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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編
第29話 旅立つ前の拠点探し!
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窓の外は今日も晴天だ。会社員の時と違って、目覚ましに起こされない今の生活はそれなりに気に入っている。
今日はメイさんの屋敷に行って話を聞く、そして拠点探しだ!
すごく心が躍る。俺は落ち着きなくソワソワしながら顔を洗い、着替えを済ませた。
子供のころ、ものすごく欲しかったゲームやおもちゃを親に買ってもらえる時のような気分だ。
一階に下りると、セレイナとフェリドゥーンがロビーで待っていた。
「遅くなってごめん」
二人に挨拶を済ませたあと、宿屋に併設されている酒場で軽く朝食を済ませ、俺たちはメイさんの屋敷へと向かった。
****
――メイさんの屋敷に到着した俺たちは、セドリックに中へと通してもらった。
屋敷に入るのも今ではほぼ顔パスだ。
応接室で待つこと数分、ドアが開くと大きな体を屈め、ドアの上枠をくぐるようにメイさんが部屋へと入ってきた。
メイさんはフェリドゥーン姿が目に入ると、彼の前で視線を止めた。
「彼が二人目の星骸フェリドゥーンね。約三年ぶりかしら、あの時とはまるで別人だわ」
「ええ、これが本来のフェリドゥーンらしいです」
「――ものすごいマナと覇動を感じるわ、セレイナさん以上かしら……」
「はい、戦闘に関して私はフェリドゥーンに及びません。私の役割はあくまでサポートですので」
「それで魔族数千を一瞬で消し飛ばすんだから、ゾッとするわね」
メイさんは腰に手を当てて豪快に笑った。
「で?今日は何の用かしら?フェリドゥーン氏のお披露目?」
「それもありますけど、実はエブンズダールで家を探してまして――」
俺はメイさんに詳細を説明した。
なぜメイさんを訪ねたかというと、この街の盟主であるアーバンデイル家であればいい商人を紹介してもらえるのではないかというのと、もしかしたら使っていない別荘なんかがあって、それを格安で……
なんていう、考えがあったからだ。
後者はさすがに甘え過ぎかな。今の持ち金だってメイさんのおかげだし……
でも、前者は力のある権力者に頼ったほうが得策である。あっちの世界でも不動産屋は当たり外れが結構あるしね。
「んー…… うちが所有してるめぼしい物件はもう貸し出しちゃってるのよね。――土地の売買に長けた商人を知ってるから紹介してあげるわ。今手紙を書いてくるから待ってて」
「本当に何から何まですみません……頼りきりになってしまって」
「いいのよ、あなたたちがこの国に拠点を置いてくれるだけで、こっちとしてもありがたいからね」
メイさんからアーバンデイル家の蝋印が押された手紙を受け取り、俺たちは屋敷を出た。
商人ギルドまでは、グッド・ルッキング・ガイのメンバーのアルテが馬車で送ってくれるそうだ。
本当に至れり尽くせりで、メイさんには感謝しかない。
****
――目前に大きな建物が見えてきた。あれが商人ギルドらしい。
冒険者ギルドほどではないが、それでも目を引く大きさだ。
入り口前の広場には、商人たちの馬車が十台ほど置かれていて、行商人たちが大荷物を背負って出入りしている。
馬車を降りてアルテに礼をした俺たちは、ギルドの扉を開けた。
――これが商人ギルドか。
冒険者ギルドとはまた別の、異様な熱気とヒリヒリとした空気感が漂っていた。
商いも、けして甘くはない戦いなんだなと感じる。
「すみません。レオルドさんはどちらにおられますか?」
俺はカウンターの女性に声をかけた。
「レオルドさんなら ――えーと、あちらにいますよ」
「ありがとうございます」
俺たちは案内された場所に向かう。すると、恰幅の良い一人の中年男性が地図を広げて作業をしていた。
あの人がレオルドさんかな?
