67 / 95
第三章『王子様、現る!?』
第67話 勇者は誰のモノ
しおりを挟む
「誰か、倒れてる!?」
勇者の墓の入り口で、倒れている衛兵を見つけた。
身体を起こすと、脇腹から大量に血を流して目が潰されていた。
「ううっ……誰か、いるのか……?」
「貴方は、門番の、ブロウさん!?」
魔界戦線に到着したヒミカ達を怪しんで、通せんぼしていた衛兵だ。
「……? テメェの声は覚えてる、ぜ。小さいくせに小生意気で、踊り子の姉がいる騎士だな──ゲほっ、がはっ」
一言喋る度に咳き込み、夥しい血を吐く。
「は、ははっ。あの時、俺は『混乱の最中こそ、怪しい奴は中に入れん!』 なんて息巻いてたがよ……間者はとっくの昔に潜り込んでいたとは、な。……門番失格だよ」
「喋ってる場合じゃないです。今すぐ傷の手当てをしないと!」
「よせ。自分の身体は自分が分かる。俺はもう長くない。それより、墓の結界が破られた。中の聖剣を守ってくれ」
「そんな」
「クライドの奴は、ヴィーヴィルってヤツに憑りつかれでもしたんだろう。でなけりゃ、ち×ぽ剥き出しでお前の姉貴を攫うなんてするわけないからな」
「──クライドは僕が殺します」
ヒミカに危険が迫っていることを再確認した瞬間、自分でも驚くほど低い声が出た。
「……そうするしか、ないのかもしれんな。感染したら正気に戻ることはなく、最後には暴走しちまうんだろう? このままだと、お前の姉貴が、魔王の眷属の苗床にされちまう。……頼んだぜ、【盾騎士】」
目が見えない状態で、ブロウはユーマの手を力強く握った。
「後悔はないさ。ユーマ、お前に託すことが……できた、から…………な」
呼吸が糸のようにか細くなり、握った手の平から力が抜ける。
ユーマの背後では激しい光と、熱と、轟音と、悲鳴が一つの楽曲のように奏でられる戦場では、弔うことさえままならない。
うつ伏せのままじゃあんまりだから、せめて壁に寄りかからせることしかできなかった。
「王様だろうが、魔王だろうが、昔からの幼馴染だろうが、関係ない。ヒミカさんは、僕の勇者(モノ)だ」
結界が解かれてぽっかりと口を開いた勇者の墓の入り口。
下へ続く真っ暗な階段を、落ちるように駆けていく。
★
「クソが! どうしてこの俺が、聖剣を抜くことができないんだ!」
勇者の墓、最深部。
まるで地下に造られた礼拝堂のような、静謐な空間が広がっていた。
地面の下とは思えないほど広い空間に、勇者の墓という呼称の通り、棺と墓標だけがある。
質素で物寂しくはあるが、埃っぽさや息苦しさはない。
棺には花が添えられており、誰かの手によって手入れされていることが伺えた。
「ヒミカ、お前が聖剣を抜いてみろ」
クライドが指さす先に、古びた剣が墓標に突き刺さっている。
聖剣と呼ぶにはあまりにも風化しているけど、引き締まった身体に漲る筋力を総動員しても、聖剣は一ミリさえも動かないらしい。
「やだ。クライドお願い、元に戻ってよ。こんなバカな真似はもう止めて」
「うるせえ! さっさと握れよ!」
「えい!」
「ぐはぁっ!? 誰が金タマを握れって言ったんだこの雌豚がぁっ!」
怒り狂ったクライドに鳩尾を殴りつけられ、冷たい床をごろごろと転がる。
「あぐっ、か、は……っ。そんな、汚らわしいもの、ぶらぶらさせてないで、しまってって言ってるの……っ!」
「汚らわしいだと? クライド様のち×ぽで、今までどれだけの女を悦ばせてきたと思ってるんだ? ヒミカ、聖剣を手に入れるためにお前が必要かと思っていたが、役立たずならさっさとお楽しみタイムといくかぁ?」
