愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない

かんだ

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 利用され蔑ろにされたのに、無事だったなら良かったと心からホッとするセナに腹が立った。
 俺はセナのために色々なことをしてあげていても拗ねるか怒るかしか見せないくせに、金遣いが荒くデートもすっぽかすような真宮には笑顔と寛大な心を見せるのが許せなかった。
 だから、珍しく感情的になってしまった。
 オメガはオメガらしくいろと。アルファになれなかったのだからアルファに憧れるのはやめろと、言ってしまった。
 セナはオメガとしてちゃんと魅力的だ。単純で世間知らずだけどセナは可愛い。顔立ちだけでなく、中身の素直さが溢れ可愛さに変換される。わざわざアルファになろうとしなくても良い。
「セナ、ごめん」
 だけど、セナの感じる不安と恐怖をぶつけられて、馬鹿なことを言ったとすぐに後悔した。
 セナの涙はなかなか止まらない。言い合った玄関からセナを抱き上げ、リビングまで連れて来た。自分の膝に座らせて背中を撫でてあやす。
「おまえなんが、っ嫌い、だ」
「うん、ごめん。俺が悪かった。何も知らないのに、勝手なこと言った」
 親から捨てられたセナがどのような人生を生きてきたか知らない。だけど、愛されてきた経験がないから、これからも愛されないと信じ切っていることだけは分かった。心からそう思っているなら、アルファに愛されることが幸せと言われるオメガが、セナにとってどれだけ恐怖だったか、想像も出来ない。
「セナ、俺がいる。二度とお前にアルファのフェロモンを浴びせない。だから、俺を愛してくれ。お前が愛してくれる間ずっと俺のそばにいてくれ」
「……ゔ、ひ、っぐ」
「お前が大切なんだ。だから心配なんだよ。大切なお前が軽く見られているのが嫌だったんだ」
 オメガらしくないところが良かったのに、オメガらしくないところが気に入らなかったのは、きっと大切だったからだ。恋か愛かなんて考えたこともなかったけど、セナの相手は自分が良いと本気で思う。きっと俺よりもステータスが高く良いアルファがセナを望んだとしても、何かと文句をつけて追い払うだろう。
 自分の目の届く範囲で自分の手で面倒を見て安心している今までのように、セナのこれからにも自分が責任を持ちたい。
「そばにいてくれ。お前が飽きるまでで良いから。俺を一番に愛してくれ」
「なん、だ、それ。ばかじゃ、ねえの。お前は、ゆーせー、っアルファのくせに」
「お前の前ではオメガになるから。可愛がってよ。な?」
 肩に置かれたセナの顔を優しく上げる。涙と鼻水で真っ赤な顔はぐちゃぐちゃだ。なのに、愛おしく見える。
 涙を拭きながら両頬を包む。
「俺は絶対に離れないから」
「……信じ、られるわけ、ねえだろ」
「うん、そうだよな。じゃあ本気で嫌になるまでそばにいてくれ。お前主体で良い」
 本気で俺から離れようとしたら、その時はまた考えなければならないが、手放すつもりはない。
「おまえを、オメガとして、扱ってやる」
「あぁ」
「俺のことは、好きになるな」
「分かった」
 好きにならない。きっと、俺はセナを何よりも愛おしく愛する。
「俺が飽きたら、お前から、離れるからな」
「お前の好きにしたら良い。俺のことは気にせず」
 セナは再び俺の肩に顔を埋めて泣いた。だけど、さっきとは違いセナ自らも俺を抱き締めてくれた。震える小さな体を優しく撫で続けた。
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