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ウェス編
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何を言われたのか分からなかった。
ソロン様が勇者一行を倒した…?ディニス様にそう報告する…?
そんなの嫌だ…倒したのは俺なのに…
褒められるのは俺のはずなのに…!!
でも、体が動かない。気付けば足の方からサラサラとした砂が出ている。
俺は消滅しかかっていた。
それでもいいと思って勇者たちに挑んだのに、その手柄を、ディニス様に最後に褒められる機会を奪われることは耐えられなかった。
(魔王城に行かないと…)
そう思うのに、羽は折れて飛べず、足は立ち上がれば消えてしまいそうだ。
「そんな…頑張ったのに…どうして…」
ボロボロと涙が溢れた。もうディニス様に会えない、あの爵位を剥奪された時が最後の逢瀬だと思うと死にきれない。
だが、力が入らなくてついに地面に横たわる。
俺は何のためにここまでやってきたんだろう。そう思うと虚しさが込み上げた。
禁忌魔法を使ったので、魂はボロボロでもう生まれ変わることもない。もっとも、それはそれで良かったかもしれないが…
こんな辛くて悲しい思いばかりならもう一度生まれてきたいとは思わなかった。
ただ一つ、ディニス様に愛された日々を除いては…
あの幸せだった記憶だけ抱いて眠ろう。
そう思って瞼を閉じようとした時、目の前に誰かの足が止まった。
「お前は本当に馬鹿だな」
そう言った声は俺を肩に担ぐと転移魔法を使った。
ーーー
自分から溢れるサラサラとした砂を見ていると、転移させられた先でそっと降ろされた。
その時、俺を担いでいた人物がレヴォン様だとわかる。
どうして彼が俺を…?そう思ったが、その疑問は目の前の光景に打ち消された。
「ウェス…?なぜお前が…その姿は一体…」
そこは再び貴族が集う会議室だった。
ソロン様がディニス様の前で跪いている。
「レヴォン!そんなやつをここに連れてくるなど何を考えているんだ!さっさと摘み出せ!」
慌てたようなソロン様の声が響いているが、それよりも俺は最後にディニス様に会えたことに心打たれていた。
「ぁ…ぁ…ディニス、さま…」
掠れる声で必死に呼びかける。最後にどうか微笑みかけてほしい。
だが、その反応は期待したものではなかった。
「お前はなんて馬鹿なことを」
ディニス様の顔はもうぼやけて見えないけれど、冷たくて悲しそうな声に頭を殴られたような気がした。
また馬鹿だと言われてしまった。結局俺はディニス様の意にそぐわないことをしてしまったのだろうか…
"よくやった。お前は私の誇りだ"
そんな言葉を貰えることを夢に見ていたのに…本当に、馬鹿みたいだ。
彼の前に戻って来れて喜びに溢れていた気持ちは早くも萎んでしまった。
だがディニス様は失望したようによろよろとこちらに歩いてくる。
そして俺に触ろうとして、躊躇い、やめた。
それが悲しくて、折れて崩れかかった羽を必死に伸ばす。消え掛かっている今でさえ、ディニス様は俺に触れてくれない。
そのことに心が折れ、俺は重力のままに羽を下ろした。
地面に打ち付けられた羽が砂のように崩れる。
「ウェス!!」
慌てたようなディニス様の声が聞こえる。その顔は怒っているような悲しんでいるような不思議な表情だった。
「ぁ…ごめん、なさい。俺は…また、あなたを失望させて…」
そんな顔をさせるつもりじゃなかったのに…俺はただディニス様に喜んで欲しかっただけなのに…
「もう喋るな」
そう言ったディニス様の声は怒りを抑えつけているようだった。
「あなたの、役に、立ちたかった…もう一度、愛され、たくて…ごめんなさい…」
ディニス様が何か言っている気がしたが、もう目も見えず耳も聞こえない。
最後の言葉もちゃんと言えたのか分からない。
結局、ディニス様に笑いかけてもらうことはできなったけれど、最後にお会いできて良かった。
そう思いながらーーー俺は砂になって消えた。
ソロン様が勇者一行を倒した…?ディニス様にそう報告する…?