下卑た笑みに連動して、ゆらゆらとペニスが鎌首をもたげる。
独立した生物のような異形の生殖器が、早く雌に種付けしたくて喚いているように見えた。
「光栄に思えよ、魔王の眷属と交われることをなァ」
魔王の眷属。
(クライドは、誰かの下につくなんてことは一番嫌いだったはずなのに)
ヴィーヴィルに感染したら、【繁殖】のために暴走して最後には死ぬ。
暴走はもう始まっているのかもしれない。
「……勇者の剣を抜くから、お願いを聞いてくれる?」
「あ?」
「私の代わりに、魔王を倒して」
「…………」
「私は役立たずの【踊り子】だから、クライドが戦ってくれるなら、それが一番嬉しい。私は、戦うよりも、後ろからカッコいいクライドの背中を見て、応援していたいから」
じんじんと痛むお腹にぎゅっと力を込める。
「それくらい、本気で好きだったんだよ!」
胸が張り裂けるような絶叫。
潤む瞳から大粒の涙が頬を伝って、床に染み込んでいく。
「誘ってんじゃねぇよ、豚」
「……っ!」
もう、ヒミカの想いは届かない。
「そうだ。その目だよ、ヒミカ。お前は学び舎でいつもそうだった。クラスの奴らにイジメられると、すぐ涙目で男の気を引こうとする」
「違う。そんなつもりじゃ」
「哀れだよなァ。自分は役立たずで何もできないから、色目を使って男を誘うんだろう? くっくっく。笑わせるよなァ。さらに今は娼婦やってるヒミカが勇者だなんてよ。世界中の恥さらしだよなァ。ヒミカに救われるくらいなら、いっそ一度滅んだ方が世界のためなんじゃないか?」
「……何を言っても、もう戻らないのね」
「勇者の旅はもう終わりだ。似合わないことはやめて、大人しく俺に抱かれてろよ」
クライドは聖剣を抜くのを諦めたのか、【竜剣士】の跳躍力でヒミカに覆いかぶさった。
「いやっ……!」
勇者の墓の入り口で、倒れている衛兵を見つけた。
身体を起こすと、脇腹から大量に血を流して目が潰されていた。
「ううっ……誰か、いるのか……?」
「貴方は、門番の、ブロウさん!?」
魔界戦線に到着したヒミカ達を怪しんで、通せんぼしていた衛兵だ。
「……? テメェの声は覚えてる、ぜ。小さいくせに小生意気で、踊り子の姉がいる騎士だな──ゲほっ、がはっ」
一言喋る度に咳き込み、夥しい血を吐く。
「は、ははっ。あの時、俺は『混乱の最中こそ、怪しい奴は中に入れん!』 なんて息巻いてたがよ……間者はとっくの昔に潜り込んでいたとは、な。……門番失格だよ」
「喋ってる場合じゃないです。今すぐ傷の手当てをしないと!」
「よせ。自分の身体は自分が分かる。俺はもう長くない。それより、墓の結界が破られた。中の聖剣を守ってくれ」
「そんな」
「クライドの奴は、ヴィーヴィルってヤツに憑りつかれでもしたんだろう。でなけりゃ、ち×ぽ剥き出しでお前の姉貴を攫うなんてするわけないからな」
「──クライドは僕が殺します」
ヒミカに危険が迫っていることを再確認した瞬間、自分でも驚くほど低い声が出た。
「……そうするしか、ないのかもしれんな。感染したら正気に戻ることはなく、最後には暴走しちまうんだろう? このままだと、お前の姉貴が、魔王の眷属の苗床にされちまう。……頼んだぜ、【盾騎士】」
目が見えない状態で、ブロウはユーマの手を力強く握った。
「後悔はないさ。ユーマ、お前に託すことが……できた、から…………な」
呼吸が糸のようにか細くなり、握った手の平から力が抜ける。
ユーマの背後では激しい光と、熱と、轟音と、悲鳴が一つの楽曲のように奏でられる戦場では、弔うことさえままならない。
