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103.致命的な欠陥
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「とりあえず、去年の学祭で踊られた映像がこちらです。」
地下に降りると、セバスが傍らにあるコンソールを操作して、去年行われたダンスの様子を映し出してくれた。
全員がきらびやかな衣装をまとった女性たちで、それぞれがパートナーとともにワルツを踊っている。
前世でいうところのダンス競技のような雰囲気だ。
やばい。
こんなの、踊れない。
花子は映像を見て硬直した。
「花子様、花子様、はなこ様。」
ムツキに揺さぶられて、ハッと意識を取り戻す。
「コホン」
セバスが咳払いをして、手を差し出した。
「とりあえず、一度、簡単なステップで踊ってみましょうか。」
セバスの手を取り、言われるままにステップを踏む。
「まずは、私が足を出したら、それを踏まないように足を引いてください。」
「はい。」
セバスがゆっくりと動くので、それに合わせて花子もゆっくりと足を後ろに引く。
今度はセバスが足を引いたので、花子もゆっくりと足を出した。
右に動けば右へ、左に引けば左へ。
「さすが花子様です。基本ステップはこの繰り返しですから、大丈夫ですよ。」
そう言うと、ムツキがワルツの音楽を流した。
「では、このリズムで先ほどのステップを踊りましょう。」
セバスに言われ、音楽に合わせてステップを踏もうとしたが――踏めなかった。
思わずセバスの足先を踏んでしまい、動きが止まる。
「ごめんなさい、セバス。」
「大丈夫ですよ。ムツキ、曲をもう少しゆっくりめにしてください。」
「はい。」
曲をスローテンポにして再挑戦するが、やはり踊れない。
何度繰り返しても、同じところで止まってしまう。
「ふむ。これは……」
意外ですが、花子様にも欠点があったんですね。
リズムがめちゃくちゃになってしまわれるようです。
どうしたものか――。
あのー、セバスが一言も言えないくらい酷いんだ、わたし。
どうすればいいの。
そうだ、魔法で……。
確か赤い靴じゃなかったけど、靴に魔法をかけて踊らせることができたはず。
えっと、確か……。
花子は先ほどの映像を思い出し、それと同じように踊るイメージを靴に送り、魔法をかけた。
すると、靴がひとりでに踊り出す。
花子は靴に導かれるままに踊った。
「「「すごい」」」
三人が、急に上手に踊り出した花子を称賛しようとして、ハッと気がついた。
花子が何かの魔法を使ったことに気づいたのだ。
「あのー、花子様。当日、フロアで魔法を使うことはできません。」
「えっ、なんで?」
花子は靴の魔法を止め、セバスを振り返った。
「王宮での舞踏会を想定しておりますので、会場は花子様の就任式を行った場所と同じです。そこでは魔法が使えません。したがって、学園でも同じ条件となり、会場で魔法を使うことはできないのです。」
がーん。
花子は両手両足をついて、がっくりと落ち込んだ。
「それじゃ、どうすればいいの?」
涙目でセバスを見上げる。
「これは……ひたすらに踊る練習をする以外に方法はありません。」
無情な提案がされた。
踊りの練習。
無理無理無理無理。
絶対無理。
「確か、学祭は一ヶ月後です。朝から晩までみっちりやれば、きっとなんとかなりますよ、花子様。」
ムツキの励ましの声が、地下の会場に響いた。
うっ……練習すれば、なんとかなるのかなぁー。
それから数週間。
来る日も来る日もダンスの練習に励んだ花子は、とりあえず止まらずにステップを踏めるようになった。
ただ、その姿はダンスというより、格闘技の組手のようだった。
花子は毎回踊り終わるたびに、ムツキ、キサラギ、ヤヨイに感想を聞くのだが、三人からは一様に、
「ステップは間違っていませんでした。」
としか感想がなかった。
そこに、おばあ様がやってきた。
もう三週間も練習していたので、難しいことは無理でも、基本はなんとかなったのだろうと思っていた。
だが、地下で練習している花子の様子を見て、仰天した。
「ななななな……。なんでステップが踏めているのに、格闘技のような状態になるの?」
「おばあ様。やっぱりダメなんですね……。」
花子のしょんぼりした様子に、マリアが珍しく気を使った。
「そ、そうね。ダメというか、なんというか……優雅さがないのよ。セバス、これはどういうこと?」
マリアは途中でセバスに怒鳴った。
「あなたがいながら、どうしてこんな状態なの?」
