ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第2章 国

第75話 レイドレッド帝国

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「私の名はレイスロード。レイドレッド帝国の王」

 堂々と名乗りを上げるレイスロード。青白い顔で悲しく笑みを浮かべる。

「君がファム君だね。ケビンから聞いたよ」

「……」

 悲しく見つめてくるレイスロード。その視線をランスさんが遮る。

「あまり少女を凝視しないでもらおう。あなたの相手は私だ」

「冒険者ギルドのランスか。あなたでも私の相手は厳しい」

 ランスさんの声に答えて杖を取り出すレイスロード。
 
「待ってください! 説明してください!」

 私はどういう経緯で今に至るのかを聞く。本当にケビンは死んでしまったの? 何が起こってるのかわけがわからない。

「自分で殺しておいて何を言ってるの! あなたは殺人鬼なのよ!」

 とぼけているように聞こえたようで、フーラが涙を流しながら訴えかけてくる。
 胸が締め付けられる。自分でやった覚えがないけれど、彼女の涙は本当の涙。確かに大事な人を失ったものだ。
 本気の恨みの視線を受けて心が傷つけられる。とても痛い。

「ケビンは最後にファム君への恨みを話していたよ。それはそれはきつい話だった」

 クスクスと笑みを浮かべてレイスロードが語りだす。彼の言葉は本当の物じゃない。私はそう思って睨みつける。

「あなたは何か知ってるみたい。白状して!」

「あまり時間がないのでね。話すことはできません」

 私の問いかけにレイスロードは楽しそうに答える。その答えだけで十分。この人は何かを知ってる。真実を……

「口を割らせればいい!」

「レイスロード様に手は出させない!」

「!?」

 声と共にレイスロードへと手を向ける。魔法を放とうと思ったらフーラから矢を射かけられる。
 一矢避けると二の矢三の矢が射かけられる。胸、顔、足へと飛んでくる矢。避ける方向に曲がってくる、器用な弓の腕。ケビンの妹は伊達じゃないわね。

「でも」

「え!?」

 私は矢を紙一重で避けて彼女の背後へと移動する。私を目でとらえることができても、体を動かすまでには時間がかかる。
 その間に私は彼女の背中を強く蹴飛ばした。建物の中へと吹き飛んでいくフーラ。あとはレイスロード。

「おや? フーラはやられてしまいましたか。こちらはあと少しだったんですがね」

「ぐふっ……」

「ランスさん!」

 レイスロードへと視線を向けると、彼が余裕しゃくしゃくと言った様子で話し出す。
 ランスさんは地面から生えた岩の棘に足を貫かれてる。無数の棘の岩。あの一瞬で魔法を唱えた? 詠唱は聞こえなかった。

「ギルドマスターと言っても、無詠唱の魔法を見たことがなかったようですね。簡単に魔法を当てられました。苦しいでしょう。今とどめを刺してあげますよ」

「させるわけがないでしょ!」

 レイスロードが苦しむランスさんに手をかざす。黙ってみているわけがない。私はダモクレスを取り出して振り上げる。
 あまりの速度で近づく私に、レイスロードは反応できずに手を簡単に切り落とされる。まるでわざと切り落とさせたみたいに感じる。

「ランスさん、大丈夫ですか?」

「はは、すみませんねファム君。助けるために一緒に来たというのに」

 岩の棘を壊してランスさんを解放する。彼は申し訳なさそうに謝ってくれる。私のことを心配して来てくれた。それを攻めることはできない。

「ははは。強い、強すぎる。今、私の首を刎ねておかなかったことを後悔させてあげましょう」

「な、なに!? 地震?」

 レイスロードが切り落とされた手を拾い上げて元に戻している。続けて杖を天に掲げだすと立っていられないほどの地震が発生した。

「さあ、起きなさい。私のしもべたちよ」

 レイスロードの声に答えるように地面からスケルトンが生まれる。スケルトンの群れが地面から這い出てきて町を襲い始める。

「なにをしてるの!?」

「ふふふ、状況を打破するために人質を得ようと思いましてね。取引をしましょう」

「取引?」

 憤りで声を上げるとレイスロードは楽しそうに提案してくる。私は呆れて声を上げる。

「あなたの首を刎ねればいいんでしょ? 私ができないと思ってる?」

 私はそう言って剣気を放つ。更に強くなる私にレイスロードは生唾を飲み込んでる。顔が更に青白くなっているように見えた。

「ふふ、ははは。まさか剣気まで使えるとは……レナリス騎士団長よりも強く、ブルース王よりも強い者。ケビンの言っていた通りだ」

 レイスロードは顔を手で拭いながら嬉しそうに声を上げる。私の強さを知っている人は少なくない。この町の人なら知っていて当然。
 今更そんなことを言ってきて、なにを考えているの? 時間稼ぎ?

「付き合っていられない。スケルトンを止めて降参しなさい。命までは取らないわ」

「勇ましい! その年でこの境地。素晴らしい! そして、君が欲しい!」

「はぁ?」

 ダモクレスの切っ先を向けて降参を促す。レイスロードは嬉しそうに声を上げると杖の私に向けてくる。

「あなたもフーラとケビンと同じように私の物にする」

 杖の先から紫色の魂のようなものがユラユラと飛び出す。ゆっくりと私に近づいてくる紫の魂。
 私は嫌な予感がして離れる。

「無駄ですよ。その【隷属の楔】を避けることはできません。絶対的な力なのですから!」

 レイスロードは勝ちを確信して説明し始める。避けられないなら切り捨てるまで!

「ハァ!」

 【隷属の楔】とやらをダモクレスで切り捨てる。簡単に切れて消えていく。その様子を見ていたレイスロードは何が起こったのかわからずに何度も目をこすっている。

「な、なにが……どういうことです?」

「見たまんまよ。隷属の楔を切り捨てたの。残念だったわね」

 私はそう言ってレイスロードの胸ぐらを掴む。怯え始める彼は目を踊らせる。

「すべて話しなさい!」

「……」

 私の追及の声を聞くとレイスロードは観念したかのように俯く。

「仕方ありませんね」

 やっと話す気になったのね。ホッと胸をなでおろすとレイスロードの体が消えていく。

「私も一国の王です。簡単に捕まるわけがないでしょ」

「逃げるの? 卑怯者!」

 レイスロードは声だけを見せてくる。

「フーラをお願いしますよ。何かあったらケビンが泣いてしまいます」

「ケビンは生きているの?」

「ふふふ、はい。生きていますよ。彼の故郷で待ちます」

 自分勝手なレイスロードの言い分に苛立ちを感じながらも、ケビンが生きていることに希望を見出す。
 彼の妹も生きてた。たぶん、レイスロードに弱みを握られていたのね。でも、よかった、これで妹の代わりにならずに済みそう。
 気配を消していくレイスロード。奴はケビンの故郷に逃げていったのだろう。まったく、迷惑な王様ね。
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