転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
64 / 104

64.後悔

しおりを挟む

 マリアと王が会場を去った直後――

 大海おおみが、その場に崩れ落ちた。

「おばあ様!」

 花子はなこは慌てて駆け寄る。

「大巫女様!」

 すぐ後ろに控えていたセバスも膝をつき、  
 倒れた大海おおみをそっと抱き上げた。

 白い巫女服の裾がふわりと広がり、  
 その優雅な姿に、数名の貴族が思わず息を呑んだ。

 花子はなこも一瞬見惚れかけたが、  
 すぐに我に返り、セバスに声をかけた。

「セバスさん、すぐにおばあ様の手当てを!」

 あわあわと焦る花子に、セバスは静かに頷いて応じた。

 ツヴァイはすぐに先頭に立ち、  
 城の兵士たちを鋭い視線で威圧しながら、会場の出口へと進む。

花子はなこ様」

 ムツキとキサラギが両脇にぴたりと寄り添い、  
 花子をしっかりと警護しながら後に続いた。

(おばあ様……)

 初めての経験ばかりの中、  
 心臓がドキドキと高鳴るのを感じながら、  
 花子はなこは会場を後にした。

 王宮の長い廊下を、誰も言葉を発さずに歩く。

 大海おおみは、真っ青な顔のまま、  
 セバスの腕の中で微動だにしなかった。

 ようやく乗物にたどり着くと、  
 セバスとツヴァイが協力して大海おおみを運び込む。

 花子はなこも無言でその隣に乗り込んだ。

花子はなこ様はこのまま……」

「病院に向かってください!」


 セバスの言葉を遮るように、花子が命じた。

 セバスはすぐに頷き、乗物はルービック系列の病院へと向かった。

「おばあ様……」

 花子は何度も治癒魔法を試みたが、  
 その魔力は、見えない壁に阻まれるように届かない。

(どうして……? なんで……?)

 隣では、大海おおみがうめき声を漏らしている。

 それでも花子は諦めず、  
 “治癒”の文字を描き、魔力を込めて飛ばし続けた。

 やがて、病院の建物が見えてきた。

花子はなこ様、まもなく到着いたします」

「セバスさん、治癒魔法が効かないかもしれないから……」

「お任せください。すでに治療薬の準備は整っております」

 乗物が病院の横に停まると、  
 担架を持った医療スタッフが待機していた。

 セバスがドアを開けると、  
 彼らはすぐに大海おおみに駆け寄り、薬を投与。

 そのまま担架に乗せ、移動しながら次々と処置を施していく。

「おばあ様……」

 花子が見守る中、担架は緊急通路の奥へと消えていった。

花子はなこ様。治療には時間がかかりますが、  
 こちらでお待ちになりますか?」

 セバスの問いに、花子は無言で頷いた。

(たとえどんなに疲れていても、  
 おばあ様の容態が気になって、休めない……)

花子はなこ様。よければ、何か召し上がりませんか?」

 ムツキの提案に、花子は首を横に振った。

「ありがとう、ムツキ。でも……なんか、お腹すいてないの」

「では、休憩室でお待ちになるのはいかがでしょう」

「……そうね」

 ムツキに連れられ、花子は乗物を降りて休憩室へ。

 そこには、座り心地の良さそうな大きなソファーが置かれていた。

 花子はその真ん中に腰を下ろす。

 ふと気づくと、窓の外には美しい星空が広がっていた。

(おばあ様……)

 花子は頭を抱えた。

(なんで探索魔法で気づけなかったんだろう……  
 あのとき、もっと早く動けていれば……)

花子はなこ様。よければ、どうぞ」

 ムツキが、湯気の立つカップを差し出した。

「ありがとう……」

 両手でカップを包み、一口すすると――

(あったかい……コクがあって……しょっぱい……えっ、これって!)

「……なんで、味噌汁?」

信子のぶこ様が入院中、よく好んで飲まれていたと聞きましたので。  
 他のものがよろしかったでしょうか?」

(マグカップで味噌汁……あの人らしいなぁ……)

「……ううん。美味しい。コク……すごい」

 気づけば、花子はすべて飲み干していた。

 **ぐぅ~**

 お腹が鳴った。


「何か食べられるものをお持ちします!」

 キサラギがすぐに立ち上がり、駆けていった。

(ほんと、私ってば……)

 花子はもう一杯、味噌汁のお代わりをお願いし、  
 キサラギが持ってきた食事も口に運んだ。

(おばあ様……)

 窓の外に広がる星空を見上げながら、  
 花子は静かに、温かなご飯を食べ続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...