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ディニス編
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しおりを挟む貴族が集まる魔王城の会議室にて。
腹心であるソロンが驚きの報告をした。
「本当に、勇者一行を倒したと?」
「はい、ディニス様。私が決死の戦いを挑んでまいりました。正々堂々とは行きませんでしたが…なんとか彼らを倒すことに成功しました」
その言葉に「おお!さすがソロン様だ」と周りが湧く。
彼は戦いの後にしては身綺麗で、疲れた様子もない。勇者一行は簡単にでやられるほど弱くは無かったはずだが…
彼の言葉と実態に違和感を覚えつつ、勇者の魔力を探知してみれば確かに息絶えていた。
「そうか…ソロンよ。よくやってくれた」
そう言って彼を労おうとしたところで、再び誰かが転移してきた。
それはもう1人の腹心レヴォンと…瀕死のウェスだった。
「ウェス…?なぜお前が…その姿は一体…」
私は唖然とした。爵位を剥奪し、市井に降した彼がなぜあんなボロボロになってここにいるのか。
定期的な報告でも彼は市井でうまくやっていると報告が上がっていた。さりげなく援助するようにも伝えていた。
他でもないソロンに…
「レヴォン!そんなやつをここに連れてくるなど何を考えているんだ!さっさと摘み出せ!」
だが、慌てたようなソロンの言葉に嫌な予感がした。
彼はウェスに差別的な態度を取らない唯一の高位魔族だった。だからウェスの監視役を頼んだのだ。
それがどうだ。市井に逃したはずのウェスがこんなことになっているなんて。
私は状況を把握したくてレヴォンに視線を移す。
「勇者一行を倒したのはウェスです。かなりなりふり構わない手を使ったようですが…そして、その手柄を奪いウェスにとどめを刺したのがソロンです」
その言葉に魔族たちがざわつく。
「ウェスが勇者を?」
「そんなことできるはずないだろ!」
「それよりソロン様が手柄を奪ったって…」
皆この状況に驚いているが、私が気になるのはそのどれでもない。
(ウェスに、とどめを刺した?)
だって、ウェスはまだ生きているではないか。
「ぁ…ぁ…ディニス、さま…」
すると、床に横たえられたウェスが掠れる声で必死に私を呼んだ。ほら、今だって喋って…
だが、体からはサラサラとした砂のようなもの…悪魔たちが消える時に変わる灰が溢れていて…
到底助かる見込みのないその姿に、私は血の気が引いていくのを感じた。
「お前はなんて馬鹿なことを」
なんとか絞り出した声は自分でもひどく冷たいものだと思った。
勇者一行などどうでも良かった。
ウェスの居場所はここにはないと思って離れることを選んだ。それなのに、なぜそんな姿で戻ってきてしまったのか。
いや、本当に一番馬鹿なのは私だ。
私と離れれば人並みの幸せを手に入れられると考え、愛していながら冷たく突き放した私の…
だが、ハッとしてウェスを見やる。
彼は驚いたようなに目を見開き、そして次の瞬間には泣き出しそうに細められた。
ウェスを助けなければ…
だがどうやって?
そんなことを考えながらよろよろと彼に向かって歩き出す。
そうだ医務室に連れて行かなければ…そうしてウェスを抱き上げようとし、触れるのをやめた。
今私が抱えたら、きっと彼は崩れてしまう。
それにもかかわらず、ウェスは折れた羽を必死に伸ばしてきた。
それを掴んでやりたい。でも、もう崩れる寸前の彼に触ってしまったら、それを最後と消えてしまいそうで、私は触れることができなかった。
だが、それをすぐ後悔することになる。
私が触れることはないと気づいた彼は、力尽きたように羽を地面に落とした。その衝撃で羽が全て砕け去る。
「ウェス!!」
私は慌てた砂になった羽を必死にかき集める。
今更そんなことをしても戻りはしない。それでも、風に流されていくウェスだったものをそのままにできなかった。
「ぁ…ごめん、なさい。俺は…また、あなたを失望させて…」
するとウェスが泣いているような声を上げる。辛いならもう無理をして話さないでほしい。なんとかするから、どうか1秒でも長く体を維持してほしい。
そう思って「もう喋るな」 と言った。
それを聞いたウェスの悲しそうな顔が脳裏に焼きつく。
「あなたの、役に、立ちたかった…もう一度、愛され、たくて…ごめんなさい…」
「なぜお前が謝る…!悪いのは私だ。冷たくして済まなかった…ウェスをずっと愛していた。こうするのが良いと思っていたんだ…すまない、本当に済まな…」
だが私が言葉を言い終わらないうちにウェスは砂となって消えてた。
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