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104.苦手の克服は勘違いから
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花子は、今日も大学から帰るとすぐに地下へ向かい、フレッシュを相手にダンスの練習に励んでいた。
今日はキサラギが音楽を流しながら、ステップのチェックのために花子様の踊りを録画していた。
そこに、久しぶりにツヴァイが現れた。
花子が踊り終えたところで、ツヴァイが拍手をした。
「すばらしい組手ですね、花子様。さすがです。そういえば最近、西の国でその組手を取り入れた武闘が流行っているんですよ。ちょうど仕事で西の国から戻ってきたところなんですが、録画がありますので見てみませんか。なかなか面白いですよ。」
「ツヴァイ!」
キサラギが慌ててツヴァイを止めようとしたが、ツヴァイは自分の端末に入っていた映像を大きなスクリーンに映し出した。
そこには、華麗に踊る男女二人の姿が映っていた。片手に剣や短剣などの武器を持ち、舞うように戦うその姿は非常に美しかった。
「ツヴァイ、何してるの!」
キサラギが慌てて、勘違いしているツヴァイの映像を止めようとした。
「待って、キサラギ。」
花子は目を煌めかせ、ツヴァイが映した映像を食い入るように見つめていた。
そこには、ワルツのようなリズムを刻みながら武器を振るう二人の姿があった。
――そうよ。これよ。
これを参考にして、踊るイメージではなく、相手と戦うイメージで基本ステップを少しアレンジしてみよう。そう思った瞬間、花子の動きは、ぎこちなさを脱ぎ捨て、目の前に流れる流麗な舞へと変わっていった。
――なんか、できたかもしれない。
「フレッシュ、もう一回お願い。」
「もちろんです。」
フレッシュが手を差し出すと、花子はその手に自分の手を重ねた。
キサラギが慌てて音楽を流す。
「キサラギ、少しテンポを上げて。」
「はい!」
キサラギは急いで、通常よりも速いテンポで音楽をかけ始めた。
――いくらなんでも、ちょっと速すぎない?
キサラギは心配そうに花子様を見つめた。
フレッシュは急に速くなった音に反応し、素早くステップを踏む。
花子様は大丈夫だろうか――そう思って花子様の方を見ると、すでに彼女は音に乗って軽やかにステップを踏んでいた。
フレッシュは心の中で驚愕しながらも、慌てて同じようにステップを踏んだ。
さっきとはまるで別人のような花子様の動きに戸惑いながらも、途中からは逆にフレッシュの方が必死に食らいついていく。
気を抜けば、今度は自分が置いていかれそうだった。
あっという間に一曲が終わり、息を切らした二人の踊りを見ていたツヴァイが拍手を送った。
「さすが花子様です。とても素晴らしい。」
はぁ、はぁ、はぁ――
花子は息を切らしながらツヴァイの感想を聞き、キサラギの方を振り返った。
「キサラギ、どうだった?」
花子の問いかけにハッとしたキサラギは、慌てて録画を止めて感想を述べた。
「と……とても素晴らしかったです。さっきとはまるで別人のような動きで、なんと言えばいいのか……とにかく、すごかったです!」
「ほんとに? フレッシュから見て、どうだった?」
「はい。とても素晴らしかったです。でも、いきなりどうしてワルツが踊れるようになったんですか?」
さっきとはまるで別人のような花子様の動きに、フレッシュは素直に疑問を口にした。
「えっ、ワルツ?」
フレッシュの「ワルツ」という言葉に、ツヴァイは冷や汗をかいた。
――やばい。なんか、まずいこと言ってしまったかも。
そうか、忘れていた。
そういえばこれってワルツの練習だったんだっけ。
ワルツの練習というのを意識しなくなったら、自然に流れにのれるようになった。
「これは、ツヴァイに見せてもらった映像のおかげかな。ありがとう、ツヴァイ。」
「い……いえ、あのー、そのー……」
しどろもどろになるツヴァイの背後から、拍手が聞こえた。
「素晴らしい動きでした、花子様!」
「セバス、見ていたの?」
「はい。途中からですが、動きが格段によくなりましたね。ぜひ、今度は私と一曲お願いします。」
「もちろんよ。」
「キサラギ、もう一段、テンポを上げてください。」
「は、はいっ!」
キサラギは言われるまま、先ほどよりもさらに速いテンポで音楽を流し始めた。
「では、お願いします。」
セバスが優雅にお辞儀をして、花子に手を差し出した。
花子がその手を取って、二人は踊り出す。
セバスの速い動きに、花子も負けじとステップを踏む。
プロ級のようなスピードと優雅さに、見ている者たちは息を呑み、目を奪われた。
あっという間に一曲が終わった。
お互いに息を切らしながらも、最後のポーズを決めて、優雅にお辞儀を交わす。
「素晴らしいわ。」
今度はおばあ様が現れ、盛大な拍手を送ってくれた。
「とても素晴らしいわ。あのセバスの動きについていくなんて、なんてことかしら。さすが花子さんね。」
「ありがとうございます。」
「そうそう、今日は心置きなく読書を楽しみなさい。」
「いいんですか。」
「もちろんよ。ただし食事はきちんと食べてからよ。」
「はい」