「あの~、お忙しい所すみません。私たち、レオルドさんという方を訪ねてきたんですが」
「ん? 私がレオルドですが、何かご用ですかな?」
俺はレオルドさんにメイさんからの手紙を渡した。
彼は手紙に目を通すと、途端に営業スマイルに切り替わった。
「これはこれは、カッセル辺境伯様の客人ですか。物件をお探しとのことですが、ご予算をお聞きしてもよろしいでしょうか?なにかご希望があれば、それに沿った物件をいくつかご紹介できると思います」
うーん…… 予算か。
今の持ち金はざっと金貨19枚、190万ディーツほどだ。
メイさんの話だと、魔族戦での功績を王様がえらく評価してくれていたようなので、かなりの報酬が出るらしい。
それを考慮すれば、今の持ち金を全て叩いても納得のできる物件を買ったほうが良いかもしれない。
まあ、気に入った物件の額によっては、王様からの報酬が出てから決めてもいいし。
「とりあえず、190~300万ディーツほどで購入できる物件があれば助かります。あと、出来れば部屋数が多くて広い家が良いですね」
「なるほど。その金額でしたらいい家をご紹介できると思いますよ。さっそく見に行かれますか?」
「はい!ぜひお願いします!」
****
俺たちを乗せた馬車は郊外の林の中にあった。
林道は整備されているけど、ちょっと街まで遠いかな……
でも、その方がなんか拠点っぽいし、物件次第ではありかもしれない。
林道が終わり、広い庭園がある屋敷と呼べる規模の家が見えてきた。
「あれが一軒目の物件です」
業者が入っているのか、庭園はそれなりに整備されていて、屋敷もツタだらけというわけではない。
一件目からなかなか悪くないかも。
「広い玄関ホールが売りです。部屋数は11で、浴室も完備されています」
「お、お風呂あるんですか!?」
風呂!その言葉に俺は色めき立った。
内覧しに行くと、そこそこの広さの浴室に緑色の浴槽が置かれている。
やっぱ日本人なら浴槽でしょ!!
うん、ここは候補の一つだな。部屋数も問題ないし、掃除も行き届いていてきれいだ。
街から少し遠いのは仕方がない。
「金額の方は、築年数が35年と少し古いので230万ディーツになりますね」
ほうほう。この規模の屋敷にしては価格もお手頃でいいじゃないか!
もうここで良いかなという気持ちを抑えつつ、残りの物件も一応見てみることにした。
――二つ目の物件は、築年数こそ13年と新しいものの、部屋数が8で一軒目より少しばかり小さめの家だった。街の中心部にある邸宅で、元は騎士家系の人間が住んでいたようだ。
敷地内には、馬を飼育する厩舎も備えられている。
そして肝心の風呂は、排水などの構造上30メートルほど離れた場所にあった。
価格は195万ディーツ。
うーん…… ここは一応キープかな。外装内装共に綺麗で、広さは日本人の俺にとっては少し馴染みやすい。
「部屋数が多いものだと次が最後の物件なんですが――」
「どうかしたんですか?」
「あ、いえ。 良い屋敷なんですがね。なかなか買い手が付かない物件でして、一応内覧いたしますか?」
「は、はい。見てみたいです」
「それでは移動しましょう。ここからだと30分ほどで着きますので」
馬車は中心部から繁華街を抜けて、街の外れの方へと進む。
街外れとはいえ、まだちらほらと住宅などが存在する一角なのだけど、なにやら奇妙な光景が目に飛び込んできた。
高い城壁に囲まれた謎の一角。そこは、他と比べて一線を画しており、どこか異質だった。
馬車はそこへ向けて走っていき、城壁の門の前で停まった。
「こちらです」
10メートルはある高さの城壁。しかし、特に見張り台のような物はない。
何かから守るためのものではないのだろうか。見張りもいない高い壁は、逆に周囲からのただの目隠しになってしまうこともある。
中で何か犯罪が起こっていても、発見されにくいというデメリットでもあるのだ。
「この壁。――結界のようなものが施されていますね」
セレイナが壁に手を触れながら言った。
結界? 何のための結界なのだろう。
「では、行きましょう」
レオルドさんの後を追い、俺たちも敷地内へと入る。そして敷地へ足を踏み入れた瞬間、俺は驚いた。
広い庭園全体が、高濃度のマナで満たされていた。
すごい…… 地球のパワースポットなんて比ではないレベルのスーパーパワースポットだ。
俺は吸い込まれるように庭園へと誘われた。
「えー、部屋数は20程、手入れも私どもが管理しておりましたし、すぐにでも住める状態です。もちろん浴室もありますよ。ですが――」
「――ここにします」
「え? 今なんと?」
「ここに決めます」
俺は無意識に口からこぼれ出ていた。
なんて慈愛に満ちた心地よいマナなんだろう…… でもなぜか、一瞬だけど涙が出そうな衝動に駆られた。
「ほ、本当ですか?それは我々としても助かりますが、本当にここでよろしいのですか?」
「はい、気に入りました。ここに決めます」
一軒目の屋敷よりもだいぶ大きく、部屋数も20ある。
俺達には少しオーバースペックな気もするけど、俺は一目でこの屋敷を気に入ってしまった。
「いや~、ここはいつも売れ残ってしまいまして、カッセル辺境伯様の客人に勧めるのはどうかと思っていたのですが」
「ここはどんな方が住んでいたんですか?」
「ここですか?ここを建てたのはオウエルという豪商でしてね、私の古くからの知り合いでもありました。彼の妻メリウスは若く高名なウィザードで、それはそれは美しい女性でした。ですが――」
レオルドさんは少し顔を曇らせた。
「10年前に彼が大病を患いましてね。それからですかね、この屋敷を高い壁で覆ってしまったのです。そして8年前、彼が亡くなると、失意の中メリウスは他の国へ旅立ってしまいました」
「そんなことが……」
「はい。結構な歳の差はありましたが、とても仲のいい夫婦でしたので」
本来ならここは300万ディーツを超える価格なんだそうだ。でも、なかなか買い手がつかなかったことと、カッセル辺境伯の知人ということで170万ディーツにしてもらい、俺はその場で契約書にサインをして代金を支払った。
晴れて、もうここは俺の家ってわけだ!
