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再会の手紙。あなたに届きますように。
突然の再会
しおりを挟むバイト先は大学からすぐ近くにあるカフェにして、働き始めて1年と少し経った。
家からは少し距離があるけれど、基本的には平日3日と休日1日の出勤にしているから、大学帰りに通いやすい場所にした。
テスト期間の融通はきくし、客層も比較的穏やかな人が多く、残業もないからすごく働きやすい。
スタッフもみな、優しい人ばかりだ。
「あ、響くん。良いところに来た!」
出勤するとすぐ、カウンターにいる店長に声をかけられた。何か問題でもあったのかと、スタッフルームに行かずにそのまま店長のもとへと急ぐ。
「今日みたいにいつも土曜日に来てもらってるけどさ、来週からしばらく日曜日に変更してもらっても良いかな? それと、早速明日の日曜日も来てもらえるかな」
「え? ああ、シフト変更ですね。構わないですよ」
聞けば、家庭の事情で日曜日の勤務が難しくなったスタッフがいたようだった。
「土日どうしても無理なときはいつもみたいに休ませてほしいって頼みますけど、それ以外はいつでも空いてるので、どっちも出られますからね」
「そう言ってもらえて助かるよ、ありがとうね」
「いや、俺もいつも配慮してもらって助かってるんで」
店長と話をしていると、同じ大学の先輩がひょっこりと顔を出し、「響が日曜日なら俺もそうしようかなあ」と笑った。
「響くん、さすが。人気だね」
「いや……」
少し照れて恥ずかしい気持ちになりながらスタッフルームに行くと、土曜日に被ることが多い他のメンバーにも、先輩と同じようなことを言われる。
ここに来るまで先生のことを話して気持ちが落ちていた部分もあったから、こういう関わりがありがたいと思った。
去年は頻繁に日曜日に働くこともあったけれど、少なくとも2年になってからはほとんど土曜日に働いていることもあって、日曜日のスタッフは久しぶりな人が多かった。
色んな人に声をかけてもらえて、それがなんだか嬉しい。
しばらくは日曜日の勤務になったことを伝えると、みんな喜んでくれた。
「響くん、接客が丁寧だから助かるわ」
「本当ですか? ありがとうございます」
他のバイト先を経験したことがないけれど、ここまで良い人ばかりな職場はないんじゃ? と思うほど、働く人みんなが優しい。
だからこそ、誰かが困っているときに助け合おうと思えるんだろうな。
飲み終えたコーヒーカップを両手に持ちながら、カウンターのほうへ戻ろうとしたとき、ドアが開いて新しいお客さんが入ってきた。
片付けの途中だったこともあり、軽く顔を向け「いらっしゃいませ」と挨拶をし、それから奥へと戻る。
カウンター裏に入ると、カップを洗っていたスタッフに、「今日わりと暇かも」と話しかけられた。
「珍しいですね。天気悪いからかな」
カウンターから少しだけ顔を出し、店内を見渡すと、確かに空席が目立っている気がする。
土曜日でももう少し入るけどなあ。
そう思いながらレジのほうへと顔を向けると、見知った顔に心臓が騒いだ。
「あっちゃん……、何で……」
俺がさっき挨拶して以降で、新しく入ってきたお客さんはいないから、もしかしてそのお客さんが彼だった?
もし、俺が何の作業をしてなくて入り口近くにいたら? レジに入っていたら?
考えると、身体が震えた。
先生は何も変わらない様子で注文をしていて、その様子から俺だと気づいていないんだと分かった。
気づいたらすぐに帰ってしまうだろうし。
「響くん、どうした?」
「いや、ちょっと知り合いが」
「あ、本当? 会ってくる? あの人ね、日曜日にけっこう来てくれるよ」
「……そうなんですね。会うのはいったんいいです」
俺の表情を察してか、気まずいなら表に出なくて良いよと言われ、素直に甘えることにした。
何も変わってなかった。大好きな彼のままだった。
心臓が握り潰されそうなくらいに痛いし、呼吸も苦しくてたまらない。視界は涙で滲み、鼻の奥がツンとした。
ずっと会いたかったのに、この1年半の間こういう日が来ることを待っていたのに、実際は想像通りにはならず、彼を前にしてただ隠れることしかできない。
日曜日にけっこう来るということは、先生にとってこの店はお気に入りなんだろうか。
確かに店内は静かでくつろげるし、雰囲気も良い。駐車場も広いし、このカフェ以外にも周りには時間を潰せるスポットがたくさんある。
それでも、先生は、俺の大学が近いことを知ったうえでここに来ているのだろか。
それとも興味がなさすぎて、俺の進学先を忘れてしまった? だから油断している?
というかそもそも、俺のことなんてどうでもいいから、もう気にしないってことか?
久しぶりに会えた嬉しさはもちろんあるけれど、少なくともあの日以降の高校生活では無視され続けたし、先生は引っ越しまでしていた。
それに、おばさんにも「あっちゃん、今どこに住んでる?」とたった一言さえも聞けないまま、今に至るくらいだ。
それほどのことだったはずなのに、先生は俺の生活圏内に来て、穏やかにコーヒーを飲んでいる。
どういうつもりだ? と苛立ちも感じた。
全部俺が悪いけど、それにしたってこれは……。
もう俺のことなんかどうでもいいってか。
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