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第三章 王都リナージュ

第十四話 クレイラット卿

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 ユアンが城の横にある宮殿に住んでいることを知って、会いに行こうと城への門の前まできた。さっき出てきたときに挨拶した衛兵の人がいなくなっていて、代わりに立っていた衛兵さんは僕らをみて首をかしげている。僕はその人に話しかける。

「あの~」
「何か御用ですか?」
「ユアンに会いたいんですけど」
「えっ、ユアン様に?駄目ですよ城への門は王族か許可を得た人しか入れないのですから」
「僕はユアンの兄のルークなんですけど、ユアンに伝えるだけでも」
「ええっ、お兄さんなのですか?って騙されませんよ。そんな話は聞いたこともありません。あなたみたいな人多いんですよね。この間もユアン様のお婆さんとか言って腰の折れたおばあちゃんが入ろうとしてきたんですよ。全く、次そんなことを言ったら捕らえますからね」

 衛兵さんは僕の話を聞いてヤレヤレといった様子で首を横に振った。どうやら、ユアンの身内を語って門を突破する人がいるようです。人気者を守る人たちって大変だね。そういう人を判別しないといけないんだからさ。

「駄目だったねルーク」
「ギルドで待つしかないですね」
「まあ、ギルドにも言伝はしておいたから大丈夫でしょ」

 門から離れて僕らは噴水広場のベンチに座った。その時、門に近づいていく貴族っぽい人が。

「これはこれはクレイラット様、今日はどうしたのですか?」
「ふむ、ゴルインに渡した私の剣が切られたと聞いてね」
「えっ、そんなことが?」

 貴族が歩いてやってくることがそんなにないことで衛兵さんは驚いている。クレイラットと言われたダンディーな貴族の人は気さくに衛兵さんに理由を話している。その話を聞いて僕は顔を隠す。今日起きた事がすでにクレイラット卿に知られていることに驚いています。まさか、ばれないとは思うけど一応顔を隠します。

「そういえば、先ほどあそこにいる少年を追い返していたね」
「あ~そうなんですよ。あの子たちがユアン様の兄とか言ってこの門を通ろうとしたんです」
「ほ~、ユアン君の兄か・・・通りで」

 さっきの僕らとのやり取りを話しているクレイラット卿と衛兵さん、僕は嫌な予感がして足早に宿屋の方へと歩いていく。

「おっと、どこへ行くんだい」
「!?」

 さっきまで衛兵さんの近くで話していたクレイラット卿は僕らの目の前に現れた。みんなに言われたように相当な手練れなのがうかがえた。

「えっと、僕らは宿屋へ帰ろうと思いまして」
「ふむ、あちらのグガインの宿屋ですか。それはお目が高い」
「はい~、では失礼します」
「おっと、君は何か勘違いをしているようだね。別に君を捕まえようとしているわけではないんだよ。ただ、一つだけ質問に答えてくれ」

 何度かクレイラット卿から逃げようと前足を前に出すんだけど悉く彼に止められます。彼は僕に一つだけ質問をしてきました。

「君のスキルレベルはいくつだい?」
「・・・」

 こんな質問予期していませんでした。絶対に答えられないよ。クレイラット卿は僕に顔を近づけてきて圧をかけてきてます。

「ちょっとあなた、失礼じゃありませんか?初対面の相手のステータスを聞きだそうとするなんて」
「おっと、失礼。しかし、失礼を承知で知りたいんだよ。実はね。今日、僕は自分の屋敷から城にやってきたんだ。なんでかというと、ゴルインという私の弟子に与えた剣からのオーラが途絶えてね。それで不審に思って調べてみたら、折られたというじゃないか。そして、城前に来てみれば、魔王のような気配を持っている男がいるじゃないか。そうしたら調べなくては王国騎士隊の名が廃るというものだろ?」

 また、魔王って言われた。そんなに僕から恐ろしいものがでているの?強い人から僕が良く見えるようになってしまったみたい。どうしよう・・・。

「私の見立てでは剣を切ったのは君でユアン君の兄というのも本当だろう。どうだろうか?」

 クレイラット卿は輝く目で僕へと語った。推察通りすぎてなんだか怖いです。

「私の光剣、シャインは剣術スキル5の私でも切ることはできない。Aランクの剣なのだから当たり前だ。それを木剣で切ってしまったというじゃないか。木剣では鉄はおろか同じ木ですら切れるはずはない。私くらいのスキルがなくてはな。そんな私ですら、シャインを切ることはできない。切ろうと思ったことすらないよ。そんな無謀なことをする暇はないからね」

 僕は余計なことをしてしまったようだ。自慢げに見せてきたもんだから壊してあげたくなっちゃったんだよね。クレイラット卿は光剣シャインからのオーラが途絶えたと言っていたけどそういうスキルかなんかなのかな?

「私の愛剣、シャイニングを模して作られたシャイン。まるで兄弟を切られたかのような悲しみが私にも流れてくるのだよ」

 僕が思っていたことを答えるようにクレイラット卿は腰に差している剣をなでながら話した。なんだか悪いことをした気分になってきた。だけど、ここで本当のことを言ってしまったら英雄生活になってしまう可能性が上がる。ここは知らぬ存ぜぬだ。

「それは残念でしたね。では僕らは宿屋に」
「・・・まあ、いいだろう。しかし、ユアン君に確認を取ってすぐにでもグガインの宿屋に顔を出すからね」

 クレイラット卿はそういって門をくぐっていった。ユアンに僕らが来たことを伝えるというのは達成できるけどめんどくさいことになってしまった。
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