ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介

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第十三話 ざまぁ返し!馬鹿勇者グレン対主人公アラン

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 漁業ギルドの講堂は女性たちの歓喜の叫びに包まれた。
 三十人ほどいたロッグダメージの被害者女性たちの顔を俺が元に戻したのだ。俺に抱きついてチューをしてくる女性多数。顔が女性の唾液まみれだ。最後の二人、それがソニアとレイラだった。

「すまないな、こういう場合、知り合いは最後にやるものだから」
「ええ、そのくらいは弁えているわ」
「…………」
 ソニアは流暢に言葉を発せられるようだがレイラは上手く話せないようだ。口が三分の一溶けて塞がっている状態。食事にも不自由しているだろう。

「何があったか話してくれるか…。誰が君たちにロッグを浴びせたのかは、だいたい想像がつくけどな」
「ええ、分かった」

『ハイヒール』
 ソニアの上半身が白い光に包まれる。

「それにしても、途方もない魔力量だね…。三十人にハイヒールかけられてしまうなんて」
 ミファンがしみじみと言っている。頷くリチャード卿。
「ええ、ハイヒールの使い手で、かつこれだけの魔力量を持つのはケンジ殿くらいかと」
 グレンが勇者の称号を得たのも、こんな理由なのかもしれない。使えば使うほど日に日に魔力が増えていくのだ。グレンの性根が歪まずに、正しく治癒(中)を使い続けていれば、いずれ治癒(大)を会得していたのかもしれないな。

「終わったぞ、ソニア」
 急いで設置してあった鏡を見に行くソニア。溶けてしまった顔が元の美しいソニアに戻っている。
「ああ…!ありがとう、ありがとう、グレン!」
「あの時に君にしてしまった仕打ちの十分の一にも満たない償いだよ」
「そんなことないよ…。本当にありがとう…」
「さあ、レイラ…」
「……んっ、ん…」
「いい、無理に話さなくて」
「…………」
「つらかっただろう…。いま、元に戻してやる『ハイヒール』」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 先の通り、今日一日の被害者女性の治療はレイラが最後だった。
 元仲間と積もる話もあるだろうと、リチャード卿とミファンは席を外してくれて、俺は改めてソニアとレイラを海沿いのカフェに誘った。
 痩せていたレイラ、三分の一ほど溶けて口が塞がっていて食事も不自由だったらしく、カフェでシチューとパンを夢中になって食べていた。

「悪いわね、ご馳走になって」
 その様を見ていたソニア、レイラの分も含めてか軽く頭を下げた。
「いいって、この仕事をターサンドのギルドから永年依頼されて以降、お金には余裕あるから」
「それにしても何、その奇妙な服は?ターサンド王国で流行っているの?」
「ああ、これは作業服と言ってね。丈夫な布地で作られていて…というより俺が作ったんだよ。この編み上げ靴と一緒にね。この特許のおかげでお金も出て家族たちにもお腹いっぱい食事をさせてあげられているよ」
「家族、ああ、結婚したのね」
「ああ、嫁四人、子供は三人いるよ。今日、俺の後ろにいた格闘家の女性いたろ。彼女が第四夫人だ」
「そうなんだ…」


 レイラがようやく食事に満足してお茶を飲みだしたところで本題に入った。
「アランだな?君たちにロッグを浴びせたやつは」
 二人は黙って頷いた。ソニアが話し出した。
「…邪竜ゲドラを倒し、私たちが属する『鋼鉄の絆』はバレンシア王国一番のパーティーとなったわ。すっかり有頂天にもなって稼ぎも良くなり、アランは私とレイラ二人に求婚してきた。容貌の醜さには、もう慣れていたし、アランの補助魔法は、もはや私たちには欠かせないもの、それにアランは何かと優しかったから…私たちはその求婚を受けたのよ」

 そのあとは何となく想像がつく。アランは不細工で肥満漢、小説ではアランの容貌をそのくらいでしか表していないが、リアルの彼は容貌に自信が無いため顔面を覆うように前髪を伸ばしているし入浴の習慣が浸透していないこの世界では清潔と言い難い。かつ体臭もかなりキツい。色町の娼婦にも拒絶されるほどだった。

