165 / 165
その後

世界をこの手に

しおりを挟む
「ずっと見ていたけど、君は諦めていないようだね」

 お父さんと話した次の日、僕は孤児院の魔石とエリントスの屋敷にある魔石を大きくしていた。その姿を見ていたらしい、僕らの世界の神イースが僕の背後に姿を現して話してきた。

「諦めるわけないじゃん! あと一日しかないんだよ」

 僕は魔石増設作業を続けながら声を荒らげた。

「そうか。しかし、そうすると世界は滅んでしまうよ。他の世界も一緒にね」

「他の世界も?」

「ああ、前にも言っただろ。僕らの体がこの世界でもあり、別の世界でもある。地球というあの世界もまた別の神の体、そのものなんだ。それが引かれあうという事は別の世界も巻き込んで滅んでしまうって事なんだよ。つまりは神の死だね」

 イースはそう言ってまたまた、机に置いてあった、僕の果物を食べていく、今日はスイカでお父さん達の世界から買ってきたものだ。僕も食べたかったのに。

「うん、美味しい。まあ、そういう事だからさ。諦めてくれないかな」

「・・・」

 他の世界も死んでしまう。そんな事言われたら頷かないわけにはいかないのかな。でも、僕はお父さん達に・・・

「それでも納得しないならこういうのはどうかな?」

「え?」

 イースは一枚の紙を差し出してきた。その紙はお父さんが元の世界に戻った時に置いていったメモに似ていた。








「お父さん、元気にしてますか?」

「私たちは元気です」

「子供も無事に生まれたにゃ」

「お父さん、僕の子供だよ。ほら」

 僕はイースの提案を受け入れた。それは手紙のような物で動画って言うのを取って送るものだった。
 動画を取るには紙にマナを流すだけで勝手に記録してくれる。最初は撮れているのかわからなくて不安だったけどやっていくうちに慣れてきたから今は大丈夫。

「おじいちゃんとおばあちゃんに挨拶して」

『あ~い?』

 モナーナ達が抱き上げている赤ん坊、あの子たちが僕の子供達。モナーナにそっくりな桃色の髪の女の子とユアンにそっくりな金髪の聡明な顔立ちの男の子、それにニャムと一緒の猫耳の女の子。みんなが可愛く首を傾げて声を漏らした。子供達はまだ言葉を理解していないみたいだけど僕に手を振ってきたのでお父さん達もよろこんでいるかな。

「そちらはもう半年くらいたっちゃったかな」

 あっちの世界から離れて一か月、時間がかかると更に世界が離れるので時間も離れてしまう。たぶん今は5倍以上になっていると思うんだけど、どのくらい離れているのか見当もつかないよ。

「また動画を送ります。今度はもっと時間が経っているのかな? 体に気をつけてね」

 そう締めくくって僕は動画を切った。

「やあ、良い動画だったね」

「イース・・」

『え? この人が?』

 動画を切るとイースが現れて声をかけてきた。みんな驚いているけど彼は飄々としている。

「君に朗報だよ」

 イースはそう言ってまた果物に手をかけていく、子供達の為にジュースにしようと思ったんだけどな。

「うーんこれも美味しい。バナナってやつだね。そうそう、朗報って言うのは君に神になる権利を与えるって話さ」

「神?」

 朗報と言っているけど僕はそんな凄い者になりたいと思ったこともない。今でも英雄になっちゃって大変なのに神なんかになったらそれこそ崇められたりして、ノルディック様のように利用されてあくどい事に使われちゃうんだ。そんなの絶対にやだな。

「分かっていないみたいだね。神になれば君のお父さん達の世界を手に入れられるんだよ。また会えるんだよ。時間を気にせずにね」

「え? でも」

「僕ら神も忙しいんだ。世界を譲れる者が現れたらあげようと思っていたんだよ。あちらの神も了承しているよ」

「目やお腹なんかに世界がはいるの?」

 何だかヤダな。お腹掻けないとかそういった弊害が生まれるんじゃ?

「人間と体は変わらないよ。見た目は僕みたいにちょっと模様が入るくらいだけどね。ってこの子も興味津々だね」

「ダダ~」

 ユアンの子供がイースの足元にハイハイで向かってズボンを引っ張っている。神をも恐れぬとはこの事かな。

「左の眼は見ちゃダメだぞー」

「アイ?」

 イースはユアンの子を抱き上げて左目を瞑った。目に入っている世界を見てしまうと引き込まれてしまうらしい。僕はあんな体になっちゃうって事だよね。

「神になったら不老不死だし、外見も自由自在だよ」

 おじさんになったり子供達と同じ赤子になったりとやって見せるイース。僕が戸惑っているのはそう言う事じゃないんだけどね。

「もちろん、こちらの世界もあげるよ。同じ神の物になれば時間も同じ流れだ。どうだろうか?」

「う~ん。今と変わらずにいられるの?」

「そうだよ。ただ、いつかは家族のみんなと一緒にいられなくなるだろうけど」

「寿命が変わるから?」

「そうだね」

 不老不死になるとみんなの死を受け入れないといけなくなるのか。

「ルーク、やめた方がいいんじゃない?」

「ルークには悲しんでほしくないにゃ」

「僕もお父さんと会うのを諦めるよ」

 モナーナ達は僕を気遣ってくれた。お父さん達の世界と離れることはユアンの兄である僕としては諦めたくないと思ってた。イースの気遣いでそれが叶うと言われたら、

「僕は神になるよ」

『ルーク!』

「君ならそう言ってくれると思ったよ」

 モナーナ達は驚いて声を荒らげた。イースは嬉しそうにしている。そんなに神様って忙しいのかな?