花子にとって苦労してやっとワルツを習得できた喜びより、今日一番うれしかったのは、心置きなく読書できることだった。
今日はキサラギが音楽を流しながら、ステップのチェックのために花子様の踊りを録画していた。
そこに、久しぶりにツヴァイが現れた。
花子が踊り終えたところで、ツヴァイが拍手をした。
「すばらしい組手ですね、花子様。さすがです。そういえば最近、西の国でその組手を取り入れた武闘が流行っているんですよ。ちょうど仕事で西の国から戻ってきたところなんですが、録画がありますので見てみませんか。なかなか面白いですよ。」
「ツヴァイ!」
キサラギが慌ててツヴァイを止めようとしたが、ツヴァイは自分の端末に入っていた映像を大きなスクリーンに映し出した。
そこには、華麗に踊る男女二人の姿が映っていた。片手に剣や短剣などの武器を持ち、舞うように戦うその姿は非常に美しかった。
「ツヴァイ、何してるの!」
キサラギが慌てて、勘違いしているツヴァイの映像を止めようとした。
「待って、キサラギ。」
花子は目を煌めかせ、ツヴァイが映した映像を食い入るように見つめていた。
そこには、ワルツのようなリズムを刻みながら武器を振るう二人の姿があった。
――そうよ。これよ。
これを参考にして、踊るイメージではなく、相手と戦うイメージで基本ステップを少しアレンジしてみよう。そう思った瞬間、花子の動きは、ぎこちなさを脱ぎ捨て、目の前に流れる流麗な舞へと変わっていった。
――なんか、できたかもしれない。
「フレッシュ、もう一回お願い。」
「もちろんです。」
フレッシュが手を差し出すと、花子はその手に自分の手を重ねた。
キサラギが慌てて音楽を流す。
「キサラギ、少しテンポを上げて。」
「はい!」
キサラギは急いで、通常よりも速いテンポで音楽をかけ始めた。
――いくらなんでも、ちょっと速すぎない?
キサラギは心配そうに花子様を見つめた。
フレッシュは急に速くなった音に反応し、素早くステップを踏む。
花子様は大丈夫だろうか――そう思って花子様の方を見ると、すでに彼女は音に乗って軽やかにステップを踏んでいた。
フレッシュは心の中で驚愕しながらも、慌てて同じようにステップを踏んだ。
さっきとはまるで別人のような花子様の動きに戸惑いながらも、途中からは逆にフレッシュの方が必死に食らいついていく。
気を抜けば、今度は自分が置いていかれそうだった。
あっという間に一曲が終わり、息を切らした二人の踊りを見ていたツヴァイが拍手を送った。
「さすが花子様です。とても素晴らしい。」
はぁ、はぁ、はぁ――
花子は息を切らしながらツヴァイの感想を聞き、キサラギの方を振り返った。
「キサラギ、どうだった?」
花子の問いかけにハッとしたキサラギは、慌てて録画を止めて感想を述べた。
「と……とても素晴らしかったです。さっきとはまるで別人のような動きで、なんと言えばいいのか……とにかく、すごかったです!」
「ほんとに? フレッシュから見て、どうだった?」
「はい。とても素晴らしかったです。でも、いきなりどうしてワルツが踊れるようになったんですか?」
さっきとはまるで別人のような花子様の動きに、フレッシュは素直に疑問を口にした。
「えっ、ワルツ?」
フレッシュの「ワルツ」という言葉に、ツヴァイは冷や汗をかいた。
――やばい。なんか、まずいこと言ってしまったかも。
そうか、忘れていた。
そういえばこれってワルツの練習だったんだっけ。
ワルツの練習というのを意識しなくなったら、自然に流れにのれるようになった。
「これは、ツヴァイに見せてもらった映像のおかげかな。ありがとう、ツヴァイ。」
「い……いえ、あのー、そのー……」
しどろもどろになるツヴァイの背後から、拍手が聞こえた。
「素晴らしい動きでした、花子様!」
「セバス、見ていたの?」
「はい。途中からですが、動きが格段によくなりましたね。ぜひ、今度は私と一曲お願いします。」
「もちろんよ。」
「キサラギ、もう一段、テンポを上げてください。」
「は、はいっ!」
キサラギは言われるまま、先ほどよりもさらに速いテンポで音楽を流し始めた。
「では、お願いします。」
セバスが優雅にお辞儀をして、花子に手を差し出した。
花子がその手を取って、二人は踊り出す。
セバスの速い動きに、花子も負けじとステップを踏む。
プロ級のようなスピードと優雅さに、見ている者たちは息を呑み、目を奪われた。
あっという間に一曲が終わった。
お互いに息を切らしながらも、最後のポーズを決めて、優雅にお辞儀を交わす。
「素晴らしいわ。」
今度はおばあ様が現れ、盛大な拍手を送ってくれた。
「とても素晴らしいわ。あのセバスの動きについていくなんて、なんてことかしら。さすが花子さんね。」
「ありがとうございます。」
「そうそう、今日は心置きなく読書を楽しみなさい。」
「いいんですか。」
「もちろんよ。ただし食事はきちんと食べてからよ。」
「はい」
花子にとって苦労してやっとワルツを習得できた喜びより、今日一番うれしかったのは、心置きなく読書できることだった。
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