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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編
第28話 凛人、スリに遭う
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沈んでいく夕日に照らされ、赤く染まったエブンズダールの強固な城壁が見えてきた。
俺はセレイナの背に乗りながら、帰りの空の上で考えていたことがあった。
拠点探しである。
俺たちは現在三人。ベルセフォネが加われば四人になる。
残りの星骸も探すとして、計七人になるわけだ。
世界中を見て回るにしても拠点となる場所はあったほうが良いし、なにより帰る場所がほしい。
人数が増えれば宿代も嵩むしね。だったら、いっそのこと持ち金があるうちに少し広めの家を探そうと考えた。
フェリドゥーンが伯爵となるのならあの屋敷でもいいかなとも考えたが、主として、ここはやはり自分の家が欲しい。
拠点を構えるなら、やはりエブンズダールだと考えた。ポートイリスもとてもいい街だったけど、ここには知り合いも沢山いるし、冒険者ギルドもこの国で一番大きいみたいなので情報も得やすい。
街の入り口付近へと降り立つと、フェリドゥーンが待っていてくれた。
数時間はかかったのだが、ずっとここにいたんだろうか……
「お待ちしておりました。リント様」
フェリドゥーンが俺の前に跪く。
セレイナの時と同じようにもっと砕けた感じで良いと言ったのだけど、この方が接しやすいと言い譲ってくれないので、彼に関してはこのままで行くことにした。
まあ二百年も執事として仕えてきたんだから、身体に馴染んでいるんだろう。
しかし、やはりどうも気恥ずかしい……
――夕日が顔を隠し、エブンズダールの街には明かりが灯り始めていた。
街灯がまだ人で賑わっている街を煌煌と照らしている。街灯には、光楼石という空気中の魔力を吸収して暗闇で光る特殊な石が設置されているらしい。
「とりあえずご飯でも食べて、今日は宿に泊まろうか」
俺たちは手ごろな飲食店を探しながら街を歩いた。
その時である。
「おっと、ごめんよ!」
年は十二、三歳くらいだろうか、フードを目深にかぶった少年が俺にぶつかってきた。
人通りも多かったし俺は得に気にも留めずにいたのだが、フェリドゥーンが少年の腕を掴んだ。
「な、なんだよ!!離せよ!!」
「――それを返すんだ」
何やら二人が揉めている。
「それはリント様のものだ。返すんだ、少年」
どうやら俺はスリに合っていたらしい。腰から下げていたお金を入れていた袋が無くなっている。
日本人はよく海外でスリのターゲットにされると聞くけど、俺も危機管理が足りてないなと反省した。
この世界は多分、南米とか中東以上に治安が悪い。比較的安定しているこの国でも気を付けないといけないな。
「くそぉ……ほら返すよ」
少年は袋を地面に投げ捨てた。
「返したんだから離せってば!いてーよ」
「ダメだ、盗みは罪だ。守衛に引き渡す」
そう言われると、少年は暴れ出した。
「ふざけんな!返しただろ!! だれか助けてぇ――!!攫われて売り飛ばされる――!!!!」
少年が大声で叫ぶと、街の人々の視線が俺たちに突き刺さった。
これはちょっとまずい。直感的に嫌な予感がした俺は、「ま、まあ返してもらったんだし」と、手を離してあげるようにフェリドゥーンに促した。その時……
「おう、どうした坊主!」
剣や斧を携えた、強面の四人組が声をかけてきた。
……ほらね、やっぱり厄介ごとに巻き込まれた。
昔からこういう嫌な予感だけは当たるんだよな、と俺はうな垂れた。
「こいつら誘拐犯だ!助けてくれよ!!オレを売り飛ばすつもりなんだ!!」
四人組の一人が俺たちをジロジロと見てくる。
「こんな綺麗な姉ちゃんと色男がガキを誘拐とはなぁ。人は見かけに寄らねえってか?」
「最近は善人のふりをして悪事を働くが奴が増えてるって話だぜ、ジベール」
「らしいな。――ん? 後ろにいるお前!」
「お、俺?」
ジベールという男が俺を指さしてきた。
「そうだよ、兜で顔を隠しやがって。お前がリーダーか?その不細工な面見せやがれ、守衛に突き出してやる」
俺に矛先が向くとフェリドゥーンは少年の手を離し、その男たちの方へ向き直った。
すると、男たちが武器へ手を伸ばす。
「おっと、辞めといたほうが良いぜ。俺たちはB級冒険者の赤狼だ、名前くらい知ってるだろう?大人しくしておいた方が身のためだぜ」
「B級冒険者!?すげえ!こいつらやっちゃってくれよ!」
き、聞いたことがない……
ってか、この人たちは冒険者だったのか。てっきり盗賊かチンピラかと思った。
しかし、このガ……子供も自分が悪いくせになんなんだこの態度は!
親の顔が見てみたいもんだ。
でも、だったら話が早い。俺のリングを見せて説明をすれば丸く収まるかもしれない。
フェリドゥーンに任せていたら死人が出そうなんだもの。――なんか怖い顔してるし。
俺は彼らに腕に付けているS級のリングを見せた。
「俺はS級冒険者の瀬川凛人です。誘拐犯じゃありません」
リングを見せた途端、場の空気が一変した。
「え、S級!?」
四人は俺のリングが本物かどうか凝視した後、固まってしまった。
「見かけない顔、S級…… もしかして、スナッシュの野郎をぶちのめして、A級の銀狼を魔族から救ったって言うあの噂の――?」
「ま、まあ。 それ俺です」
「えぇ――――!!!! こ、これはとんだ失礼を!」
四人は深々と頭を下げてきた。
「わかってもらえればいいんです。――それより…… あっ!!」
少年の姿は消えていた。
くそ~、おじさんのくどいお説教をしてやろうと思ったのに逃げられた。
俺たちは少年がスリだったことを説明してその場を後にした。
赤狼の四人は、俺たちの姿が見えなくなるまで赤べこのように首を振って見送っていたそうな。
賑わっている街を歩いていると、濃厚なあの香りが鼻腔をくすぐってきた。
この匂いは……肉だ!!!!
香りをたどると、ステーキ屋の看板が見えた。夕食はそこにしよう。
今の俺はとにかく肉に飢えていた。
店に入る前から口の中に唾が溢れ、俺はそれを何度も飲み込んだ。
店に入ると、より一層焼けた肉の香りが濃くなり、空腹の胃をせっつくように刺激してくる。
店員に案内され、俺たちは席へと誘導された。
それなりに高い店のようだけど、フェリドゥーンの歓迎会ということで少しくらい贅沢をしても良いだろう。
俺はラデリア・ブルのステーキ三百グラムとパンとスープを頼んだ。
ブルだから多分牛なんだと思う。牛ステーキ!もう待ちきれない気分だ。
フェリドゥーンも俺と同じものを頼み、セレイナはパンとスープだけを頼んだ。
料理が届く間に、俺は二人に拠点の話しを切り出した。
「俺さ、この街に家を買おうと思うんだよね」
「家、ですか?」
「うん。世界を回るにしても、拠点はあったほうが良いしさ。だから、明日メイさんの屋敷に行って色々と聞いてみようと思ってるんだ」
「良いと思います、かわいらしいお家があったらいいですね」
い、いや。可愛い家はちょっと……探してないかな。
セレイナが笑顔なので俺はその言葉を飲み込んだ。
「リント様、それでしたらポートイリスの屋敷でよろしいのでは?」
やっぱりそうなるよね。その方がお金もかからないし、効率も良い。
でも俺は自分の家が欲しいんだ。
フェリドゥーンにそう説明をして、彼はすぐに納得してくれた。
お金なら、このメンバーで冒険者としての依頼を受ければ結構稼げると思うしね。
俺たちは、運ばれてきた料理に舌鼓を打った。
高級な店だけあって、どの料理も洗練されていてとても満足の行く食事が出来た。
宿に泊まったら、明日はいよいよ拠点探しだ!ワクワクして眠れそうにないな。
俺はセレイナの背に乗りながら、帰りの空の上で考えていたことがあった。
拠点探しである。
俺たちは現在三人。ベルセフォネが加われば四人になる。
残りの星骸も探すとして、計七人になるわけだ。
世界中を見て回るにしても拠点となる場所はあったほうが良いし、なにより帰る場所がほしい。
人数が増えれば宿代も嵩むしね。だったら、いっそのこと持ち金があるうちに少し広めの家を探そうと考えた。
フェリドゥーンが伯爵となるのならあの屋敷でもいいかなとも考えたが、主として、ここはやはり自分の家が欲しい。