そんなの嫌だ…倒したのは俺なのに…
褒められるのは俺のはずなのに…!!
でも、体が動かない。気付けば足の方からサラサラとした砂が出ている。
俺は消滅しかかっていた。
それでもいいと思って勇者たちに挑んだのに、その手柄を、ディニス様に最後に褒められる機会を奪われることは耐えられなかった。
(魔王城に行かないと…)
そう思うのに、羽は折れて飛べず、足は立ち上がれば消えてしまいそうだ。
「そんな…頑張ったのに…どうして…」
ボロボロと涙が溢れた。もうディニス様に会えない、あの爵位を剥奪された時が最後の逢瀬だと思うと死にきれない。
だが、力が入らなくてついに地面に横たわる。
俺は何のためにここまでやってきたんだろう。そう思うと虚しさが込み上げた。
禁忌魔法を使ったので、魂はボロボロでもう生まれ変わることもない。もっとも、それはそれで良かったかもしれないが…
こんな辛くて悲しい思いばかりならもう一度生まれてきたいとは思わなかった。
ただ一つ、ディニス様に愛された日々を除いては…
あの幸せだった記憶だけ抱いて眠ろう。
そう思って瞼を閉じようとした時、目の前に誰かの足が止まった。
「お前は本当に馬鹿だな」
そう言った声は俺を肩に担ぐと転移魔法を使った。
ーーー
自分から溢れるサラサラとした砂を見ていると、転移させられた先でそっと降ろされた。
その時、俺を担いでいた人物がレヴォン様だとわかる。
どうして彼が俺を…?そう思ったが、その疑問は目の前の光景に打ち消された。
「ウェス…?なぜお前が…その姿は一体…」
そこは再び貴族が集う会議室だった。
ソロン様がディニス様の前で跪いている。
「レヴォン!そんなやつをここに連れてくるなど何を考えているんだ!さっさと摘み出せ!」
慌てたようなソロン様の声が響いているが、それよりも俺は最後にディニス様に会えたことに心打たれていた。
「ぁ…ぁ…ディニス、さま…」
掠れる声で必死に呼びかける。最後にどうか微笑みかけてほしい。
だが、その反応は期待したものではなかった。
「お前はなんて馬鹿なことを」
ディニス様の顔はもうぼやけて見えないけれど、冷たくて悲しそうな声に頭を殴られたような気がした。
また馬鹿だと言われてしまった。結局俺はディニス様の意にそぐわないことをしてしまったのだろうか…
"よくやった。お前は私の誇りだ"
そんな言葉を貰えることを夢に見ていたのに…本当に、馬鹿みたいだ。
彼の前に戻って来れて喜びに溢れていた気持ちは早くも萎んでしまった。
だがディニス様は失望したようによろよろとこちらに歩いてくる。
そして俺に触ろうとして、躊躇い、やめた。
それが悲しくて、折れて崩れかかった羽を必死に伸ばす。消え掛かっている今でさえ、ディニス様は俺に触れてくれない。
そのことに心が折れ、俺は重力のままに羽を下ろした。
地面に打ち付けられた羽が砂のように崩れる。
「ウェス!!」
慌てたようなディニス様の声が聞こえる。その顔は怒っているような悲しんでいるような不思議な表情だった。
「ぁ…ごめん、なさい。俺は…また、あなたを失望させて…」
そんな顔をさせるつもりじゃなかったのに…俺はただディニス様に喜んで欲しかっただけなのに…
「もう喋るな」
そう言ったディニス様の声は怒りを抑えつけているようだった。
「あなたの、役に、立ちたかった…もう一度、愛され、たくて…ごめんなさい…」
ディニス様が何か言っている気がしたが、もう目も見えず耳も聞こえない。
最後の言葉もちゃんと言えたのか分からない。
結局、ディニス様に笑いかけてもらうことはできなったけれど、最後にお会いできて良かった。
そう思いながらーーー俺は砂になって消えた。
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