レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
28 / 51

28

しおりを挟む
 歩きながら何とか話題を考えて色々と話かけてみるが、どれも空振りに終わる。
 会話らしい会話も無くライト公爵の庭に着いた。


 先程のロゴス公爵の庭とは趣の違う庭だ。

 珍しい木々が植えられた少し殺風景な庭だったが、レイルークは懸命に誉めてみた。

 しかしグレイスはつまらなさそうに「そう」と言って終わった。


 とうとう沈黙しながら二人は庭を歩き続けた。


(ち、超気まずい……!)


 しかし、散策を続けているうちにレイルークは、ある事に気が付いた。

「グレイス嬢。……もしかして、眠たいのではありませんか?」

 その声にグレイスは歩みを止めた。レイルークを見て「何故」と瞳が問いかけている。

「先程からしきりに目を瞬かせてます。顔色もあまり良くありません。口元も強く噛み締めている。……欠伸を、我慢しているのでは?」

「……」

 否定しない。図星だったのだろう。
 グレイスは手のひらで口を覆うと、諦めた様に大きく欠伸をした。

「……去年、十歳になって魔力測定で自分の属性が分かってから、あまり眠れてない。魔術を極めろと、父の命令で毎日毎日勉強漬けで。最近も、ずっとそう」
「それは、辛いですね……」

「仕方がないのよ。そうしないといけない、……事情が、あるから」

 目尻を指で揉んでいる。予想よりもかなり辛い様だ。

(可哀想だな……。何か、してあげれたらいいんだけど……)

「……あ、そうだ。今から少しだけでも、昼寝をしませんか?」
「……は?」

 辺りを見渡したレイルークは、木の袂にベンチが備え付けられているのに気が付いた。

「ほら、丁度あそこに横になれるベンチがある。僕が責任持って見張り番を仰せつかります。束の間ですが、お休みになったらどうでしょう? 少しは眠気もマシになると思います」

 ぼんやりしているグレイスの手を取ってベンチへと連れて行き、半ば強引に座らせた。

 やはり、ぼんやりとしてレイルークを見上げるグレイスに笑い掛けた。

「大丈夫です。誰か来たら、直ぐに起こします」

「……膝枕」

「……はい?」

 少し照れた様にそっぽを向いた。

「膝枕、して。枕が無いと、眠れない」

(う。か、可愛い……)

「ひ、膝枕って……。僕……じゃない、私、は男なので、その……」
「……お願い」

「……わ、分かりました……」

(女の子に膝枕されるんじゃなくて、する側。だとしても、て、て、照れる……!!)

 レイルークは平静を装って承諾すると、ベンチの隅に座った。
 自分の膝を軽く叩いて「堅いと思いますが、どうぞ」と微笑んだ。

 グレイスは少し顔を赤らめていたが、ドレスに気を付けながら無言でベンチに横になると、レイルークの膝にゆっくりと頭を乗せた。
 緊張しているのかグレイスは目を強く瞑っている。

 少しでも眠れるように、レイルークはグレイスの肩をポンポンと優しくリズムよく叩いた。

「……身体の力を抜いて。大丈夫だから」

 赤ちゃんをあやす様にリズムよく叩いていると、やがて膝に掛かる重さが少し重くなった。

 グレイスの顔を見ると、力の抜けた美少女のあどけない寝顔があった。
 レイルークは思わず天を仰いだ。


(可愛いが過ぎるだろう!!)


 あどけない寝顔に思わず身悶えそうになるが、下手に動いて目を覚まさせてしまうと可哀想だと思い、これ以上動くのは控えた。

 やる事もないので、美しい宮殿を見上げてみる。やはり幻想的で摩訶不思議な建築物だ。飽きずに眺めていられる。



(……それにしても。とても、静か……だな)


 庭園に心地よい風が吹き抜けていく。
 優しい風は、自分の髪をサラサラと靡かせてくる。


(緊張の連続だったからかな……。少しだけ、疲れた……)

 何だか自分まで眠たくなってきてしまった。

 少しだけ休憩、と思って目を瞑ると。

 直ぐに微睡んで。
 意識がプツリと途絶えた。




(……? いけない、つられて一緒に寝てしまった……)

 いつのまにか、つい眠ってしまった様だ。

 レイルークは眠たい目をゆっくりと開いた。


 どれくらい寝てしまったのかとグレイスを見ると、グレイスはぼんやりした表情でレイルークを見つめていた。
 あまりに子供っぽい顔に、レイルークは優しく微笑んだ。


(なんだ。そんな顔もできるんだ)


「おはよう」

 レイルークのその声にグレイスは一瞬顔を赤らめたが、レイルークの膝に頭を乗せたままの状態で意地悪そうに微笑んだ。

「……見張り番失格ね。一緒に寝ちゃうんだもの」
「あ、ああ。……ごめん、つい」

 バツが悪そうに笑った。

(うう、反論出来ないよ……)

 グレイスはゆっくりと身体を起こすと、レイルークの隣に座り直した。その顔色は幾分マシになった様だ。

(少しは気休めになったのなら、いいんだけど)


 グレイスを見つめるレイルークを、同じくらいジッと見つめいたグレイスだったが。

 突然、レイルークの頬に唇を落とした。


(?!?!)


 突然の予想外な出来事に、岩のように硬直してしまう。
 そんなレイルークを見て、グレイスは頬を赤らめながら微笑んだ。
 
「……少しだけど眠れたお陰で、大分楽になったわ。……ありがとう、レイルーク様」
「い、い、いえ、ど、どう致し、まして……」

 頬に口づけられたレイルークは顔を真っ赤にしながら、しどろもどろ答えた。

(あわわわわわ! は、初めて女の子に、キ、キ、キスされちゃったよ……!!)

 グレイスは立ち上がると、握手を求めるようにレイルークに手を伸ばす。
 レイルークは無意識のうちにその手を握る。するとそのまま引っ張られて、強制的に立ち上がった。

「ねえ、レイルーク様。私の事はグレイスで良いわ。……それと。改めて、これから宜しくね?」
「こ、こちらこそ宜しく……グレイス」

「ふふ。さ、早く戻ろう? レイルーク様の父親が、本気で憤怒してしまう前に」
「そ、そうだね。少し急ごうか」


(……確かに。時間、かかり過ぎたかも……もしかしたら宮殿は血の海かもしれない……)

 グレイスをエスコートしながらも、少し急ぎ足で帰る事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか
児童書・童話
過去のある出来事から、空手や合気道を習うようになった私。 そして、いつしか最強女子と言われるようになり、 男子が寄りつかなくなってしまった。 中学では恋がしたいと思い、自分を偽って 学校生活を送ることにしたのだけど。 ある日、ひったくり犯を撃退するところを クラスメイトの男子に見られてしまい……。 「お願い。このことは黙ってて」 「だったら、羽生さん。 俺のボディーガード兼カノジョになってよ」 「はい!?」 私に無茶な要求をしてきた、冴えないクラスメイトの 正体はなんと、大財閥のイケメン御曹司だった!? * * * 「ボディーガードなんて無理です!」 普通の学校生活を送りたい女子中学生 羽生 菜乃花 × 「君に拒否権なんてないと思うけど?」 訳あって自身を偽る隠れ御曹司 三池 彗 * * * 彗くんのボディーガード兼カノジョになった 私は、学校ではいつも彼と一緒。 彗くんは、私が彼のボディーガードだからそばにいるだけ。 そう思っていたのに。 「可愛いな」 「菜乃花は、俺だけを見てて」 彗くんは、時に甘くて。 「それ以上余計なこと言ったら、口塞ぐよ?」 私にだけ、少し意地悪で。 「俺の彼女を傷つける人は、 たとえ誰であろうと許さないから」 私を守ってくれようとする。 そんな彗くんと過ごすうちに私は、 彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていた──。 「私、何があっても彗くんのことは絶対に守るから」 最強女子と隠れ御曹司の、秘密の初恋ストーリー。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

処理中です...