拠点を構えるなら、やはりエブンズダールだと考えた。ポートイリスもとてもいい街だったけど、ここには知り合いも沢山いるし、冒険者ギルドもこの国で一番大きいみたいなので情報も得やすい。
街の入り口付近へと降り立つと、フェリドゥーンが待っていてくれた。
数時間はかかったのだが、ずっとここにいたんだろうか……
「お待ちしておりました。リント様」
フェリドゥーンが俺の前に跪く。
セレイナの時と同じようにもっと砕けた感じで良いと言ったのだけど、この方が接しやすいと言い譲ってくれないので、彼に関してはこのままで行くことにした。
まあ二百年も執事として仕えてきたんだから、身体に馴染んでいるんだろう。
しかし、やはりどうも気恥ずかしい……
――夕日が顔を隠し、エブンズダールの街には明かりが灯り始めていた。
街灯がまだ人で賑わっている街を煌煌と照らしている。街灯には、光楼石という空気中の魔力を吸収して暗闇で光る特殊な石が設置されているらしい。
「とりあえずご飯でも食べて、今日は宿に泊まろうか」
俺たちは手ごろな飲食店を探しながら街を歩いた。
その時である。
「おっと、ごめんよ!」
年は十二、三歳くらいだろうか、フードを目深にかぶった少年が俺にぶつかってきた。
人通りも多かったし俺は得に気にも留めずにいたのだが、フェリドゥーンが少年の腕を掴んだ。
「な、なんだよ!!離せよ!!」
「――それを返すんだ」
何やら二人が揉めている。
「それはリント様のものだ。返すんだ、少年」
どうやら俺はスリに合っていたらしい。腰から下げていたお金を入れていた袋が無くなっている。
日本人はよく海外でスリのターゲットにされると聞くけど、俺も危機管理が足りてないなと反省した。
この世界は多分、南米とか中東以上に治安が悪い。比較的安定しているこの国でも気を付けないといけないな。
「くそぉ……ほら返すよ」
少年は袋を地面に投げ捨てた。
「返したんだから離せってば!いてーよ」
「ダメだ、盗みは罪だ。守衛に引き渡す」
そう言われると、少年は暴れ出した。
「ふざけんな!返しただろ!! だれか助けてぇ――!!攫われて売り飛ばされる――!!!!」
少年が大声で叫ぶと、街の人々の視線が俺たちに突き刺さった。
これはちょっとまずい。直感的に嫌な予感がした俺は、「ま、まあ返してもらったんだし」と、手を離してあげるようにフェリドゥーンに促した。その時……
「おう、どうした坊主!」
剣や斧を携えた、強面の四人組が声をかけてきた。
……ほらね、やっぱり厄介ごとに巻き込まれた。
昔からこういう嫌な予感だけは当たるんだよな、と俺はうな垂れた。
「こいつら誘拐犯だ!助けてくれよ!!オレを売り飛ばすつもりなんだ!!」
四人組の一人が俺たちをジロジロと見てくる。
「こんな綺麗な姉ちゃんと色男がガキを誘拐とはなぁ。人は見かけに寄らねえってか?」
「最近は善人のふりをして悪事を働くが奴が増えてるって話だぜ、ジベール」
「らしいな。――ん? 後ろにいるお前!」
「お、俺?」
ジベールという男が俺を指さしてきた。
「そうだよ、兜で顔を隠しやがって。お前がリーダーか?その不細工な面見せやがれ、守衛に突き出してやる」
俺に矛先が向くとフェリドゥーンは少年の手を離し、その男たちの方へ向き直った。
すると、男たちが武器へ手を伸ばす。
「おっと、辞めといたほうが良いぜ。俺たちはB級冒険者の赤狼だ、名前くらい知ってるだろう?大人しくしておいた方が身のためだぜ」
「B級冒険者!?すげえ!こいつらやっちゃってくれよ!」
き、聞いたことがない……
ってか、この人たちは冒険者だったのか。てっきり盗賊かチンピラかと思った。
しかし、このガ……子供も自分が悪いくせになんなんだこの態度は!