うつ伏せのままじゃあんまりだから、せめて壁に寄りかからせることしかできなかった。
「王様だろうが、魔王だろうが、昔からの幼馴染だろうが、関係ない。ヒミカさんは、僕の勇者(モノ)だ」
結界が解かれてぽっかりと口を開いた勇者の墓の入り口。
下へ続く真っ暗な階段を、落ちるように駆けていく。
★
「クソが! どうしてこの俺が、聖剣を抜くことができないんだ!」
勇者の墓、最深部。
まるで地下に造られた礼拝堂のような、静謐な空間が広がっていた。
地面の下とは思えないほど広い空間に、勇者の墓という呼称の通り、棺と墓標だけがある。
質素で物寂しくはあるが、埃っぽさや息苦しさはない。
棺には花が添えられており、誰かの手によって手入れされていることが伺えた。
「ヒミカ、お前が聖剣を抜いてみろ」
クライドが指さす先に、古びた剣が墓標に突き刺さっている。
聖剣と呼ぶにはあまりにも風化しているけど、引き締まった身体に漲る筋力を総動員しても、聖剣は一ミリさえも動かないらしい。
「やだ。クライドお願い、元に戻ってよ。こんなバカな真似はもう止めて」
「うるせえ! さっさと握れよ!」
「えい!」
「ぐはぁっ!? 誰が金タマを握れって言ったんだこの雌豚がぁっ!」
怒り狂ったクライドに鳩尾を殴りつけられ、冷たい床をごろごろと転がる。
「あぐっ、か、は……っ。そんな、汚らわしいもの、ぶらぶらさせてないで、しまってって言ってるの……っ!」
「汚らわしいだと? クライド様のち×ぽで、今までどれだけの女を悦ばせてきたと思ってるんだ? ヒミカ、聖剣を手に入れるためにお前が必要かと思っていたが、役立たずならさっさとお楽しみタイムといくかぁ?」
下卑た笑みに連動して、ゆらゆらとペニスが鎌首をもたげる。
独立した生物のような異形の生殖器が、早く雌に種付けしたくて喚いているように見えた。
「光栄に思えよ、魔王の眷属と交われることをなァ」
魔王の眷属。
(クライドは、誰かの下につくなんてことは一番嫌いだったはずなのに)
ヴィーヴィルに感染したら、【繁殖】のために暴走して最後には死ぬ。
暴走はもう始まっているのかもしれない。
「……勇者の剣を抜くから、お願いを聞いてくれる?」
「あ?」
「私の代わりに、魔王を倒して」
「…………」
「私は役立たずの【踊り子】だから、クライドが戦ってくれるなら、それが一番嬉しい。私は、戦うよりも、後ろからカッコいいクライドの背中を見て、応援していたいから」
じんじんと痛むお腹にぎゅっと力を込める。
「それくらい、本気で好きだったんだよ!」
胸が張り裂けるような絶叫。
潤む瞳から大粒の涙が頬を伝って、床に染み込んでいく。
「誘ってんじゃねぇよ、豚」
「……っ!」
もう、ヒミカの想いは届かない。
「そうだ。その目だよ、ヒミカ。お前は学び舎でいつもそうだった。クラスの奴らにイジメられると、すぐ涙目で男の気を引こうとする」
「違う。そんなつもりじゃ」
「哀れだよなァ。自分は役立たずで何もできないから、色目を使って男を誘うんだろう? くっくっく。笑わせるよなァ。さらに今は娼婦やってるヒミカが勇者だなんてよ。世界中の恥さらしだよなァ。ヒミカに救われるくらいなら、いっそ一度滅んだ方が世界のためなんじゃないか?」
「……何を言っても、もう戻らないのね」
「勇者の旅はもう終わりだ。似合わないことはやめて、大人しく俺に抱かれてろよ」
クライドは聖剣を抜くのを諦めたのか、【竜剣士】の跳躍力でヒミカに覆いかぶさった。
「いやっ……!」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる