154 / 165
第四章 平穏

第九話 屋敷完成

しおりを挟む
「二階はどうしようかな」

 建設を再開して僕は二階に上がった。二階にはゼル様の寝室だった部屋が三分の二を占める。右側と中央をすべて寝室ってどんだけすごいんだろう。このままじゃみんなと同じ部屋で寝る設計になってしまうので変更します。70坪の敷地面積なのでそれを15坪で4部屋作って、残りの10坪も部屋にしておく。はっきり言って10坪の部屋でもすごく広くて小市民の僕的には慣れるのが大変。
 それでは作っていきましょう。タンスやクローゼットを作っておいて部屋を区切る壁を作っていきます。木材は売るほどあるのでいくつでも生産可能。もちろん、タンスやクローゼットはアイテムバッグと同じようにいくらでも入るようになっています。そう言えば僕のアイテムバッグ、ずっと緑色に光ってる。いくらでもアイテムが入るみたいなんだけど、やっぱり普通じゃないのかな。
 そうこう考えながら部屋を作っていくとあっという間に完成。あとは残りの三分の一の部分、40坪分はこれまたびっくりお風呂でした。
 大浴場で二階に設置するなんてどんなお金持ちだよね。天窓が大きくあって夜空が覗けるようになってるし、大きな虎の置物からお湯が出てくる仕組みみたい、今は魔石がないみたいで水が出ないようになっている。水が出て流れてくる間に火の魔石の上を通ることでお湯になっていく仕組み、僕のお湯が沸く桶と違って別々の魔石を使って工夫が見えて何だか面白い。普通に泳げるほどの湯舟だけど、年代物のようでひびとかが目立つ、全部直して、お風呂は女湯と男湯を作ることにしました。湯舟を半分こする感じで壁を生成していく。水が沸く虎口は一つだったので同じような口を女湯の方にも作ってみた。どうせだからミスリーに似せて作ると何だか可愛くてついつい撫でてしまう。丁度、そこにミスリーが現れて、僕の作った虎の横に座って僕を見てきた。

「にゃ~」
「撫でろってこと?」

 徐にミスリーが鳴きだした。僕は撫でてほしいんだと思ってミスリーを撫でるとその場に丸くなって寝る体勢、ここが気に入ったのかな。眠るミスリーを尻目に僕はお風呂を完成させていく。コネコネと最後の仕上げです。

「よ~し完成。水はお湯の沸く桶を設置したから大丈夫」

 男湯と女湯を20坪ずつで作った。とても広くて男は僕だけなので毎回心細くお風呂に入る姿が目に浮かびます。うん、寂しい。

「わ~、凄~い」
「兄さん完成したんだね」
「凄い広いですね」

 モナーナ達がお風呂に入ってきて歓声を上げた。隅々まで見て回るみんなを僕は目で追っていく。

「ゼル様ってお風呂にお金かけてたんだね」
「あ~そうだ。この魔石とかってモナーナのお父さんの魔道具じゃないかな?ティーセットと同じ印が付いてるんだけど」
「えっ」

 取り外した魔石をモナーナに見せるとモナーナは目を輝かせた。その輝きは潤いを帯びていて、涙があふれそうになっている。お父さんの形見が増えたかのかな。屋敷を買ってよかったよ。

「ルーク、もらっていいかな?」
「どうぞ、モナーナのお父さんの形見なんだから当然だよ」

 そういうとモナーナは魔石をギュッと抱きしめた。本当に愛しいな。

 とりあえず、屋敷は完成。今日は小鳥のさえずり亭で泊まる。今日が最後だから何だか感慨深いな。

「とか思っていました」

 ワイワイワイワイ。今、僕の屋敷でパーティーが開催されています。モナーナ達が外に出ていたのはこのことだったようです。飾りつけはないものの屋敷の一階部分と地下の部分を解放してパーティーが開催されました。地下は机を置いただけでとても広々としているけど、みんな室内栽培が気になるようで人が集まっていました。
 レインに栽培を任せているから作物はすぐに育つ、自給自足をすぐに実現可能な屋敷だ。

 一階の玄関から右側の元パーティールームで僕は果物から作ったミックスジュースを飲んでいるとスリンさんが来てくれた。スリンさんに挨拶しなくちゃ。 

「スリンさんもきてくれたんですね」
「すまないね。私たちまでよんでもらっちゃって」
「ルークお兄ちゃん」

 スリンさんに挨拶するとルルちゃんが飛びついてきた。ルルちゃんは本当に活発な女の子だな~。ユアンとは違うから何だか新鮮だよ。

「屋敷があってもあの部屋は取っておくからね。いつでも泊まりに来な」
「ええ、悪いですよそんな・・・」
「いいんだよ。ルークはこのエリントスの英雄なんだからね」

 スリンさんはニカッと笑って話した。エリントスの英雄か~、そこんところはユアンにできないのが悔やまれる。最初からユアンと行動していればこんなことには!

「エリントスの英雄も僕にしようなんて思っているんじゃないだろうね?」
「あっ、ユアン。よくわかったね」
「もうっ、兄さんは相変わらずだよね。こんな屋敷を改造しちゃったりしているくせに」

 ユアンは僕の考えをお見通しのようであきれ顔です。本来ならユアンが英雄なんだからしょうがない。僕なんかちょっと製作が凄いだけで他はからっきしなんだから英雄なんておこがましいよ。

「ルーク、もう諦めたら?人が作れないものを作れたりしたらその時点で英雄とか歴史に名を残す人なんだから」
「ええ!」

 モナーナがそんなことを言ってくる。確かに規格外の物を作っている自覚はあるけど、歴史に名を残すとか言われると首を傾げざる負えない。

「ルークさんはユアンさんでも倒せないような人たちを倒したんですよ。それに冥樹がスキルを得た時、私は世界の終わりを自覚しました。ですがその未来は綺麗に山と共に消えたのです。あなたはもう、歴史に名をのこしているんですよ」

 ルナさんがワイン片手に現れました。食べ物の多くは街のみんなが持ってきたものなのでジュースくらいしか僕は提供していません。エリントスの人達はパーティー慣れしているのかな?
 僕はそんなことを言われても納得はしません。だってこの力はお父さん達のものなんだからね。お父さん達よりも凄い力だってわかってしまったけど・・・。

「ははは、ルーク君は相変わらずなようだね」
「クルシュ様」

 クルシュ様達もパーティーに来てくれたようだ。綺麗なドレスを着たルビリア様とサファリア様もいて何だか目のやり場に困る。

「ご招待ありがとうルーク君」
「僕はしていないんですけどね」

 クルシュ様は握手を求めてきたので答えて握手をする。

「それでルーク君はいつ、モナーナさんと?」
「「え?」」
「私たちはそんなんじゃないですよ!」

 クルシュ様の言葉にモナーナが狼狽えている。僕がモナーナと何だろうか?

「え?違うのかい?僕はてっきり」
「クルシュ様ちょっとこちらに」
「ルビリアどうしたんだ?」

 ルビリア様がクルシュ様と屋敷の外へと出て行ってしまった。サファリア様も遅れて外に向かった。すると、

「クルシュ様、お二人は意識しあっている仲なんです。あまり外からちゃちゃをいれるものではありません」
「何をそんなに怒っているんだ。私はただ思ったことをいっただけ」
「それがいけないんです。もっと空気を読んでください。思ったことをいってばかりでは世は戦争ばかりになってしまいますよ」
「ああ、わかったよ」
「分ればいいんです」

 ルビリア様の剣幕にクルシュ様はタジタジ、どうやら僕とモナーナの結婚という話をしてきていたようだ。まだ付き合ってもいないのに一足飛び過ぎるよ。

「ははは、すまなかったね」
「いえいえ・・・」

 おかげでモナーナが赤くなって離れて行ってしまいましたよ。せっかくおめかししていていつもより綺麗だったのに。

「兄さん、モナーナと一緒にいなくていいの?」
「ん~。恥ずかしそうにしていたから」
「今なら二人きりになれるんじゃないの?」

 モナーナは二階に上がっていった。ユアンの言う通り今なら二人っきりで話が。

「ありがとうユアン、みんなの事お願いね」
「うん・・・頑張ってねお兄ちゃん」

 ユアンにお礼を言って僕はモナーナを追いかける。
しおりを挟む
感想 296

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...