テイルウィンド

双子烏丸

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第九章 Grand Galaxy Grand prix [Ready?〕

ジョンの勧誘

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 トライジュエル星系の第三惑星、惑星サファイアの大気圏を、二機は降下する。
「……それにしても、やっぱり海ばかりの所だね、ここは」
 眼下に広がるのは、一面青に覆われた、惑星の地表だった。
 波は殆ど見られず穏やかな海面は鏡のように滑らかで、済んだ青は惑星の名が冠する宝石、サファイアのようだ。
〈ふっ、海ばかりと言うのは、少し違うね。確かに陸地は存在しないけどその代わりに、惑星上には人間の住むコロニー、海上都市に人工プラントが幾つもある。
 鉱物資源は殆どないけど、エネルギーは太陽光で賄い足りない分は輸入している感じで……まぁそこはどうでもよくて、何より水産資源が銀河で指折りなくらいに豊富で、質がいいんだ! 何せ星全部が海で覆われているんだ、普通じゃ考えられない魚や生物が多く生息している。味だって美味に珍味に薬味、何でもござれ、だから他の星にだってサファイア産の生物が出回っているわけ〉
 画面上のジョンは、得意げにそんな説明をする。
「言いたいことは分かるけどさ、それがレースとどう関係して来る訳?」
 フウマの問いに、彼はやれやれと苦笑いする。
〈分かってないな、もっとレース以外にも、目を向けたらどうだい? レースだけじゃなくて、観光だとか色々な目的で、自由に星を巡ってみるのも悪くないよ〉
 これを聞いたフウマは、少し考える様子を見せる。
「レースも好きだけど、宇宙を自由に巡ってみる……か。たしかに、ちょっと憧れるな」

 
 ジョンは、嬉しそうに頷く。
〈そう言ってくれて、何よりだ! ……僕は君の事を、とても気に入っているし、その腕も買っている。だから――僕の仲間にならないか〉
 突然の、奇妙な発言。フウマは戸惑う。
「それは、どう言う意味?」
〈言葉通りの意味さ。実は僕、あるちょっとしたグループのメンバーなのさ。いつも色々な仕事入ってきて、レースよりも少しスリルだけど、宇宙各地を巡り廻ることが出来るんだ。
 何もレースだけじゃない。もっと、広くて新しい世界が、君を待っているのさ〉
 これには、少し興味が沸いた。しかし――
「悪いけど、僕にはまだ学校だってあるし、それに……」
 フウマはちらと、横にいるミオへと、目を向ける。
〈ああ、それなら心配ないさ。学校なら卒業するまで待つさ、それに彼女の事なら、一緒に仲間に迎えるよ、メカニックの腕もあるみたいだし、大歓迎だ〉
 熱心に勧誘しようとする、ジョン。
 正直どう答えればいいか、フウマは悩むが、ここはこう答えることにした。
「……うーん、ちょっと考えさせてくれないかな?」
 断ろうにも、魅力的な話に思えた。ここは答えを先延ばしにして、後で考えようと思った。
〈アハハハッ! 困らせてゴメン! そう言えば今からG3レースだったね。まぁ、今はレースの方に集中してよ。まぁそんな話があるって、後で考えてくれたら嬉しいな〉
 微妙に気になるところはあるけれど、ジョンの言う通りだ。
 フウマはとりあえず、この話については脇に置いておくことにした。

 ――だが、後にこの話を、意外な形で思い返すことになるとは、まだフウマは知る由もなかった。



 G3レースの開催場所は、青い海に浮かぶ、超巨大な海上都市、オーシャンポリスである。
 上から見下ろすと正六角形の形になっており、直径は百キロを優に超える。中央には無数の高層建築物が立ち並び、メトロポリス味を感じさせる。
 海上都市の付近には、レースの観客を乗せた客船などの大型宇宙船が水上に停泊し、中にはスリースター・インダストリーのブルーホエールと、ゲルベルト重工の豪華客船、クイーンギャラクシーの姿がある。
 

 着陸場所は、海上都市の端に見える、シャトル機用の滑走路である。
 テイルウィンドとスワローの二機は、滑走路へと降下し、慣れた様子で着陸する。
 スピードを落とすと、滑走路上を走行する、半球状な誘導ロボットが二機の進行方向に、それぞれ二体現れた。
 どうやら、どこかへと案内するらしい。
 ロボットに従い、案内された先は、四棟並ぶドック状の建造物。銀色の綺麗な建築物で、扉は開いている。
 ロボットはそれぞれ、一機ずつ別々の建造物に誘導する。
 短い間だったけれど、ここでジョンともお別れだ。
 別の建造物へと入るスワローの姿を見送りながら、テイルウィンドもその中へと入る。


 中は一隻の小型宇宙船が入るくらいの大きさで、先は行き止まりだった。
 アナウンスが流れ、そのまま待っているように、連絡が入る。
 すると、ガコンと揺れたかと思うと、ゆっくり下へと降下する感覚を、フウマ達は感じた。
 建造物の正体は、宇宙機体用の、大型エレベータである。
 テイルウィンドをのせたまま降下を続け、見えて来たのは、広大な格納区画、何層にも立体的に分けられ、それぞれに機体が並ぶ。
 そして、その何層目かで停止すると、ロボットの誘導も再開、他に並ぶ機体の間へと停泊させる。
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