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3[リア]
デザイナー
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問題はおぱんつだけに留まらなかった。
ステテコほどのインパクトはないにせよ、バストメイクの発想も少々おかしい。
まず、ブラジャーの防御力が低すぎる。
コルセットにオマケとして付いているハーフカップは、素材がペラペラだ。
しかし、まだ付いているだけ良いほうだった。それすらもないただのコルセット(チャンピオンベルトのようなやつ)が主流で、ドレスのデザインによってドレスの下に着けるか、ベルト的に外に着けるかの選択肢があるくらい。
ドレスの下に着ける場合は、下にババシャツのような襟ぐりの広い肌着を着て、それをコルセットで上から押さえるのが基本的な発想だ。
いずれにしても、コルセットの主な役割は「ベルト」と「ウェストを締めること」であって、ブラジャーとしての機能性で言うと「とりあえず乳首を隠した」程度の仕上がりなので快適さはない。
日本でよく売られていたカップ付きタンクトップの防御力を五十とするなら、こちらのは二十にも満たない頼りなさだ。
そして、コルセットには健康問題も潜んでいた。
わたしは健康を重視しているのでピタッと着けるだけに留めているけれども、世の淑女はそうではない。
下から紐でギュウギュウ絞り上げて胸を押し上げるのだ。
ウェストを細く、胸を大きく見せようとしているのだろうけれども、見た目以上にきつく絞っている。
絞り上げる力は気合いの入り具合に比例するらしく、婚活イベントでは死ぬのではないかというほど絞り上げるそうだ。
貴族はお洋服を誰かに着せてもらうので、お付きの人々が力加減を誤ると絞まりすぎて体調を崩すことになる。実際、舞踏会で倒れる女性というのがいるそうだ。
コルセット……それはほとんど格闘家の絞め技に近い。
しかも、そんなにしてまで完成させたおっぱいが不自然だから可哀想だ。
健康を害する恐れがあるので、一刻も早くブラジャーを実用化したほうが良いと思う。
おっぱいとは、肩から吊りながら寄せて上げるものなのだと解説したところ、侍女が立ち上がって拍手をしていた。
なるほど、これが本当の「ブラ」ボーというわけですねぇ(馬鹿)
わたしが欲しいのは、残り少ない歯磨き粉のようにおっぱいを絞り出すコルセットでもなければ、お風呂上がりのお父さんのようなステテコおぱんつでもない。
裸体を美しく隠せる、高機能なファッションアイテム『ランジェリー』なのだ。
「問題は誰に頼むか……ですわね」
腕を組んだ侍女長がやり手の社長のように言うと、他の二人も同じポーズで唸った。
まずはデザイナーが必要だ。
しかし、この国で下着のデザインを生業としている人は現時点でゼロ。前例のないものを頼まなくてはならない。
デザイナーの役割は大きい。
わたしと共に王国の女子を率いて白ステテコの海を割り、約束の地である「勝負おぱんつ」まで向かわねばならないのだ。
はしたないなどと心無いことを言われるかも知れないし、迫害を受けるかも知れない。
どの時代、どのジャンルでも、先駆者とはそういうものだ。
絶対に世の中を変えるという強い使命感、虐げられても諦めない強靭な精神力、実現性の高いデザインができるスキル、皆を適切にリードできる経験とキャリア……。わたし達が必要としている要素は多い。
「新たなジャンルに挑戦したがっているデザイナーさんに心当たりはないですか?」
ファッション誌をめくりながら、下着に応用できそうなデザインを探してみたけれども、急に探し始めて見つかるほど甘くはなかった。
「まず、腕がなくてはダメですわ」と侍女長は言った。
「裸の一歩手前を演出する力なんて、どうやったら測れるのでしょう……想像もつきませんわ」
天井を見上げて悩む侍女長を見た瞬間、わたしの頭にピシャーンと雷が落ちた。
「か、神のお告げがきた……」
「どうされました? リア様」
「ハダカで思い出しましたっ!」
一人、心当たりがあった。
忘れもしない、あの強烈なシルエット。
「あの方は今、何をなさっていますか?」
「あの方とは?」
「名前が分からないのですが、『マダム赤たまねぎ』さんですっ」
「んなっ!」
んなーーっ! と、侍女長の叫び声が部屋に響いた。
マダム赤たまねぎとは、ここを追い出されて塩を撒かれるほどの問題を起こした悪役デザイナーだ。
しかし、彼女はドレスの布面積を最小限にする「ハダカンボ・クチュール」を最も得意としていた。というか、そういうドレスしか作れないのがマダム赤たまねぎなのだ。
彼女にとって、下着の世界は夢の国かも知れない。
当然ながら、あの時のように傲慢な人だと一緒に仕事はできない。
しかし、もしあの出来事をきっかけに考えを改めているのならば、話は大きく変わってくる。
「マダム・オリオンですか? リア様……」
「え? オニオン?」
「オリオンですわ」
「ちなみにお名前は?」
「確か『ルビー』だったかと。マダム・ルビー・オリオン」
ごふっ! とむせた。
ルビー(赤い)・オニオン(玉ねぎ)ですと? むぅん、当たらずといえども遠からず。
いずれにせよ、マダムの現状を調べる必要があった。
何度も身内を侮辱されたくはないので慎重にやらなくてはならない。
まずは商売の様子と周りの評判、そして何よりも接客態度を調べることにした。