「はい。申し訳ございません。」
セバスたちもいろいろ試してみたのだが、一向に改善が見られなかった。
地下に降りると、セバスが傍らにあるコンソールを操作して、去年行われたダンスの様子を映し出してくれた。
全員がきらびやかな衣装をまとった女性たちで、それぞれがパートナーとともにワルツを踊っている。
前世でいうところのダンス競技のような雰囲気だ。
やばい。
こんなの、踊れない。
花子は映像を見て硬直した。
「花子様、花子様、はなこ様。」
ムツキに揺さぶられて、ハッと意識を取り戻す。
「コホン」
セバスが咳払いをして、手を差し出した。
「とりあえず、一度、簡単なステップで踊ってみましょうか。」
セバスの手を取り、言われるままにステップを踏む。
「まずは、私が足を出したら、それを踏まないように足を引いてください。」
「はい。」
セバスがゆっくりと動くので、それに合わせて花子もゆっくりと足を後ろに引く。
今度はセバスが足を引いたので、花子もゆっくりと足を出した。
右に動けば右へ、左に引けば左へ。
「さすが花子様です。基本ステップはこの繰り返しですから、大丈夫ですよ。」
そう言うと、ムツキがワルツの音楽を流した。
「では、このリズムで先ほどのステップを踊りましょう。」
セバスに言われ、音楽に合わせてステップを踏もうとしたが――踏めなかった。
思わずセバスの足先を踏んでしまい、動きが止まる。
「ごめんなさい、セバス。」
「大丈夫ですよ。ムツキ、曲をもう少しゆっくりめにしてください。」
「はい。」
曲をスローテンポにして再挑戦するが、やはり踊れない。
何度繰り返しても、同じところで止まってしまう。
「ふむ。これは……」
意外ですが、花子様にも欠点があったんですね。
リズムがめちゃくちゃになってしまわれるようです。
どうしたものか――。
あのー、セバスが一言も言えないくらい酷いんだ、わたし。
どうすればいいの。
そうだ、魔法で……。
確か赤い靴じゃなかったけど、靴に魔法をかけて踊らせることができたはず。
えっと、確か……。
花子は先ほどの映像を思い出し、それと同じように踊るイメージを靴に送り、魔法をかけた。
すると、靴がひとりでに踊り出す。
花子は靴に導かれるままに踊った。
「「「すごい」」」
三人が、急に上手に踊り出した花子を称賛しようとして、ハッと気がついた。
花子が何かの魔法を使ったことに気づいたのだ。
「あのー、花子様。当日、フロアで魔法を使うことはできません。」
「えっ、なんで?」
花子は靴の魔法を止め、セバスを振り返った。
「王宮での舞踏会を想定しておりますので、会場は花子様の就任式を行った場所と同じです。そこでは魔法が使えません。したがって、学園でも同じ条件となり、会場で魔法を使うことはできないのです。」
がーん。
花子は両手両足をついて、がっくりと落ち込んだ。
「それじゃ、どうすればいいの?」
涙目でセバスを見上げる。
「これは……ひたすらに踊る練習をする以外に方法はありません。」
無情な提案がされた。
踊りの練習。
無理無理無理無理。
絶対無理。
「確か、学祭は一ヶ月後です。朝から晩までみっちりやれば、きっとなんとかなりますよ、花子様。」
ムツキの励ましの声が、地下の会場に響いた。
うっ……練習すれば、なんとかなるのかなぁー。
それから数週間。
来る日も来る日もダンスの練習に励んだ花子は、とりあえず止まらずにステップを踏めるようになった。
ただ、その姿はダンスというより、格闘技の組手のようだった。
花子は毎回踊り終わるたびに、ムツキ、キサラギ、ヤヨイに感想を聞くのだが、三人からは一様に、
「ステップは間違っていませんでした。」
としか感想がなかった。
そこに、おばあ様がやってきた。
もう三週間も練習していたので、難しいことは無理でも、基本はなんとかなったのだろうと思っていた。
だが、地下で練習している花子の様子を見て、仰天した。
「ななななな……。なんでステップが踏めているのに、格闘技のような状態になるの?」
「おばあ様。やっぱりダメなんですね……。」
花子のしょんぼりした様子に、マリアが珍しく気を使った。
「そ、そうね。ダメというか、なんというか……優雅さがないのよ。セバス、これはどういうこと?」
マリアは途中でセバスに怒鳴った。
「あなたがいながら、どうしてこんな状態なの?」
「はい。申し訳ございません。」
セバスたちもいろいろ試してみたのだが、一向に改善が見られなかった。
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