【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です

ナポ

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5.幸せ指数

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 ある晴れた昼下がり。

 俺、ラクス・ヴェルゼリアは、のどかすぎる村のベンチで、モフモフな毛布を干しながら、パンをかじっていた。

 「……よく考えたら、今の俺、王子だった頃より幸せ指数高い気がする」

 だがその瞬間、遠くの広場で「きゃーっ! カグラがルークに告白したー!」という叫びが聞こえた。

「……あ、ついにか」


*

「お前のこと……ずっと守りたかった」

「うん、知ってた。いつ言ってくれるんだろうって……僕も好きだよ」

 そんな感じで、ルークとカグラはめでたくくっついた。

 村中が湧きに湧いた。お祝いにケーキが3ホール焼かれ、ヤギまで祝福に鳴いた。


「……よかったな、ルーク」

 広場の陰から見守っていたカイル。
 その表情は……いつもの無表情。けれど、ほんの少しだけ眉が揺れていた。

 そしてその隣では、
 ラクスが無造作に寄りかかってきていた。

「おい、カイル~。あいつら上手くいったってよ。いいな~、青春って感じでさ」

「……お前は、寂しくないのか?」

「ん? なにが?」

「……ルークのこと、好きだったんじゃないのか?」

「まさか。俺、あいつのこと弟だと思ってたし、途中から兄だったし、最終的に別枠すぎて恋愛対象外になったわ」

「……そうか」

 カイルはほっとしたような、でも何かを噛み殺すような顔をした。
 そんな彼を見て、ラクスは小さく笑った。

「お前のほうは? ルークのこと……気になってたろ?」

「……俺が見てたのは、お前だ」

「…………へ?」

カイルは淡々と告げる。

「王子としての振る舞いも、馬鹿みたいな俳句も、ルークを膝に乗せて笑ってる顔も……」

「うわ、恥ずかしいなそれ。てか、俳句のとこ要る?」

「いる」

 静かな風が吹き、ラクスは黙って空を見上げた。
 そして、すっと笑って

「そっか。じゃあ、ちゃんと向き合ってくれよ」

「……俺と?」

「違う。“お前の恋心”と、だよ。俺はまだ、どうなるかわかんねーからさ」

 ルークとカグラは、しっかり手をつないで歩いた。

「なあカイル」

「なんだ」

「……俺さ、次に好きになる相手は、ちゃんと“大人”として見てくれるやつがいいな」

「それは、俺でも?」

「さあ? これからのお前の態度による」

 そう言って笑ったラクスは、また一つ、大人になったように見えた。

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