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第二章
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しおりを挟む魔王の城に乗り込む直前の夜。
女達は感傷的になり、ため息ばかりを吐いていた。俺とのセックスにハマっちまって離れたくないらしい。まじでエロゲかよ。
そんな女達に、(別れた)女がいる、必ず元の世界に戻る、とずっと聞かせてきた。やっぱクズいな、俺。
城に入ってからは、無言のまま突き進んだ。各階毎にいる中ボスを片づけ、城の最上階まで到達する。
ひときわ広い部屋にたどり着いた。そこは玉座の間だった。玉座には黒い靄のようなものが人の形を模り、腰かけていた。
こいつを倒せば、全て終わる。
回復を聖女が、魔法攻撃を王女が、後援を女獣人が、直接攻撃を女騎士が受け持った。俺は攻撃の手が途切れないように猛攻する。
魔法による攻撃に怯んだところで直接攻撃を仕掛け、魔王のHPを削る。
魔王が呻き声を上げて膝をつけば、俺は唯一勇者だけが使える光魔法で聖剣に光を宿した。
身体能力補正により、狙った所に確実に剣を落とせる。
俺は迷いもなく、魔王を斬った。
その黒い靄はまるで北国で見られるダイヤモンドダストのように散り、そして消滅した。
終わった。
思ったよりあっけなかった。こちらの被害はほぼないに等しい。
女共が抱きついてくるが、俺には何の感動もなかった。何も得ることのなかった旅にどう感動しろって?
この世界ともおさらば。最短距離を通って来たのだから思い入れなど全くない。
ステータス画面を開けてみたが、二つのスキルはまだ灰色の文字のままだった。早く黒くなれよ。報酬なんかもうどうでもいい。変わればこのまま帰るか。
そう思った時だった。
「勇者様!!」
タタタと駆け足と共にあいつが叫んだ。それは悲鳴にも聞こえた。
だが、俺が振り向いた時にはもう遅かった。
玉座の方から矢のように飛んできた黒く鋭い何かがベルネの薄い体を貫いた。その衝撃に体は支えを失い、ゆらりと力なく傾く。
考えるより先に体が動いた。
ベルネの背中が床に叩きつけられる直前に腕を滑り込ませ、抱き留める。胸から腹にかけて、黒い靄を纏うクリスタルのようなものが深々とめり込んでいた。
ベルネがそれを受けたのは、俺の立っていた場所と玉座を結んだ直線上。
なんで?
なんでだ?
なんで、助けた?
焦点の合わない瞳で俺を捕らえ、ベルネの唇がわずかに動く。それは言葉を発する前に血を溢れさせた。
「こッの…バカヤロウが…っ…!」
金のためだったんだろ?!
報酬のために俺の機嫌取ってたんだろ?!
なんで俺なんかを…!
ピクリとわずかに持ち上がったその震える手を取り握ると、ベルネは――幸せそうに微笑んだ。
俺は、間違いを犯した。
こいつは。ベルネは…――。
目が、喉が、胸が灼ける。感情が溢れてきそうになる。その時、やっと自分の感情に気づいた。
ベルネの血で濡れる唇に口づける。何の抵抗もなかった。
死なせない。死んだとしても、生き返らせる。
持てるすべての力を使って。
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