117 / 165
第三章 王都リナージュ

第十三話 副団長

しおりを挟む
「いやー参った参った。強すぎるよ」
「私たちも慢心していたね。Aランクだからってまだまだ上がいる」

 ダネンさんとシルフィさんは良い笑顔で負けを認めていた。

「二人はSランクなんだろ。ユアンの兄なら納得だよ」
「あ~っと」
「僕も気になります。あんなにモナーナさんが強いなんて思わなかったし」

 シルフィさんに僕らがSランクなんだと思われたようだ。アズ君も詰め寄ってきた。どうしよう、本当のことを言ったらがっかりするかな?

「私たちはCランクだよ。今、上がっている最中なの」
「・・そうか、そうだよな。確か、兄と言ってもユアンと同い年のはずだしな」
「だけど、おかしいですよ。強さをギルドマスターとかに見せればBランクまでは一人の権限で上げられるはずです。それなのにどうして?」

 シルフィさんとアズ君が僕に視線を集める。そんなこと言われてもギルドマスター達は何も言ってこなかったよ。ランク上がるのもアレイストさんにあげてもらったし、そういえばなんでアレイストさんにあげてもらったんだろう。二人の言っていることが本当ならマスターにあげてもらうのが普通なのでは?

「みんなはギルドマスターにあげてもらってるの?」
「ああ、うちはユアンがちゃんと試験をしたいっていって依頼を達成して上がったけどマスターに上げてもらったよ」
「僕はまだDランクなんだけど、ゴブリン討伐と納品依頼であがりました。それもマスターに承認してもらって」
「ええ、僕はアレイストさんにあげてもらったんだけど、そういう師匠的な人にあげてもらわないの?」

 みんなそれぞれのギルドマスターにあげてもらっているみたいです。僕がアレイストさんみたいな人にあげてもらわないのと聞くとシルフィさんとダネンさんが顔を見合って笑い出した。

「ははは、アレイスト姉さんの弟子なのか」
「通りで強いわけだよ」
「アレイストさんを知っているんですね」
「そりゃそうさ、私たちもアレイスト姉さんに教えてもらっていたからね」
「でも、そうなるとアレイスト姉さんは二人のランクを一気にあげたくなかったのかもね」

 笑いながらアレイストさんの考えを話す二人。

「一気にあげるとどうしても目立つからね。でかいクランに目を付けられるんだよ」
「姉さんのことだから[金色の旗]に誘っただろ?」
「あ、はい」
「やっぱりね。うちはまだいいんだけど、悪いクランだと脅して仲間に引き入れるところもあるからね。早めに囲おうと思ったんだろ」

 どうやら、アレイストさんは僕らを守ろうとしてくれたようです。それに気づかずに僕は断っちゃった、なんだか悪いことしたな~。でも、そんな怖いクランがあるんだね。仲間が欲しいのに脅したりしたら敵ができちゃうと思うけどな。

「Cランクなら低レベルな輩はこないからいいと踏んだのかもね。仲間も強ければ大丈夫だろうし」

 シルフィさんはそう言ってうなづいている。

「[マジックファクトリー]のルーク君とモナーナさんかな?」
 
 みんなと話していると一階への階段のほうから眼鏡をかけた青年が話しかけてきた。

「げっ、副団長」

 ダネンさんが怪訝な顔で声をもらした。あの人がユアンの言っていた副団長さんか。みた感じはそんなに怖そうじゃないけどな。

「私は[金色の旗]のルワースというものです。副団長を務めさせてもらっています」
「えっと、僕はルークです。こっちがモナーナ、あとルナさんとアズ君です」

 優しい笑顔で僕に自己紹介をしてきたルワースさん、印象ではやっぱり、嫌な感じしないです。

「早速なのですがうちに入りませんか?」

 それでもやっぱり勧誘はしてくるみたい。今のところ、特定のクランに入るつもりはないので断る。

「いえ、僕はまだそういったところにはいるつもりはないんです」
「そうですか、ですが。あなた達ほどの強さがあると貴族達も黙っていませんよ。貴族達は力づくでもあなた達を欲して身内を虐げるかも、そう言ったときにクランに入っているとギルドを通して強く言えるんです。ですから王都で冒険者稼業をするにはクランに入ったほうがいいですよ」

 ルワースさんは優しい笑顔のまま、クランを勧めてくる。僕らはすぐにエリントス経由でワインプールに帰るつもりなので断ることにします。

「すみません。王都で冒険者稼業をしに来たわけではないのでお断りします。すぐにワインプールに帰りますので」
「孤児院のみんなが待ってるもんね」

 僕の言葉に続いてモナーナが同調して話した。ルワースさんはあごに手を当てて考え込んだ。

「そうですか、ではしょうがないですね。気が変わったら言ってくださいね」

 ルワースさんは最後まで満面の笑みで去っていった。その姿を見たシルフィさんとダネンさんはうろたえて居ます。どうしたんだろう?

「ルワースが笑顔で去っていったよ」
「怒らないルワースを見たのは初めてだね」

 なんだかルワースさんが怒っているのは周りのせいな気がしてきた。ユアンだって、勝手に出てきたって言っていたし、たぶんそれで怒ったんでしょ。ルワースさんすいませんでした。これからもユアンをよろしくお願いします。

「じゃあ、僕らは帰りますね」
「ちょっとまった、ユアンに会っていかないのかい?」
「ああ、そうだ。ユアンはどこに?」
「ユアンは王城の横の宮殿に住んでいるんだよ。私たちは普通に通っていけないから細かくはわからないけどね」

 どうやら、ユアンはかなり気に入られているみたい。王城への門をくぐった先に宮殿があってそこに住んでいるみたい。それって実質王族じゃないのかなっとか思ってしまった。流石、ユアン。英雄街道まっしぐらだね。
しおりを挟む
感想 296

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...