愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない

かんだ

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 翌日。セナは真宮と会うことはやめると言ってくれた。可愛いから見るだけで楽しかったけど、俺が口出ししてきてうるさいかららしい。
 昨日泣いたことが恥ずかしいのか、目線を逸らしながら真っ赤になってそう言うセナが可愛かった。泣き疲れて寝てしまったことも恥ずかしいのかもしれない。
「セナ、これを俺に付けてくれ」
 セナの手を取り、ソファーへ座らせる。昨夜のうちに用意した物を手渡す。
「なにこれ」
「チョーカーだ。昔のオメガは頸を守るためにチョーカーをしていたんだよ。今は医学が発達したおかげで頸を物理的に守らなくても望まない番関係を結ぶことはなくなったから、やってる人は少ないけど」
 俺が用意した物は黒皮のチョーカーだ。俺の首回りに合わせたサイズにしてある。
「俺は見た目が可愛くないからオメガに見えないだろ? チョーカーをつければ少しでも勘違い出来るかもしれないと思って」
 セナはチョーカーを受け取り、不思議そうに見つめる。そして、一言。
「馬鹿じゃねえの?」
 だった。
「酷いな。頭を捻ったんだぞ。あとお前も頑張って俺はオメガだって自己暗示かけろよ」
 見た目をオメガに寄せ、オメガだと暗示をかければ俺をオメガだと脳が錯覚するかもしれない。可能性は低くてもセナは単純だからゼロではないだろう。
「ほら、お前の手でチョーカーをつけてくれ」
 足元に座り、首を見せる。セナは唇を突き出しながら眉間に皺を寄せた。
「今って、チョーカーをファッションだって見られることの方が多いの?」
「どうだろうな。心配でチョーカーで頸を守る人もいるし。ファッションよりもそっちの意味で捉える人の方が多いかもな」
 医学が発達したとしても、全員がその恩恵を受けられるわけではない。中には抑制剤さえ買えないオメガだっているし、昔ながらにチョーカーで頸を守るオメガも少なくない。
 俺の答えにセナはやっぱり難しい顔をしていた。
「じゃあ、天下の連城グループのお坊ちゃんがチョーカーなんかしたら、頭を疑われるかもな」
「あ~、どうだろうな」
 俺は優性アルファだから、チョーカーをしたところでオメガに間違われることはまずない。だから俺がチョーカーをし始めれば、周りはそういうオシャレだと思うだろう。
「俺が悪く言われるかと思って心配してくれているのか?」
「そんなわけねえだろ。オメガらしくしてやる」
「あぁ」
 セナはチョーカーを俺の首へ嵌める。違和感はあるが苦しくはない。
「どうだ?」
「……お前みたいなオメガはいないな」
「可愛がってくれよ」
 むしろ気分が良い。自分で用意したがセナにつけてもらったことが気分を良くする。セナのものになったような錯覚になれた。
 セナの膝に頭を置いて、腰に腕を回す。
「可愛くねえもん」
「ずっと可愛いって思っていれば不思議と可愛く見えるもんだぞ」
 呆れたような溜め息を吐かれたが、セナの手のひらが頭に置かれ、ぎこちなく撫で始める。すごく下手くそだった。
「セナ、もしヒートになったら病院に隔離することにしたから」
「隔離? なんで?」
「ヒート用のアルファを用意したくないからだ。例え苦しくても、何とか抑制剤で我慢して欲しい」
 来る発情期に向けて、伝えておかなければならない。
 本当はセナに内緒で発情期に入ったら俺が抱くつもりだった。合う抑制剤を試すよりもアルファのフェロモンを送って癒す方が楽だし早いから。
 だけど、セナには二度とアルファのフェロモンを感じさせないと決めた。それを守るためには、セナが発情期に入ったとしても会わないことだ。
「俺のワガママだ。他のアルファに抱かれて欲しくないし、フェロモンを纏って欲しくない。オメガ専門病院に入院すればすぐに対処してもらえるから」
 例えセナの了承を得られなくてもそうするつもりだが、出来れば本人の意思であって欲しい。今以上に嫌われることをしたくない。
「頼むよ」
「別に良いよ。俺だって、本当は知らない奴に抱かれたくねえもん」
「そうか? なら良かった。ヒート前には体温が上がるから、平熱を超えたら念のためすぐに入院しよう」
「うん」
 思ったよりも素直なセナに安堵し、小さい体を抱き締める。
「俺がいるから大丈夫だからな」
「ん」
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