内見もせずに契約してしまったけど、中に入ると、手入れが行き届いていて本当にすぐにでも住める状態だった。
もちろん風呂もある。しかもシャワー付きで、浴室の横にある貯水槽の魔石に火魔法を込めると、お湯も出ちゃうのだ!
奥さんが高名なウィザードだからこその設備なのだろうか。
しかし、ここで一つ問題が……
屋敷が広すぎるのである!!!!
とにかく広い。メイさんの屋敷には及ばないけど、ちょっと管理する自信がない……
「買ったはいいけど、屋敷の管理はどうしよう……掃除とかかなり大変だぞこれ」
「管理、ですか」
「管理や労働力に、貴族であれば領民などから奉公人を召し抱えるのが一般的ですが、それ以外は奴隷を買ったりなどですね。ですがこの国は奴隷の売買を禁止しておりますので――」
「ど、奴隷はちょっと、ね……」
俺が悩んでいると、セレイナがパンと手を打った。
「リントさんが従者を創るというのはどうでしょう」
えぇ――――!! お、俺が従者を創る!?
今日はメイさんの屋敷に行って話を聞く、そして拠点探しだ!
すごく心が躍る。俺は落ち着きなくソワソワしながら顔を洗い、着替えを済ませた。
子供のころ、ものすごく欲しかったゲームやおもちゃを親に買ってもらえる時のような気分だ。
一階に下りると、セレイナとフェリドゥーンがロビーで待っていた。
「遅くなってごめん」
二人に挨拶を済ませたあと、宿屋に併設されている酒場で軽く朝食を済ませ、俺たちはメイさんの屋敷へと向かった。
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――メイさんの屋敷に到着した俺たちは、セドリックに中へと通してもらった。
屋敷に入るのも今ではほぼ顔パスだ。
応接室で待つこと数分、ドアが開くと大きな体を屈め、ドアの上枠をくぐるようにメイさんが部屋へと入ってきた。
メイさんはフェリドゥーン姿が目に入ると、彼の前で視線を止めた。
「彼が二人目の星骸フェリドゥーンね。約三年ぶりかしら、あの時とはまるで別人だわ」
「ええ、これが本来のフェリドゥーンらしいです」
「――ものすごいマナと覇動を感じるわ、セレイナさん以上かしら……」
「はい、戦闘に関して私はフェリドゥーンに及びません。私の役割はあくまでサポートですので」
「それで魔族数千を一瞬で消し飛ばすんだから、ゾッとするわね」
メイさんは腰に手を当てて豪快に笑った。
「で?今日は何の用かしら?フェリドゥーン氏のお披露目?」
「それもありますけど、実はエブンズダールで家を探してまして――」
俺はメイさんに詳細を説明した。
なぜメイさんを訪ねたかというと、この街の盟主であるアーバンデイル家であればいい商人を紹介してもらえるのではないかというのと、もしかしたら使っていない別荘なんかがあって、それを格安で……
なんていう、考えがあったからだ。
後者はさすがに甘え過ぎかな。今の持ち金だってメイさんのおかげだし……
でも、前者は力のある権力者に頼ったほうが得策である。あっちの世界でも不動産屋は当たり外れが結構あるしね。
「んー…… うちが所有してるめぼしい物件はもう貸し出しちゃってるのよね。――土地の売買に長けた商人を知ってるから紹介してあげるわ。今手紙を書いてくるから待ってて」
「本当に何から何まですみません……頼りきりになってしまって」
「いいのよ、あなたたちがこの国に拠点を置いてくれるだけで、こっちとしてもありがたいからね」
