますか?」
「私を拾ってくれたレイスロード様が言っていたんだ。ファムという少女が兄貴をだまして殺したってね!」
「「!?」」
フーラはランスさんの言葉に答えて矢を射かけてくる。
風切り音を奏でて飛んでくる矢。私にはダメージがないけれど、ランスさんの耳から血が出ているのがわかる。
「【耳鳴りの矢】。音は躱せないでしょ?」
得意げにそう言うとフーラは素早く矢をつがえる。ケビンと同じで弓の扱いに長けてる。
「待って! 私はケビンさんを殺めるわけがない」
「ふふ、殺人犯はみんなそういうのよ。少女だからって容赦しない。兄貴は唯一の肉親だったんだ。この左手が疼くんだよ。あの時、助けられなかった私の弱さに傷が疼くのさ!」
私の声にも答えずに矢を放ってくる。
縦横無尽に放たれる矢、どこに躱しても紙一重。ラッド達を置いてきてよかった。これはステータスがはるかに高くないと躱せない。
「ふふふ、これを躱すなんて。やっぱりそうよ。あなたじゃないと兄貴は、ケビンは殺せない!」
顔を抑えて怒りを抑えようとするフーラ。冷静な表情に変わると弓の質が変わる。
「女性の無益な争いは好きではありません! 戦うのをやめなさい!」
「無益? なぜそんなことが言える?」
「だ、誰です!?」
ランスさんが声を上げてフーラへと走り出す。その時、建物の中から別の人の声が聞こえてくる。
黒いローブに身を包んだ男が姿を現す。まるで幽霊かのような白い肌の男。
271
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる