110 / 392
3[リア]
殿方には秘密
しおりを挟む
この国のおぱんつ問題は根が深い。
男子は乗馬用ズボンに合わせたフィット感のあるステテコおぱんつと、ブリーフ型の選択肢があるらしい。
男女差別なのかと思いきやそうではない。単に服の機能性の違いが影響しているだけだった。
「ズボンがこうなのだから、こういうパンツが求められる」という合理的発想の産物がそれなのだ。
その証拠に、男子も「白一択」だという。
これはもはや悲劇である。
ヴィルさんを見た。
イケメンである。
しかし、ズボンを脱いだら彼も白おぱんつなのだ。
百年の恋も冷めかねない。
アレンさんを見た。
神々しいイケ仏様である。
しかし、彼もズボンを脱いだら白おぱんつだ。
目を合わせるのも勿体ないくらいなのに、毎日が白おぱんつなんて残念すぎる。
こんなイケメンですら白おぱんつ一択なのだ。
女子のおぱんつが白ステテコなのも無理はない。
「どうせドレスで見えないのだし、これでいいじゃねぇか」という色気のない合理主義が当たり前になっている。
国民すべてが「おぱんつは白い綿で作られたものだ」と思い込まされていて、それに不満を抱いてすらいない。
この国のおぱんつが抱える最大の問題は、人々がファッションとしての関心を持っていないことなのだ。
どうか目を覚ましてください、オルランディアの皆さま。
レースを使いましょう?
フリフリやおリボンを付けましょう?
色と柄にもこだわってください。
見えないからいいじゃんという話ではないのですよーっ。
このままお嫁になんて行けない……。
はあああ、不安です。
ヴィルさん達には何でも話してきているけれども、さすがに「おぱんつがダサくて生きるのがツラい」という話はできない。
恥ずかしいし情けないし、口に出したら感極まって泣くかもしれない。
そうなるとお天気問題に発展し、おぱんつのせいで災害が起きる(ダメ、絶対)
話すにしても、解決策が見つかった後が良いだろう。「今だから話せるけれど」のノリで、笑い話として伝えることにしたい。
「すみません。殿方にはお話しできないのです」と返事をすると、ヴィルさんはお預けを食らった子犬のように悲しげな瞳でわたしをジトっと見つめた。
アレンさんは再び動きが止まり、置物になってしまった。
ごめんなさい。
おぱんつ問題は女子だけで解決しますから、しばらくお待ちくださいねと、心の中でお詫びをした。
そもそも露出の高いドレスを着ていた先代はどうしていたのだろう?
おっぱいすらも放り出しそうな勢いだったのに、そんな人が白ステテコを装備するだろうか。
まさか神薙様はノーパンが正解なのですか?(いやです。泣)
「リア様、発注して作って頂きましょう。わたくし達も興味がございます。個人としても最大限の協力をさせて頂きますわっ」
男子を追い出したリビングで、侍女長がキリッと言った。
外出していたイルサが戻ると、わたし達四人はひざを突き合わせた。
「もし、リア様のご要望に叶うものが作れたなら、それはいずれ民間へも広まるでしょう。すなわち、わたくし達が革命を起こすということですわ」
頼もしい侍女長の言葉に侍女二人は目を輝かせ、すっくと立ち上がった。
あああっ、いつものやつが始まる予兆。
「これは革命のともしび!」
「わたくし達の希望!」
「王国のぉ~ 未来ぃ~~~」
何かのミュージカルと似たような状況だったのだろう。侍女が歌いながらクルクル回り、ピタッとポーズを決めた。
「ブラボー!」
劇団侍女はさておき、侍女長の言うとおりだ。ないのなら作ればいい。
いや、耐えられないのだから作るしかない。
当然だけれども費用がかかる。
一着では済まないので、かなりの予算を使うことになるだろう。
しかし、わたしは考えた。
一度起こした型紙を使ってまとまった数を作り、それを商品として売ることができるのなら、費用の一部を回収できると。
会社を興すには誰かにコンサルタントをお願いしなくてはならないが、開業資金はある。
手付かず状態で「頼むから使ってくれ」と言われている神薙様用お小遣いだ。これを初期費用としてお借りする形になるだろう。
選ぶ生地やパーツ次第で、品質と原価をコントロールできる。つまり、貴族相手だけでなく、庶民もターゲットにして勝負ができるはず。
ライバル企業は当面ない。
間違いのない仲間を得て、正しく努力ができれば儲かる気がする(そこが一番難しいのだけど)
商売で成功することをゴールとするなら、わたし個人のおぱんつは単なる「試作品」であり通過点になる。
もしかして、わたしは今、巨大ビジネスのスタート地点に立っている……?
「おぱんつを作りなさい」 (※腹話術)
はっ、誰かの声がします。
「白ステテコに囚われた同胞たちを救い出すのです」 (※腹話術です)
こ、これは神のお告げでは?
この世界に来るとき、わたしは何ひとつ啓示をもらえなかったけれども、おぱんつの神はわたしに微笑んでくれている。
これは旧約聖書の出エジプト記ならぬ「脱ステテコ記」だ。
おぱんつ界のモーセに、わたしはなる。
皆でステテコから解き放たれ、約束の地へゆくのだぁぁ。
うおー、オルランディアに勝負おぱんつをー!!
「よしっ、やりましょう」
「リア様! そうでなくては!」
「素晴らしいですわっ」
「まずは試作品ですねぇ~」
実益を兼ねて試作品を作ろう。
ただ、その前にやらなければならないことがある。
仲間の教育だ。
わたしはたっぷりと時間をかけて三人に説明をした。
乙女である彼女たちは新婚初夜に対してひとかたならぬ興味があるため、勝負下着について根掘り葉掘り聞いてくる。わたしが答えるたび、彼女たちは真っ赤になって黄色い歓声を上げた。
「わたくし達にもいずれ特別な日が……」
「これは決してリア様だけの問題ではありませんわ」
「皆で一丸となり手に入れなくてはっ」
壮大なるおぱんつプロジェクトは、こうして幕を開けたのだった。
男子は乗馬用ズボンに合わせたフィット感のあるステテコおぱんつと、ブリーフ型の選択肢があるらしい。
男女差別なのかと思いきやそうではない。単に服の機能性の違いが影響しているだけだった。
「ズボンがこうなのだから、こういうパンツが求められる」という合理的発想の産物がそれなのだ。
その証拠に、男子も「白一択」だという。
これはもはや悲劇である。
ヴィルさんを見た。
イケメンである。
しかし、ズボンを脱いだら彼も白おぱんつなのだ。
百年の恋も冷めかねない。
アレンさんを見た。
神々しいイケ仏様である。
しかし、彼もズボンを脱いだら白おぱんつだ。
目を合わせるのも勿体ないくらいなのに、毎日が白おぱんつなんて残念すぎる。
こんなイケメンですら白おぱんつ一択なのだ。
女子のおぱんつが白ステテコなのも無理はない。
「どうせドレスで見えないのだし、これでいいじゃねぇか」という色気のない合理主義が当たり前になっている。
国民すべてが「おぱんつは白い綿で作られたものだ」と思い込まされていて、それに不満を抱いてすらいない。
この国のおぱんつが抱える最大の問題は、人々がファッションとしての関心を持っていないことなのだ。
どうか目を覚ましてください、オルランディアの皆さま。
レースを使いましょう?
フリフリやおリボンを付けましょう?
色と柄にもこだわってください。
見えないからいいじゃんという話ではないのですよーっ。
このままお嫁になんて行けない……。
はあああ、不安です。
ヴィルさん達には何でも話してきているけれども、さすがに「おぱんつがダサくて生きるのがツラい」という話はできない。
恥ずかしいし情けないし、口に出したら感極まって泣くかもしれない。
そうなるとお天気問題に発展し、おぱんつのせいで災害が起きる(ダメ、絶対)
話すにしても、解決策が見つかった後が良いだろう。「今だから話せるけれど」のノリで、笑い話として伝えることにしたい。
「すみません。殿方にはお話しできないのです」と返事をすると、ヴィルさんはお預けを食らった子犬のように悲しげな瞳でわたしをジトっと見つめた。
アレンさんは再び動きが止まり、置物になってしまった。
ごめんなさい。
おぱんつ問題は女子だけで解決しますから、しばらくお待ちくださいねと、心の中でお詫びをした。
そもそも露出の高いドレスを着ていた先代はどうしていたのだろう?
