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2章-2節.ヘルデス家の争続に巻き込まれた私は…
7.探索を始めます。
しおりを挟む「取り敢えず進みましょうか。」
「あぁ、そうだな。」
「ここに居ても、埒があかないしな。」
「それじゃ!頑張って攻略しましょう!!」
「「…………」」
「……あれ?どうしたんですか?」
なるほど。コイツは真面目だな。
「(ポンッ)すまん、オルブ。俺たちは迷宮を攻略するつもりはないんだ。」
「え?」
「私たちの目的は攻略ではなくて脱出なんだよ。」
「へ?」
「てなわけで、さっきの入口以外で外に出られる道がないかを探していこうと思うんだが……それで良いか?」
「あ……はい、大丈夫です。」
「因みに、迷宮に詳しい様だが、そういう道はありそうか?」
「えっ?………あぁ…どうでしょうね?自信は無いですが、一応探してみます。」
「そうか。よろしく頼む。」
「はい、頑張ります。」
そうして3人で迷宮の探索を始める。
「それにしても、何で屋敷の下に迷宮があるんだ?」
「王都にある貴族の屋敷は、大抵は迷宮の上に建ててあるんですよ。多分、これもその一つでしょうね。」
「馬鹿なのか?何故そんな事を?」
「何故でしょうねぇ。貴族の考える事は分かりません。」
「あれじゃね?迷宮を足蹴にして支配してる気になってるとか。」
その思想はよくわからないな。下から競り上がってきたら普通に危ないだろ。
「アレク、お前はどう思う?」
「さぁな。私にもさっぱりわからん。命懸けな貴族のマウント根性は理解に苦しむ。」
「何言ってんだ。見た目は似通ってるかもしれないが、ありゃ人とは別の生き物だ。理解出来るもんかよ。」
お前がそれを言うのか。身内に沢山居ると思うんだけど。
「あっ、貴族と言えば……あの男ってマサールさんの養子か…じゃなきゃ入婿か?」
「えっ?……何故わかった?」
「言動からして次期当主の座を狙っているのは目に見えてるし……」
「そうじゃなくて、何故血縁関係が無いとわかったんだ?」
「だって、全然似てないじゃんか。」
「似てない……?あれが………?」
「いや、当たり前な事聞くなよ。」
「いやいや、結構色んな奴が実の親子と勘違いするんだが?」
「認識が雑なんだな。」
「雑って……オルブはどう思う?」
「へ?……いや、僕はマサール氏にお会いした事が無いので、何とも……」
「あ……そっか、すまん。」
「けど………そうなるとこれからの生活の為にも、尚更『ヘルデス家の当主の座』という肩書きが必要ってわけだな。」
「……へ?」
「あぁ、今後の固定収入の為にも何としても手に入れようとするだろうな。」
「えっ?えっ??」
「それこそ、どんな犠牲を払っても……か。」
「そして、戻った俺らは口封じのために……」
「あの……」
「となれば、尚更戻る訳にはいかないな。」
「あぁ、なんとしても『脱出』しないとな。」
「あのっ!!」
「「ん?」」
「さっきから当主の座とか固定収入とか口封じとか……どういう事ですか?」
「「………」」
しまった。勝手に2人だけで話を進めてしまった。
「悪りぃ悪りぃ。ちゃんと説明するからよ。」
「テルマ、ちょっとした提案なんだが……私から説明しても良いか?私の認識とテルマの認識に違いがあるかもしれないから、ここで修正しておきたい。」
「もちろん。俺としても願ったり叶ったりだ。」
「そうなると、どこかでビパークするか。」
***
ちょうど良い場所を見つけて腰を下ろす。
さて、探索は一度中断して話を始めるかな。
「テルマ、確認だが……ヘルデス家の資金源は技術提供料だろう?」
「技術…提供料?」
「あぁ、所謂『不労所得』って奴だな。『ヘルデス家秘伝の技術を職人に提供する代わりに売上の一部を納める』って契約に基いて払われている。だから、わざわざ家の人間が技術の継承をする必要はないし、何もしなくても毎日お金が手に入るからみんな自堕落に生活をしている。そうだろう?」
「あぁ、そうだ。」
前世で言う特許みたいなもの……いや、恐らく無期限だから印税とかの方が近いかな。
「しかし、その契約はあくまでマサールさんと職人の間で結ばれた契約だから、マサールさんの死後に解消される可能性は非常に高い。接点が無くなってしまうからな。少なくとも、法的な拘束力は失われるから技術を合法的に盗まれる危機と捉える事も出来る。だから、マサールさんを薬慈院から連れ戻してそういう手続きを進めようとしていた。そしてあわよくば、秘匿されている他の技術の設計書の在処も明かそうと考えていた。違うか?」
「いいや、その通りだ。」
なんとも浅はかなもんだね。そんな事であの人が了承するわけもないのに。
「そして、手続きは進まないままマサールさんは遺書を残して亡くなった。だから、その遺書に書かれていた『全財産』という文字を見て他の遺族が宝石や大金を連想する中、あの男だけは『設計図』や『利権』関係……例えば『権利書』なんかだと睨んだ。」
「そうだ。はなから宝物の類は眼中にないって事は、俺も見てて直ぐにわかったよ。」
「えっ?て事は………この迷宮の先にその『権利書』があると考えて僕らは送り出されたって事ですか?」
「まぁ、そういう事になるだろうな。オルブ、お前はどう思う?」
「えっと……流石にそれは無いと思います。あの男は、マサール氏とは不仲だったんですよね?僕がマサール氏の立場なら、そんな都合の良い『権利書』なんて残さないと思います。」
「だろうな。俺もそう思う。」
「へ?」
「良い着眼点だな。そうなんだよ。万が一にもあの人がそんな事をする訳が無いんだよ。」
「………あぁ、なるほど。だから口封じを……あれ?でもそれだと口封じされるとは限らないんじゃ……」
「は?」
「えっと……何故そう思う?」
「だって、本当に『権利書』が存在しないとしてもそんな事はあの男には知りようがないです。今回見つからなかったとしても見つかるまで何回も迷宮に送り込まれるだけでしょうから直ぐに口封じされるとは……」
「……あ~、違う違う違う、そうじゃ無い。」
「えっ?」
「アレク、こいつ思ったより良心的だから、もう少し説明してやった方が良いと思う。」
「そうだな。」
けどテルマ、それだと自分が悪い奴って認める事にならないか?
「えっ……と、どういう事でしょうか?」
「オルブ、落ち着いてよく聞け。」
「あ……はい。」
「あの男にとって、この迷宮に『権利書』があるかどうかなんて関係ないんだよ。」
「どっちみち、アイツは『権利書』を手に入れる事になるんだからな。」
「………え?」
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