メイさんからアーバンデイル家の蝋印が押された手紙を受け取り、俺たちは屋敷を出た。
商人ギルドまでは、グッド・ルッキング・ガイのメンバーのアルテが馬車で送ってくれるそうだ。
本当に至れり尽くせりで、メイさんには感謝しかない。
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――目前に大きな建物が見えてきた。あれが商人ギルドらしい。
冒険者ギルドほどではないが、それでも目を引く大きさだ。
入り口前の広場には、商人たちの馬車が十台ほど置かれていて、行商人たちが大荷物を背負って出入りしている。
馬車を降りてアルテに礼をした俺たちは、ギルドの扉を開けた。
――これが商人ギルドか。
冒険者ギルドとはまた別の、異様な熱気とヒリヒリとした空気感が漂っていた。
商いも、けして甘くはない戦いなんだなと感じる。
「すみません。レオルドさんはどちらにおられますか?」
俺はカウンターの女性に声をかけた。
「レオルドさんなら ――えーと、あちらにいますよ」
「ありがとうございます」
俺たちは案内された場所に向かう。すると、恰幅の良い一人の中年男性が地図を広げて作業をしていた。
あの人がレオルドさんかな?
「あの~、お忙しい所すみません。私たち、レオルドさんという方を訪ねてきたんですが」
「ん? 私がレオルドですが、何かご用ですかな?」
俺はレオルドさんにメイさんからの手紙を渡した。
彼は手紙に目を通すと、途端に営業スマイルに切り替わった。
「これはこれは、カッセル辺境伯様の客人ですか。物件をお探しとのことですが、ご予算をお聞きしてもよろしいでしょうか?なにかご希望があれば、それに沿った物件をいくつかご紹介できると思います」
うーん…… 予算か。
今の持ち金はざっと金貨19枚、190万ディーツほどだ。
メイさんの話だと、魔族戦での功績を王様がえらく評価してくれていたようなので、かなりの報酬が出るらしい。
それを考慮すれば、今の持ち金を全て叩いても納得のできる物件を買ったほうが良いかもしれない。
まあ、気に入った物件の額によっては、王様からの報酬が出てから決めてもいいし。
「とりあえず、190~300万ディーツほどで購入できる物件があれば助かります。あと、出来れば部屋数が多くて広い家が良いですね」
「なるほど。その金額でしたらいい家をご紹介できると思いますよ。さっそく見に行かれますか?」
「はい!ぜひお願いします!」
****
俺たちを乗せた馬車は郊外の林の中にあった。
林道は整備されているけど、ちょっと街まで遠いかな……
でも、その方がなんか拠点っぽいし、物件次第ではありかもしれない。
林道が終わり、広い庭園がある屋敷と呼べる規模の家が見えてきた。
「あれが一軒目の物件です」
業者が入っているのか、庭園はそれなりに整備されていて、屋敷もツタだらけというわけではない。
一件目からなかなか悪くないかも。
「広い玄関ホールが売りです。部屋数は11で、浴室も完備されています」
「お、お風呂あるんですか!?」
風呂!その言葉に俺は色めき立った。
内覧しに行くと、そこそこの広さの浴室に緑色の浴槽が置かれている。
やっぱ日本人なら浴槽でしょ!!
うん、ここは候補の一つだな。部屋数も問題ないし、掃除も行き届いていてきれいだ。
街から少し遠いのは仕方がない。
「金額の方は、築年数が35年と少し古いので230万ディーツになりますね」
ほうほう。この規模の屋敷にしては価格もお手頃でいいじゃないか!
もうここで良いかなという気持ちを抑えつつ、残りの物件も一応見てみることにした。
――二つ目の物件は、築年数こそ13年と新しいものの、部屋数が8で一軒目より少しばかり小さめの家だった。街の中心部にある邸宅で、元は騎士家系の人間が住んでいたようだ。
敷地内には、馬を飼育する厩舎も備えられている。
そして肝心の風呂は、排水などの構造上30メートルほど離れた場所にあった。
価格は195万ディーツ。
うーん…… ここは一応キープかな。外装内装共に綺麗で、広さは日本人の俺にとっては少し馴染みやすい。
「部屋数が多いものだと次が最後の物件なんですが――」
「どうかしたんですか?」
「あ、いえ。 良い屋敷なんですがね。なかなか買い手が付かない物件でして、一応内覧いたしますか?」
「は、はい。見てみたいです」
「それでは移動しましょう。ここからだと30分ほどで着きますので」
馬車は中心部から繁華街を抜けて、街の外れの方へと進む。
街外れとはいえ、まだちらほらと住宅などが存在する一角なのだけど、なにやら奇妙な光景が目に飛び込んできた。
高い城壁に囲まれた謎の一角。そこは、他と比べて一線を画しており、どこか異質だった。
馬車はそこへ向けて走っていき、城壁の門の前で停まった。
「こちらです」
10メートルはある高さの城壁。しかし、特に見張り台のような物はない。
何かから守るためのものではないのだろうか。見張りもいない高い壁は、逆に周囲からのただの目隠しになってしまうこともある。
中で何か犯罪が起こっていても、発見されにくいというデメリットでもあるのだ。
「この壁。――結界のようなものが施されていますね」
セレイナが壁に手を触れながら言った。
結界? 何のための結界なのだろう。
「では、行きましょう」
レオルドさんの後を追い、俺たちも敷地内へと入る。そして敷地へ足を踏み入れた瞬間、俺は驚いた。
広い庭園全体が、高濃度のマナで満たされていた。
すごい…… 地球のパワースポットなんて比ではないレベルのスーパーパワースポットだ。
俺は吸い込まれるように庭園へと誘われた。
「えー、部屋数は20程、手入れも私どもが管理しておりましたし、すぐにでも住める状態です。もちろん浴室もありますよ。ですが――」
「――ここにします」
「え? 今なんと?」
「ここに決めます」
俺は無意識に口からこぼれ出ていた。
なんて慈愛に満ちた心地よいマナなんだろう…… でもなぜか、一瞬だけど涙が出そうな衝動に駆られた。
「ほ、本当ですか?それは我々としても助かりますが、本当にここでよろしいのですか?」
「はい、気に入りました。ここに決めます」
一軒目の屋敷よりもだいぶ大きく、部屋数も20ある。
俺達には少しオーバースペックな気もするけど、俺は一目でこの屋敷を気に入ってしまった。
「いや~、ここはいつも売れ残ってしまいまして、カッセル辺境伯様の客人に勧めるのはどうかと思っていたのですが」
「ここはどんな方が住んでいたんですか?」
「ここですか?ここを建てたのはオウエルという豪商でしてね、私の古くからの知り合いでもありました。彼の妻メリウスは若く高名なウィザードで、それはそれは美しい女性でした。ですが――」
レオルドさんは少し顔を曇らせた。
「10年前に彼が大病を患いましてね。それからですかね、この屋敷を高い壁で覆ってしまったのです。そして8年前、彼が亡くなると、失意の中メリウスは他の国へ旅立ってしまいました」
「そんなことが……」
「はい。結構な歳の差はありましたが、とても仲のいい夫婦でしたので」
本来ならここは300万ディーツを超える価格なんだそうだ。でも、なかなか買い手がつかなかったことと、カッセル辺境伯の知人ということで170万ディーツにしてもらい、俺はその場で契約書にサインをして代金を支払った。
晴れて、もうここは俺の家ってわけだ!
内見もせずに契約してしまったけど、中に入ると、手入れが行き届いていて本当にすぐにでも住める状態だった。
もちろん風呂もある。しかもシャワー付きで、浴室の横にある貯水槽の魔石に火魔法を込めると、お湯も出ちゃうのだ!
奥さんが高名なウィザードだからこその設備なのだろうか。
しかし、ここで一つ問題が……
屋敷が広すぎるのである!!!!
とにかく広い。メイさんの屋敷には及ばないけど、ちょっと管理する自信がない……
「買ったはいいけど、屋敷の管理はどうしよう……掃除とかかなり大変だぞこれ」
「管理、ですか」
「管理や労働力に、貴族であれば領民などから奉公人を召し抱えるのが一般的ですが、それ以外は奴隷を買ったりなどですね。ですがこの国は奴隷の売買を禁止しておりますので――」
「ど、奴隷はちょっと、ね……」
俺が悩んでいると、セレイナがパンと手を打った。
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えぇ――――!! お、俺が従者を創る!?
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