おっぱいすらも放り出しそうな勢いだったのに、そんな人が白ステテコを装備するだろうか。
まさか神薙様はノーパンが正解なのですか?(いやです。泣)
「リア様、発注して作って頂きましょう。わたくし達も興味がございます。個人としても最大限の協力をさせて頂きますわっ」
男子を追い出したリビングで、侍女長がキリッと言った。
外出していたイルサが戻ると、わたし達四人はひざを突き合わせた。
「もし、リア様のご要望に叶うものが作れたなら、それはいずれ民間へも広まるでしょう。すなわち、わたくし達が革命を起こすということですわ」
頼もしい侍女長の言葉に侍女二人は目を輝かせ、すっくと立ち上がった。
あああっ、いつものやつが始まる予兆。
「これは革命のともしび!」
「わたくし達の希望!」
「王国のぉ~ 未来ぃ~~~」
何かのミュージカルと似たような状況だったのだろう。侍女が歌いながらクルクル回り、ピタッとポーズを決めた。
「ブラボー!」
劇団侍女はさておき、侍女長の言うとおりだ。ないのなら作ればいい。
いや、耐えられないのだから作るしかない。
当然だけれども費用がかかる。
一着では済まないので、かなりの予算を使うことになるだろう。
しかし、わたしは考えた。
一度起こした型紙を使ってまとまった数を作り、それを商品として売ることができるのなら、費用の一部を回収できると。
会社を興すには誰かにコンサルタントをお願いしなくてはならないが、開業資金はある。
手付かず状態で「頼むから使ってくれ」と言われている神薙様用お小遣いだ。これを初期費用としてお借りする形になるだろう。
選ぶ生地やパーツ次第で、品質と原価をコントロールできる。つまり、貴族相手だけでなく、庶民もターゲットにして勝負ができるはず。
ライバル企業は当面ない。
間違いのない仲間を得て、正しく努力ができれば儲かる気がする(そこが一番難しいのだけど)
商売で成功することをゴールとするなら、わたし個人のおぱんつは単なる「試作品」であり通過点になる。
もしかして、わたしは今、巨大ビジネスのスタート地点に立っている……?
「おぱんつを作りなさい」 (※腹話術)
はっ、誰かの声がします。
「白ステテコに囚われた同胞たちを救い出すのです」 (※腹話術です)
こ、これは神のお告げでは?
この世界に来るとき、わたしは何ひとつ啓示をもらえなかったけれども、おぱんつの神はわたしに微笑んでくれている。
これは旧約聖書の出エジプト記ならぬ「脱ステテコ記」だ。
おぱんつ界のモーセに、わたしはなる。
皆でステテコから解き放たれ、約束の地へゆくのだぁぁ。
うおー、オルランディアに勝負おぱんつをー!!
「よしっ、やりましょう」
「リア様! そうでなくては!」
「素晴らしいですわっ」
「まずは試作品ですねぇ~」
実益を兼ねて試作品を作ろう。
ただ、その前にやらなければならないことがある。
仲間の教育だ。
わたしはたっぷりと時間をかけて三人に説明をした。
乙女である彼女たちは新婚初夜に対してひとかたならぬ興味があるため、勝負下着について根掘り葉掘り聞いてくる。わたしが答えるたび、彼女たちは真っ赤になって黄色い歓声を上げた。
「わたくし達にもいずれ特別な日が……」
「これは決してリア様だけの問題ではありませんわ」
「皆で一丸となり手に入れなくてはっ」
壮大なるおぱんつプロジェクトは、こうして幕を開けたのだった。
49
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる