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第二章

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 「ねぇ、ハヤト。そろそろ本気であいつの事置いて行かない?」
「ハヤトが言えば、あの男も諦めるわ」
「これ以上ついてくるのは無理だろう。敵も一筋縄では行かなくなってきた」
「魔族も出てきたもんニャ」

 確かに俺も疑問だった。いつ死ぬかもわからない状態にもかかわらず、なぜついてくるのか。報酬があるにしても、自殺行為だ。

「なんであんな必死なわけ?」
「それは、見ればわかるでしょう? あの格好」
「お金が必要なのよ。ハヤトと一緒に魔王を討伐したら、一生遊んで暮らせるお金がもらえるから、それを狙ってるんでしょ」
「そんな不純な動機で参加してるあいつに腹が立ってるんだよニャ」
「私たちはもちろん報酬は断っているわ」
「ハヤトと旅して、魔王を倒すことが目標であり誇りなのよ」
「何よりの名誉だからな」

 なるほどな。一生分の金、日本だと3億ぐらいか。ともなれば、当たりのキツイ俺の顔色ばっか窺って、必死に媚びて必死についてくんも頷ける。俺もあいつに求めるのは飯と雑用のみ。その代わり守ってやる。ギブ&テイクだ。
 だが、なぜかイライラする。

 
 魔王領に入る直前で立ち寄ったエルフの隠れ里。そこで最強装備がもらえるという。
 寄り道もせず、カジノでパーッとストレス発散したいのを我慢し、ここまでシナリオ通りに来た俺を少しは褒めろ。

 族長だというゴリマッチョエルフがいやに雑用係に語り掛ける。かと思えば、あいつのやたら女みたいに細い手を取って「私の妻にならないか」とほざきやがった。妻になろうが、何とも思わない。心底どうでもいい。

 あいつがエルフの宝を手に入れる為に族長の部屋に籠ってから、一歩も出てこないまま朝を迎えた。
 ベタベタと不必要に触りながらあいつを気遣う族長と、身を縮めながらもされるがままのあいつ。明らかな事後な様子に虫唾が走る。
 あいつは俺を目に入れて泣きそうな表情を浮かべた。どうせ、なし崩し的に最後までヤられたんだろ。

 金が欲しいんだろ。なら、そのぐらい耐えろ。

 俺はこれまで以上に雑用係にきつく当たった。食料を奪ったり、わざと置いて行こうとしたり。それでも俺が一言でも声をかければ、しっぽを振ってくるあいつ。酷く虚しい。
 魔王領に一人放り出してやろうか。ふつふつとそんな考えが湧いてくる。そんなことをすれば、どうなるかなど言わずもがな。死なれでもしたら、夢見が悪いと言い訳し、あいつがはぐれていないか魔力探知し確認する。この訳の分からない感情にも苛立ちを覚えた。

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