執事長に調査をお願いをすると、予想どおり最初はギョっとされた。
「業者選定をしているので参考にしたい」と説明して快諾してもらい、調査はすぐに始まった。
ステテコほどのインパクトはないにせよ、バストメイクの発想も少々おかしい。
まず、ブラジャーの防御力が低すぎる。
コルセットにオマケとして付いているハーフカップは、素材がペラペラだ。
しかし、まだ付いているだけ良いほうだった。それすらもないただのコルセット(チャンピオンベルトのようなやつ)が主流で、ドレスのデザインによってドレスの下に着けるか、ベルト的に外に着けるかの選択肢があるくらい。
ドレスの下に着ける場合は、下にババシャツのような襟ぐりの広い肌着を着て、それをコルセットで上から押さえるのが基本的な発想だ。
いずれにしても、コルセットの主な役割は「ベルト」と「ウェストを締めること」であって、ブラジャーとしての機能性で言うと「とりあえず乳首を隠した」程度の仕上がりなので快適さはない。
日本でよく売られていたカップ付きタンクトップの防御力を五十とするなら、こちらのは二十にも満たない頼りなさだ。
そして、コルセットには健康問題も潜んでいた。
わたしは健康を重視しているのでピタッと着けるだけに留めているけれども、世の淑女はそうではない。
下から紐でギュウギュウ絞り上げて胸を押し上げるのだ。
ウェストを細く、胸を大きく見せようとしているのだろうけれども、見た目以上にきつく絞っている。
絞り上げる力は気合いの入り具合に比例するらしく、婚活イベントでは死ぬのではないかというほど絞り上げるそうだ。
貴族はお洋服を誰かに着せてもらうので、お付きの人々が力加減を誤ると絞まりすぎて体調を崩すことになる。実際、舞踏会で倒れる女性というのがいるそうだ。
コルセット……それはほとんど格闘家の絞め技に近い。
しかも、そんなにしてまで完成させたおっぱいが不自然だから可哀想だ。
健康を害する恐れがあるので、一刻も早くブラジャーを実用化したほうが良いと思う。
おっぱいとは、肩から吊りながら寄せて上げるものなのだと解説したところ、侍女が立ち上がって拍手をしていた。
なるほど、これが本当の「ブラ」ボーというわけですねぇ(馬鹿)
わたしが欲しいのは、残り少ない歯磨き粉のようにおっぱいを絞り出すコルセットでもなければ、お風呂上がりのお父さんのようなステテコおぱんつでもない。
裸体を美しく隠せる、高機能なファッションアイテム『ランジェリー』なのだ。
「問題は誰に頼むか……ですわね」
腕を組んだ侍女長がやり手の社長のように言うと、他の二人も同じポーズで唸った。
まずはデザイナーが必要だ。
しかし、この国で下着のデザインを生業としている人は現時点でゼロ。前例のないものを頼まなくてはならない。
デザイナーの役割は大きい。
わたしと共に王国の女子を率いて白ステテコの海を割り、約束の地である「勝負おぱんつ」まで向かわねばならないのだ。
はしたないなどと心無いことを言われるかも知れないし、迫害を受けるかも知れない。
どの時代、どのジャンルでも、先駆者とはそういうものだ。
絶対に世の中を変えるという強い使命感、虐げられても諦めない強靭な精神力、実現性の高いデザインができるスキル、皆を適切にリードできる経験とキャリア……。わたし達が必要としている要素は多い。
「新たなジャンルに挑戦したがっているデザイナーさんに心当たりはないですか?」
ファッション誌をめくりながら、下着に応用できそうなデザインを探してみたけれども、急に探し始めて見つかるほど甘くはなかった。
「まず、腕がなくてはダメですわ」と侍女長は言った。
「裸の一歩手前を演出する力なんて、どうやったら測れるのでしょう……想像もつきませんわ」
天井を見上げて悩む侍女長を見た瞬間、わたしの頭にピシャーンと雷が落ちた。
「か、神のお告げがきた……」
「どうされました? リア様」
「ハダカで思い出しましたっ!」
一人、心当たりがあった。
忘れもしない、あの強烈なシルエット。
「あの方は今、何をなさっていますか?」
「あの方とは?」
「名前が分からないのですが、『マダム赤たまねぎ』さんですっ」
「んなっ!」
んなーーっ! と、侍女長の叫び声が部屋に響いた。
マダム赤たまねぎとは、ここを追い出されて塩を撒かれるほどの問題を起こした悪役デザイナーだ。
しかし、彼女はドレスの布面積を最小限にする「ハダカンボ・クチュール」を最も得意としていた。というか、そういうドレスしか作れないのがマダム赤たまねぎなのだ。
彼女にとって、下着の世界は夢の国かも知れない。
当然ながら、あの時のように傲慢な人だと一緒に仕事はできない。
しかし、もしあの出来事をきっかけに考えを改めているのならば、話は大きく変わってくる。
「マダム・オリオンですか? リア様……」
「え? オニオン?」
「オリオンですわ」
「ちなみにお名前は?」
「確か『ルビー』だったかと。マダム・ルビー・オリオン」
ごふっ! とむせた。
ルビー(赤い)・オニオン(玉ねぎ)ですと? むぅん、当たらずといえども遠からず。
いずれにせよ、マダムの現状を調べる必要があった。
何度も身内を侮辱されたくはないので慎重にやらなくてはならない。
まずは商売の様子と周りの評判、そして何よりも接客態度を調べることにした。
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