 ソニアとレイラと結婚するのは小説のエピローグ通りだから、いわゆる主人公補正というものが発生したのか、どれだけ容貌が負の塊であろうとも彼女たちは求婚に応じたと言えるだろう。
 グレンの女遊びを戒めたのも仲間、同郷の友としてもあったのだろうが嫉妬もあったはずだ。小説の中では聖人君子のようなやつだが、ここはもう現実の世界、不細工で女に好意を持たれない男が美男子で女から寄ってくるような男に嫉妬を抱かないわけがない。
 作中でもアランはソニアとレイラが登場した段階で想いを寄せていると記されている。この二人を嫁に出来たことは、さぞや嬉しかっただろう。

「アランね…。私たちをすごく束縛するようになった。パーティーの他の男性メンバーとクエストについて話し合いをしていても、あとですごく怒った。『俺以外の男と話さないでくれよ!』って」
 レイラの言葉も納得できた。やっぱりな…。容貌に激しく劣等感のあるアランが、ようやく意中の女性二人を伴侶に出来たんだ。美女と言えるソニアとレイラ、かつ優秀な冒険者だ。他の男に取られないか気が気でないのだろう。
 レイラは続ける。
「それと一度セックスの快楽を覚えたら、まるで猿のように私たちの体を求めてきてね。今日は体調が悪いから許してと言っても…そのまま無理やりね…」
 無理もない。ずっと女に忌み嫌われていた男に美女二人が伴侶となったんだから。だが相手の女からすれば溜まったものではない。ただの性欲処理に使われたようなものだ。

「身勝手な束縛とセックスの強要に、いい加減我慢の限界が来て、私たち二人はアランに別れることを告げたのよ」
 歯をギリと食いしばるレイラ、よほど許しがたいことだったのだろうと思う。ソニアが
「アランは食い下がってきたわ。束縛しない、セックスの強要はしないと。でも、もうダメ、私たちにはあいつへの愛情なんて綺麗に消滅していたんだから」
「…………」

「その翌日の朝よ。私たちが出て行こうとした時、アランが大量のロッグを私とレイラに浴びせてきた。『俺を裏切る罰だ!』と激痛にのたうち回る私たちをあざ笑い、あの男は消えていった…」
「…確か、この国でもロッグダメージの加害者は即死刑のはずだが…捕まっていないのか?」
「ええ『鋼鉄の絆』も勝手に抜けて行方をくらましたわ…」

 レイラの言葉に俺は『ふう』と項垂れた。
 これが本編終了後の主人公アランの末路か…。最終回の、あのシーン。邪竜ゲドラを倒して、この町でパレードをした時が、あの男の絶頂期だったのだろう。物語は、そこでめでたしめでたしで終わった。
 しかし、ここはもう現実の世界。ハッピーエンドのあとにも人生がある。

「二人の顔は元に戻ったけれど、いまアランが捕らえられたとしても、やっぱり死刑か?」
「そうなるわ。ギルドと騎士団本部にも被害届は出したし、ちゃんと記録も残っている。結果、元に戻ったとしても無罪放免にはならないわ」
 と、ソニア。レイラがそれに付け加える。
「賞金首にもなっている。生死問わず、ただ賞金を得るには首が必要だけど」
「せめて、俺が斬るのも情けなのかもな…」
「「えっ!?」」
「一応元は同郷の友だからな。アランが隠れていそうな場所に心当たりがあるんだよ」

 グレンの記憶が教えてくれる。
 町民学校の同級生だったグレンとアラン、アランは容貌のことでいじめの格好の標的とされたが、その都度グレンが助けてきた。本当にあのころは親友だったのだ。弱いヤツを助けていい格好がしたいわけじゃない。
 繰り返すがグレンの記憶が教えてくれる。人としてアランが好きだった。
 だから、彼がいじめられているのを放置できず助けたのだ。

 町民学校を終えた放課後、よくアランと遊んだ野山…。俺はアランがそこにいると思った。
 明日にはまた治療がある。泊りがけの遠征は出来ない。俺はシートピアの冒険者ギルドと騎士団の出先機関に赴き、アランの罪状の裏取りをした。
 死刑は決定しており、かつ生死問わずの賞金首にもなっていることが判明した。
 馬屋に行き、一番俊足な馬を借りて、一気にグレンとアランの故郷の町へと飛ばした。

 町から少し離れた野山、木々が生い茂って天然の障壁となり、その向こうに小さな草原と洞穴があることはあまり知られていない。グレンとアランは勝手に『俺たちの領土だー!』と子供の時、大はしゃぎしていたものだった。
 木々を割って入る、勝手知ったる元グレンとアランの領土。間もなく小さな草原に着いた。変わっていない。
 洞穴に向かう。そして

「アラン」
「…………」
 髪は汚れてボサボサ、無精ひげは伸ばし放題、そして変わらず肥満漢のままだった。
「…用件は分かっているな。お前はソニアとレイラにロッグダメージをやった。即死刑なほどの重罪…。賞金首にもなっている」
「…グレン」
「ん?」
「…絶望死…。しなかったんだな…。あの十万ゴルダーがとどめになるかもと思い、放ったんだけど…」
 この世界には、本当に『絶望死』というのが存在する。生きる気力を失った者、家族を失った者、様々な事情で絶望を味わい、その絶望が意識を狩り取り、そして心臓まで止めてしまう。
「上手い方法を使うものだ。施しで絶望死を誘発させようなんてな…。放った瞬間のお前が俺に向けた嘲笑は今でも覚えている。だけど俺はお前がくれた十万ゴルダーが再起のキッカケとなった。感謝しているぜ」
「…………」
「いま俺はバレンシアを出て、ターサンド王国でケンジと名乗り治癒師をやっている。実はあれから治癒(大)を身に付けてな。今はバレンシアに請われて入国…。ソニアとレイラの顔も元に戻したよ。だけど…」
 俺は斧の柄を握った。
「当然、お前の死刑は消えない。生死は問わずの賞金首となっている」
「そうか…。でもさグレン…」
「ん?」
「ソニアとレイラ、俺を裏切ったんだぞ!許せるわけないだろうっ!」
「裏切ったのはお前だ。あんな美女二人がお前の内面に惹かれ伴侶となった。それなのにお前は彼女たちを身勝手に束縛し、体調が悪い時でもセックスを強要して無理やりに。あげく、別れを切り出され逆ギレしロッグを顔に浴びせた。これが裏切りでなくて何だ?」
「妻なんだから、夫の求めに応じるのは当然だろ。パーティーの男と楽しそうに話しやがって!怒るのが当たり前だ!顔が溶けるのも自業自得だ!」
「救えぬやつだな…。せめて俺の手で斬るのが手向けだ」

「簡単にやられるか!お前が乞食やっている間、俺は邪竜ゲドラを倒したんだ!」
 アランは自分に攻撃補助魔法をかけた。
「これでもくらえ!」
 攻撃力と素早さが急上昇して俺に体当たりをしてきた。
「ぐあああっ!」
 俺は洞穴の中から草原まで吹っ飛んだ。アランはすかさず馬乗りになり、俺を殴打。

「俺は!お前の!不気味なくらいに整った顔立ちがガキのころから!大嫌いだった!いじめから俺を助けることで!お前は優越感に浸っていたんだ!この野郎!この野郎!」
「うぐっ、げほっ」
 まったく反撃できない。すさまじい強さだった。
「王都で冒険者になってからも!お前だけ!いっつもお前だけ女にモテた!この野郎!ソニアとレイラのこと!俺が好きだって知っていたくせに!パーティーから追放した!ふざけやがって!ふざけやがっ…」

 アランは急に胸を押さえた。馬乗りの姿勢が保てず、俺のうえから転げ落ちた。
 俺は治癒魔法を顔面にかけて立ち上がり
「阿呆、あんな乞食みたいな生活を続けていて、いきなり自分に攻撃補助魔法をかけて暴れればそうなるのが当然だろうが」
「うっ、あああっ、胸が痛い!うああっ!」
「補助魔法士のくせして知らなかったのか。武力攻撃、魔力攻撃、素早さ、防御の倍化の魔法は受ける方の体にも下地が必要なんだ。今のお前にそんなものがあるか?」
「ぐっ、ぐうっ!胸がぁ!ゴホッ、ゲホッ、苦しい!痛いい!」
「一つ聴かせろ。絶望死を誘発してまで殺そうとした男との思い出の地を隠れ家にしたのは?」
「ぐっ…うぅ…。しっ、知らねえよ、ここなら見つからないと…ぐっ、思っただけだ!お前との思い出なんて…ロクなものしかねえよ!ぐあああっ!」
「そうか…。ソニアとレイラには悪いようにしない…。安心して死んで行け」
「グ…。グ…レン……」

 ざまぁされた元勇者が主人公にざまぁをやり返す形となったな…。
 残念だよ、俺は不細工で肥満漢でありながら補助魔法士として頑張るお前が好きだった。
 読者として、お前が場所と人を得て邪竜ゲドラを倒すパーティーのメンバーとして活躍するのが、本当に痛快でな。お前がグレンにした『ざまぁ』はスカッとしたものだよ。
 だから俺は…あの最終回のあともソニアとレイラと仲良く幸せに暮らしているといいなと思っていたんだ…。心から…。
 でも、お前は間違えてしまった。グレンと同じように取り返しのつかない間違いを。

「いまラクにしてやる。さらば…友よ」
「こっ、殺さないでくれぇ!うああっ!俺はまだソニアとレイラと……」
 激痛にのたうち回るアランの首を俺が刎ねた。
 どうして…という顔のアラン、目を少し瞬きさせていたが、じき目から光が消えた。
 俺はまぶたを閉じさせた。

 首だけ収納魔法に入れて、俺はその場に穴を掘って胴体を埋めた。
 アラン愛用の魔法の杖を洞穴から見つけて埋めた場所に立てた。墓標変わりだ。その後に手を合わせた。 
 あの小説の作者が、この顛末を聴いたらどう思うかね…。

 アランの弔いを済ませて、俺は再び馬に乗ってシートピアに戻り、ギルドと騎士団にアランを討ったことを報告、賞金も得た。


 翌日、また三十人ほどの女性の顔を元に戻したあと、ソニアとレイラを食事に誘った。駅馬車で王都に帰るとのことだった。俺はテーブルの上にアランを討った賞金を置いた。
「君たちのだ」
「「…………」」
「アランがな、せめて賞金はソニアとレイラに……」
「「嘘」」
「…………」
「アランがそんなこと言うはずがないじゃない」
 ソニアが言った。よほど信用されていなかったのだな、アランは。

「とにかく君たちは今まで溶けた顔のせいで働けなかったのだから『鋼鉄の絆』で稼いだ金も尽きかけているだろう。俺は幸い仕事に恵まれて収入はそれなりにあるから、アランの首の賞金なんていらない」
「貯金の底が見えているのは事実だし…ソニア、ありがたくもらっておきましょ」
「そうね…。それじゃ、ありがたく…」

「…アランの首は見たか?王都じゃなく、ここシートピアでさらし首になってしまったが…」
「見たわ。つい数年前、邪竜ゲドラを倒した英雄として凱旋した男がロッグダメージの罪で賞金首となり首を斬られて晒される…。落ちた英雄と指さされて笑われていたわ」
「そうか…。邪竜ゲドラを討てたのもアランの力が大きかっただろうに…民衆なんて身勝手なものだな。首を奪い返し、討った俺に挑んでくる者が一人でもいれば救われると思うが…」
「優しいんだね、グレン…」
 レイラが微笑んだ。『首を奪い返し、討った俺に挑んでくる者が一人でもいれば救われると思う』は本心だ。やっぱりアランは俺の好きな主人公だったから。
「本当、せめて貴方に討たれたことがアランにとって唯一の救いだった思うよ。弔ってくれたんでしょう?」
「よく分かったなソニア。まあ、埋めて、あいつ愛用の魔法の杖を立てただけの墓標だけどな」

 ソニアとレイラは互いを見つめて頷き、ソニアが
「ねえ、グレンがバレンシアでロッグ被害者の女性たちの顔を戻すのはシートピアに場所を限定しているんでしょう」
「ん?ああ、そうだよ。今回だけじゃなく、これから定期的に行ってもらうよう王室から依頼されているからな。でも内陸の王都に行ってしまうと帰国するのを妨害されかねないからとターサンドの王様とも約束し、いつでも逃げられる海に面したシートピアのみで、ということにしたんだよ」
「ふーん、ねえ私とレイラをシートピアの現地妻にしてくれないかな。罪人アランの元妻だなんて、もう貰い手があるわけないし歳もそれなりにね。でも子供は欲しいのよ」
「おいおい、分かっているのか。俺は君たちをレッドベアの前に置き去りにして逃走した男なんだぞ。そんな男を…」

「でも、貴方は立ち直ったじゃない」
「ソニア…」
「冒険者の資格と勇者の称号を剥奪され、乞食にもなり果てた貴方が他国に渡り、奇跡の治癒師とまで呼ばれるようになった…。こんな逆転劇を実現した人なんていないと思う。確かにあの時は殺してやりたいほど貴方を憎んだ。だけど貴方は私たちの溶けた顔を治してくれたうえ、私たちの今後の生活のために、こんな大金を渡してくれた…。たとえ子供が欲しいと言ってもね…」
「…ソニアの言う通り、父親は誰でもいいってわけじゃない…。グレンの子なら生んでみたいと思うもの」
「そっか…。そこまで言われたら男として断れないな。ここシートピアにいる時だけでいい。俺の妻になってくれるか」
「「うんっ」」
 アランから妻二人も奪うことになった…。俺が主人公の小説なら、ざまぁされた勇者が主人公にざまぁ返し、いうところか。
 しかし、驕るまい。人間万事塞翁が馬、これにより俺がアランのような末路にならんとも限らないのだから。
 慎まねばならん、左右に女を侍らして高笑いした瞬間が俺の滅びの第一歩だ。


<ソニア視点>

 我ながら調子がいいと思った。レイラもだろう。
 グレンは生まれ変わっていた。栄光を味わったアランが奈落に落ちて、乞食にもなり果てたグレンが奇跡の治癒師として国外追放した国から頭を下げられて国民を助けてほしいと要望された。こんな逆転劇を実現した男なんて物語でも、そうはいないんじゃないかな。
 パーティーを組んでいた時は、勇者だというのに軽薄で、顔がいいだけの男と言う印象もあった。

 それがどう?今の顔つきは、まるで別人…。精悍な顔つき、うっとりするような面魂、そして老成された何者かに見えてくる。あの戦闘中に仲間を置いて逃走したという、取り返しのつかない過ち。それが彼を変えたんだと思う。
 奇跡の治癒師ケンジとなった彼…。最初に戻るけれど我ながら調子がいいと思った。

 これほどの器の男に嫁四人というのは、むしろ少ない方だわ。
 歳もそれなりに行っていたけれど、グレンは私とレイラの求婚に先の置き去り事件から断れないと踏んで第五夫人と第六夫人になることを申し出た。ズルいと思われるだろうけど私も女、母親になりたいのよ。ごめんねグレン。

 でも現在グレンが拠点としているターサンド王国には行かず、ここシートピアでの現地妻でいいと思った。
 やはりグレンは私とレイラをレッドベアの前に置き去りにし逃走したことを今でも深く悔やんでいる。毎日私たちと顔を合わせるのはつらいかもしれない。現地妻くらいでちょうどいい距離だとレイラと話し合い、そう結論付けた。

 さて、私とレイラは一度王都に戻り、改めてシートピアで住居を探すことにしましょ。
 早速、グレンに抱かれたいところだけどロッグダメージで心身傷ついた私たちは、まだ男を受けいられる体じゃない。彼が次にシートピアに訪れたさい、満足させてあげられる体にしておかなきゃね。
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