ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第2章 国

第74話 フーラ

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「あれから一週間……。ケビンの姿は見えないな」

 いつも通り、冒険者ギルドにやってきた私達。ラッドが周りを見回して声を上げる。
 ビードさんがケビンに話をしてから一週間が経った。
 ケビンの故郷はここから馬でも一週間かかる。
 馬を飛ばせば四日くらいでつくらしいけれど、棺をもってくるってことはもっと時間がかかるはず。
 今いないのは当たり前なんだよね。

「おはようございます、ジュディーさん」

「おはようございますファムちゃん」

 これもいつも通り、ジュディーさんに声をかけて依頼の貼ってある掲示板を眺める。
 今日も薬草とオーク討伐の依頼書を。

「あ! ファムちゃん。指名依頼が来てるんだけど、受けてもらえる?」

「え? 指名依頼ですか?」

「そ、【フェアリーファーム】に指名依頼が来てるの」

 ジュディーさんが思い出したように声を上げる。
 どうやら、そこそこ私の名前が有名になっているみたい。なんだか恥ずかしい。

「どんな依頼なんですか?」

「なんだか荷物を運んでほしいっていう依頼なんだけど」

「荷物運びですか?」

 私を指名してるのに配達の依頼? なんだかおかしな感じがする。

「この依頼おかしくないですか?」

「そうなのよね。ギルドマスターに見せたら調べてみるって言って出て行っちゃったの。もしかしたらこの場所にいるかも?」

「……心配ですね。ちょっと行ってみます」

 ジュディーさんもおかしいと感じたみたい。ギルドマスターのランスさんにも見せてくれてる。
 ランスさんはしっかりと調査の為に足を運んでくれてる。

「ラッド達は家に帰ってて」

「え? でも」

「ラッド……」

「わ、わかったよ。俺達じゃ足手まといだもんな……」

 冒険者ギルドの扉に手をかけて二人に言い聞かせる。いうことを聞いてくれるように上目遣いで話すとラッドは話を聞いてくれる。

「えっと、中央広場の横の路地かな?」

 教えてもらった場所へと歩いて向かう。
 ブルース様達と話していたように人通りが多くなったので走るのは少し危険。
 少し時間がかかって路地に着くと、見知った人が私に気が付いて手を振ってくる。

「来ましたねファム君」

「ランスさん」

 ランスさんは無造作に置いてある樽に腰かけて声をかけてくれる。
 あたりを見回すけど、ランスさん以外はいない。

「荷物はこの樽のようです。ですが依頼人がいなくてね」

 ランスさんが樽から下りて樽をクルッと回転させる。樽に紙が貼られていて、白い綺麗な紙に配達場所が記されてる。

「私もついて行きましょう。最初から怪しい依頼だと思っていましたが、更にきな臭くなってきました。こんな真っ白な紙を普通の人が使うことはありませんからね」

 ランスさんはそう言って真剣な表情になる。私も頷いて答える。
 これは罠の可能性が高くなってきた。だって、配達の目的地がお墓なんだもん。

「誰もいませんね」

 ランスさんと共に町を出て町はずれのお墓にやってきた。シャーリー達と戦ったお墓。今も戦った傷跡が残ってる。

「建物から視線を感じる? 中に持っていけばいいんでしょうかね」

「そうみたいですね。……え!?」

 ランスさんの言葉に答えて彼が持ってくれていた樽を見ると急に矢が飛んでくる。彼が剣を抜いて更に飛んでくる矢を落としていく。

「わざと外したの。あなた良い腕だね」

「それはどうもお嬢さん……」

 お墓の建物から出てきた少女。彼女はランスさんを褒めると矢を構える。

「私の名前はフーラ。兄貴の敵を取らせてもらうよファム!」

「え?」

 フーラと名乗った少女はそう言って腰を落として弓を構える。
 兄貴ってもしかしてケビンのこと? 妹さんって死んでしまったんじゃなかったっけ?

「対話をせずに戦う? なぜ疑問に思わないんです? このファム君があなたのお兄さんを殺すなんて考えられますか?」

「私を拾ってくれたレイスロード様が言っていたんだ。ファムという少女が兄貴をだまして殺したってね!」

「「!?」」

 フーラはランスさんの言葉に答えて矢を射かけてくる。
 風切り音を奏でて飛んでくる矢。私にはダメージがないけれど、ランスさんの耳から血が出ているのがわかる。

「【耳鳴りの矢】。音は躱せないでしょ?」

 得意げにそう言うとフーラは素早く矢をつがえる。ケビンと同じで弓の扱いに長けてる。

「待って! 私はケビンさんを殺めるわけがない」

「ふふ、殺人犯はみんなそういうのよ。少女だからって容赦しない。兄貴は唯一の肉親だったんだ。この左手が疼くんだよ。あの時、助けられなかった私の弱さに傷が疼くのさ!」

 私の声にも答えずに矢を放ってくる。
 縦横無尽に放たれる矢、どこに躱しても紙一重。ラッド達を置いてきてよかった。これはステータスがはるかに高くないと躱せない。

「ふふふ、これを躱すなんて。やっぱりそうよ。あなたじゃないと兄貴は、ケビンは殺せない!」

 顔を抑えて怒りを抑えようとするフーラ。冷静な表情に変わると弓の質が変わる。

「女性の無益な争いは好きではありません! 戦うのをやめなさい!」

「無益? なぜそんなことが言える?」

「だ、誰です!?」

 ランスさんが声を上げてフーラへと走り出す。その時、建物の中から別の人の声が聞こえてくる。
 黒いローブに身を包んだ男が姿を現す。まるで幽霊かのような白い肌の男。
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