親の顔が見てみたいもんだ。
でも、だったら話が早い。俺のリングを見せて説明をすれば丸く収まるかもしれない。
フェリドゥーンに任せていたら死人が出そうなんだもの。――なんか怖い顔してるし。
俺は彼らに腕に付けているS級のリングを見せた。
「俺はS級冒険者の瀬川凛人です。誘拐犯じゃありません」
リングを見せた途端、場の空気が一変した。
「え、S級!?」
四人は俺のリングが本物かどうか凝視した後、固まってしまった。
「見かけない顔、S級…… もしかして、スナッシュの野郎をぶちのめして、A級の銀狼を魔族から救ったって言うあの噂の――?」
「ま、まあ。 それ俺です」
「えぇ――――!!!! こ、これはとんだ失礼を!」
四人は深々と頭を下げてきた。
「わかってもらえればいいんです。――それより…… あっ!!」
少年の姿は消えていた。
くそ~、おじさんのくどいお説教をしてやろうと思ったのに逃げられた。
俺たちは少年がスリだったことを説明してその場を後にした。
赤狼の四人は、俺たちの姿が見えなくなるまで赤べこのように首を振って見送っていたそうな。
賑わっている街を歩いていると、濃厚なあの香りが鼻腔をくすぐってきた。
この匂いは……肉だ!!!!
香りをたどると、ステーキ屋の看板が見えた。夕食はそこにしよう。
今の俺はとにかく肉に飢えていた。
店に入る前から口の中に唾が溢れ、俺はそれを何度も飲み込んだ。
店に入ると、より一層焼けた肉の香りが濃くなり、空腹の胃をせっつくように刺激してくる。
店員に案内され、俺たちは席へと誘導された。
それなりに高い店のようだけど、フェリドゥーンの歓迎会ということで少しくらい贅沢をしても良いだろう。
俺はラデリア・ブルのステーキ三百グラムとパンとスープを頼んだ。
ブルだから多分牛なんだと思う。牛ステーキ!もう待ちきれない気分だ。
フェリドゥーンも俺と同じものを頼み、セレイナはパンとスープだけを頼んだ。
料理が届く間に、俺は二人に拠点の話しを切り出した。
「俺さ、この街に家を買おうと思うんだよね」
「家、ですか?」
「うん。世界を回るにしても、拠点はあったほうが良いしさ。だから、明日メイさんの屋敷に行って色々と聞いてみようと思ってるんだ」
「良いと思います、かわいらしいお家があったらいいですね」
い、いや。可愛い家はちょっと……探してないかな。
セレイナが笑顔なので俺はその言葉を飲み込んだ。
「リント様、それでしたらポートイリスの屋敷でよろしいのでは?」
やっぱりそうなるよね。その方がお金もかからないし、効率も良い。
でも俺は自分の家が欲しいんだ。
フェリドゥーンにそう説明をして、彼はすぐに納得してくれた。
お金なら、このメンバーで冒険者としての依頼を受ければ結構稼げると思うしね。
俺たちは、運ばれてきた料理に舌鼓を打った。
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