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北城市地区予選 準備編
第40走 明かされた真実
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隼人と木村は、前回の北城市記録会の話題で盛り上がっている。
◇
放ったらかし状態となった結城は、とりあえず本来の目的である靴下を見る事にした。
すると木村の接客から離れた一二三が、今度は結城の接客へとシフトする。
1人で選びたいという結城の意向は無視し、横にベッタリとくっつくのだ。
「ホラ、この色可愛くない?白のスパイクにも合うっしょ」
「(う、うるせー)」
「早馬君、今心の中で”うるさい”って言ったでしょ」
「キサマ……超能力者か!?」
この2人、意外と仲は良いようだ。
————だが実は今回の結城は、靴下以外にも”ある目的”があった。
それはHOPで働く人間にしか聞けない事であり、隼人にも話してはいない。
次にHOPへ来るのはいつになるのか分からないので、結城は思い切って一二三に聞くことにした。
「それより一二三さん……飯島慎吾って知ってますよね?」
するとその名を聞いた一二三は、さきほどまでの笑顔を一瞬で消していた。
突然固まった表情を見た結城も、一二三が”何かを知っている事”を瞬時に察する。
それもそのはず、”飯島慎吾”とは、まさに先日会ったばかりの結城の中学時代の顧問の名前だ。
結城に過度な期待と練習をさせ、ケガをさせた張本人といっても過言ではない。
ケガをした後は結城に全く興味を示さなくなり、結局結城も陸上部に戻る事は無かった。
結城自身も、飯島に対する嫌悪感を今でも強く持っていたのだ。
「この前スパイク買った帰り、この店に入ってくる飯島とすれ違ったんですよ。何であの人がここに出入りしてたのか教えて欲しいんです」
いつになく真剣な表情で結城は問いかけていた。
だがそれに対し一二三は、真剣というよりは困った表情に変わる。
「結論から言うと、飯島さんの事は知ってるよ。でもね、なんというか口止めされてるというか……」
「口止め?なんすかそれ……!?」
予想外の答えに、結城の不快感は増していた。
だが一二三も申し訳なさそうにしている。
おそらく”大人の事情”というヤツなのだろう。
だが一二三は少し考えた後、突然何かを決心したような顔に変わる。
「でも私は話すべきだと思うな、うん。飯島さんには私から謝っとく。だから話すね」
この辺の潔さは、さすが元アスリートといった所か。
自分に妥協はできない彼女の性格をよく表している行動だった。
「飯島さんはね、今は教師を辞めて別の所で働いてるの。教師を辞めた理由っていうのが、日本の宝になるはずの早馬君をケガさせてしまったからなんだって言ってた」
「……はぁ?」
結城の目は点になっていた。
同時に頭も真っ白になる。
「あんなに凄い選手を指導するのが初めてだったから、プレッシャーも凄かったみたいよ。もし早馬君の記録が悪くなったりしたら全部自分のせいになる。そんなストレスから逃れるように、早馬君の代から練習量を過度に増やしてしまったんだって。
当時はそれが正しいと思っていたけど、でも練習で倒れた早馬君を見た時にやっと自分のやっていた事はただの自己防衛で、間違いだったと気づいたってずっと反省してた」
一二三は出来るだけ言葉を選びながら話している。
「だから早馬君がケガしてからは、あまりの罪悪感で早馬君に話しかけられなかったみたい。それで早馬君が3年生になる直前に、急に飯島さんが転校したでしょ?」
結城は静かにうなずく。
確かに結城が中学3年生の時に、飯島は学校を去った。
学校を変えて再び自分のような被害者を出すのだと、そう結城は危惧していた。
だが……。
「転校っていうのは嘘で、実は罪悪感によるストレスで心が不安定になって入院してたんだって。そこから1年かけて、なんとか働けるまで回復して……。それで今は知り合いの紹介で、スポーツ用品に特化した卸売業者に就職して働いてるの。だからこの前も、商品をウチに持って来てくれてたんだよ」
「……」
「これが真実」
「…………」
結城はしばらく言葉を発せなかった。
自分の知らない空白の時間は、飯島にとっては罪悪感との戦いだったと知り、申し訳なさすら”少し”感じ初めていたのだ。
あれほど憎んだ人間が、自分のせいで生活を失いかけていた。
その事実は結城にとっては全く想像もしていない事だった。
「私は今の2人の関係を見て、このままじゃイケナイと思ってる。だから真実を話したの。だいぶ前に早馬君が飯島さんの事を良く思っていないのは聞いてたからさ、少しでも知って欲しいと思ったんだよ」
「……はぁぁぁ」
気付けば結城は深いため息をついた。
そして鼻から大きく息を吸い、何とか口を開く。
「これ2つ下さい」
結城は短距離用の靴下を指していた。
一二三は一瞬困惑の表情を浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。
ただそのまま靴下をレジに持っていくだけだ。
どうやら散らかりすぎた結城の頭の中は、収拾がつくまでに時間がかかりそうなのであった。
————————
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放ったらかし状態となった結城は、とりあえず本来の目的である靴下を見る事にした。
すると木村の接客から離れた一二三が、今度は結城の接客へとシフトする。
1人で選びたいという結城の意向は無視し、横にベッタリとくっつくのだ。
「ホラ、この色可愛くない?白のスパイクにも合うっしょ」
「(う、うるせー)」
「早馬君、今心の中で”うるさい”って言ったでしょ」
「キサマ……超能力者か!?」
この2人、意外と仲は良いようだ。
————だが実は今回の結城は、靴下以外にも”ある目的”があった。
それはHOPで働く人間にしか聞けない事であり、隼人にも話してはいない。
次にHOPへ来るのはいつになるのか分からないので、結城は思い切って一二三に聞くことにした。
「それより一二三さん……飯島慎吾って知ってますよね?」
するとその名を聞いた一二三は、さきほどまでの笑顔を一瞬で消していた。
突然固まった表情を見た結城も、一二三が”何かを知っている事”を瞬時に察する。
それもそのはず、”飯島慎吾”とは、まさに先日会ったばかりの結城の中学時代の顧問の名前だ。
結城に過度な期待と練習をさせ、ケガをさせた張本人といっても過言ではない。
ケガをした後は結城に全く興味を示さなくなり、結局結城も陸上部に戻る事は無かった。
結城自身も、飯島に対する嫌悪感を今でも強く持っていたのだ。
「この前スパイク買った帰り、この店に入ってくる飯島とすれ違ったんですよ。何であの人がここに出入りしてたのか教えて欲しいんです」
いつになく真剣な表情で結城は問いかけていた。
だがそれに対し一二三は、真剣というよりは困った表情に変わる。
「結論から言うと、飯島さんの事は知ってるよ。でもね、なんというか口止めされてるというか……」
「口止め?なんすかそれ……!?」
予想外の答えに、結城の不快感は増していた。
だが一二三も申し訳なさそうにしている。
おそらく”大人の事情”というヤツなのだろう。
だが一二三は少し考えた後、突然何かを決心したような顔に変わる。
「でも私は話すべきだと思うな、うん。飯島さんには私から謝っとく。だから話すね」
この辺の潔さは、さすが元アスリートといった所か。
自分に妥協はできない彼女の性格をよく表している行動だった。
「飯島さんはね、今は教師を辞めて別の所で働いてるの。教師を辞めた理由っていうのが、日本の宝になるはずの早馬君をケガさせてしまったからなんだって言ってた」
「……はぁ?」
結城の目は点になっていた。
同時に頭も真っ白になる。
「あんなに凄い選手を指導するのが初めてだったから、プレッシャーも凄かったみたいよ。もし早馬君の記録が悪くなったりしたら全部自分のせいになる。そんなストレスから逃れるように、早馬君の代から練習量を過度に増やしてしまったんだって。
当時はそれが正しいと思っていたけど、でも練習で倒れた早馬君を見た時にやっと自分のやっていた事はただの自己防衛で、間違いだったと気づいたってずっと反省してた」
一二三は出来るだけ言葉を選びながら話している。
「だから早馬君がケガしてからは、あまりの罪悪感で早馬君に話しかけられなかったみたい。それで早馬君が3年生になる直前に、急に飯島さんが転校したでしょ?」
結城は静かにうなずく。
確かに結城が中学3年生の時に、飯島は学校を去った。
学校を変えて再び自分のような被害者を出すのだと、そう結城は危惧していた。
だが……。
「転校っていうのは嘘で、実は罪悪感によるストレスで心が不安定になって入院してたんだって。そこから1年かけて、なんとか働けるまで回復して……。それで今は知り合いの紹介で、スポーツ用品に特化した卸売業者に就職して働いてるの。だからこの前も、商品をウチに持って来てくれてたんだよ」
「……」
「これが真実」
「…………」
結城はしばらく言葉を発せなかった。
自分の知らない空白の時間は、飯島にとっては罪悪感との戦いだったと知り、申し訳なさすら”少し”感じ初めていたのだ。
あれほど憎んだ人間が、自分のせいで生活を失いかけていた。
その事実は結城にとっては全く想像もしていない事だった。
「私は今の2人の関係を見て、このままじゃイケナイと思ってる。だから真実を話したの。だいぶ前に早馬君が飯島さんの事を良く思っていないのは聞いてたからさ、少しでも知って欲しいと思ったんだよ」
「……はぁぁぁ」
気付けば結城は深いため息をついた。
そして鼻から大きく息を吸い、何とか口を開く。
「これ2つ下さい」
結城は短距離用の靴下を指していた。
一二三は一瞬困惑の表情を浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。
ただそのまま靴下をレジに持っていくだけだ。
どうやら散らかりすぎた結城の頭の中は、収拾がつくまでに時間がかかりそうなのであった。
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