「僕もね。神になる時に家族から反対されたよ。家族はみんな死んじゃったけど、今じゃ看取れてよかったと思ってる。悲しいけど看取れないよりは看取れた方がいいと思った。自分が看取らせる方だったら未練が残るからね。あちらの神にも言っておくよ。ようこそ神の世界へ」

 それだけ言うとイースは消えていく。

「ルーク!」

「神様か~。何だか大きな話になっちゃったね」

「そんな呑気に話す事じゃ無いにゃ」

「凄い凄いって思ったけど、兄さんが神様に」

 モナーナは怒っているみたい。ニャムもモナーナに同意でユアンは驚いててそれどころじゃないみたい。

「なんで勝手に決めちゃうの?」

「なんでそんなに怒ってるのさ。だってみんな僕のことを気遣って自分の意見を言えてないんだもん。僕はみんなの為にやってきた。今もそうだよ」

「ルーク・・」

 モナーナは怒って顔を近づけてきた。理由を話したらモナーナは涙目になって抱きしめてくれた。

「モナーナばっかりずるいにゃ」

「僕らも兄さんの奥さんなんだよ」

 ニャムとユアンとも抱き合ってみんなの温かさを感じた。

 僕はこれから神になり、お父さん達と幸せに暮らす。これから僕を残してみんないなくなってしまうと考えると悲しくなるけど、そこはほら、神様だから寿命を延ばすこともできるかもしれない。みんなが望むなら僕らは一生、ともに歩いて行く。
 そう、いつまでも僕はみんなの【1ルーク】だから




どうも、神威異夢華です
延長した1ルークでしたが楽しんでいただけましたか?
少し足早に終わらせた感じですが私的にはハッピーに出来てよかったと思っています
では、また別のお話でも楽しませられるように精進していきます

しおりを挟む
感想 296

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(296件)

a-assam
2025.12.12 a-assam

ほのぼの〜する物語をありがとうございます
第四章から ルンちゃんがルルちゃんになってます
  

2025.12.12 カムイイムカ(神威異夢華)

感想誤字報告ありがとうございます
ほのぼのしてホッとするような作品を目指しているのでそう言っていただけると嬉しいです
誤字は気づきませんでした
直せそうにないので諦めます

解除
樹
2025.08.06

他の方も言ってる様なので、改めて言うのなんですが
やはり年齢15歳に対しての、主人公の口調に
非常に違和感を感じます。
特に、語尾に「〜」を付ける口調がクドいなと。

勿論、勉強なんて出来る環境では無かったのは
ここまで読んで何となく分かりましたが
やはり読んでいてキツいモノがあるかなと。

主人公のイメージを分かりやすく言うと、
昔昔の手塚治虫先生が描いていらっしゃった「三つ目がとおる」の
写楽君に近いイメージを持ちました。
写楽君は、奇形・発達障害・二重人格の
負の三拍子を揃えた属性モリモリの主人公でした。
そんなイメージが今作品の主人公に感じられました。

何れ覚醒して、一気に知性がアップする時が来るのかもしれませんが
それまでに、主人公の年齢にそぐわない口調に耐えられるかどうか?が好みが分かれるポイントですかね。

2025.08.06 カムイイムカ(神威異夢華)

読んでいただきありがとうございます

いい意味でも悪い意味でも印象に残ってくれてよかったです
幼さを感じてくれるような子になっていればよかったのですが悪い方向に作用してしまったようですね

解除
DJ太郎
2025.01.05 DJ太郎

もっとたくさんの作品に触れた方が良いと思います。
それこそジャンルを問わずガッチガチの古典からしょうもない漫画も含め幅広くです!
句読点の付け方ひとつとっても、ラノベの場合それ自体が表現力に奥行をもたらしてくれると思います。情景が浮かびやすいです。
キャラ設定が他の方も仰る様に甘いです。
カタルシス効果が薄いです。初めは読んでて苦しいくらいが作品が光ると思います。
辛口評価させて頂き大変申し訳ございませんが、コメントすらする気が起きない作品ばかりの中、目を引くものがございましたので少々失礼させて頂きました。
これからも頑張ってください!

2025.01.05 カムイイムカ(神威異夢華)

感想ありがとうございます

読んでいただけて嬉しいです
まだまだ勉強中の身なのですが
とにかく書くことを優先していました
少し人の書いたものを読む時間を持ったほうがいいかもしれませんね
助言ありがとうございます

解除

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。