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第一章
第19話 壁ドン
しおりを挟むその後──俺たちは、今後のコラボ予定などを立てるべく、話し合いをした。
「協力系にするのも楽しそうだよな!」
「そうだね。あとリスナーさんを混ぜて参加型にしても面白そう」
同い歳の配信者友達など、今まで一人も居なかったからか。ノーキとの会話は思っていたよりも……いや、ものすごく弾んだ。
こうして話してみると、ノーキが配信のことをとてもよく考えているのが分かる。ライバル視していながらも、そんな彼の真面目さに改めて感心してしまった。
話が盛り上がるにつれて、途中からズルズルと話が脱線することもあったが──やっぱり同じ配信者だからか、ノーキとは趣味が合い、気付けば何時間も話してしまった。
「いや~! まさか、光輝とこんなに趣味が合うなんてな。会えてよかった、最高!」
「うん。オレも話してて凄く楽しかった」
気がつけば夕方になっていた。そろそろ帰ろうとスマホに目を向け、立ち上がろうとする。その時だった。
「ねえ、累は顔出しとか考えてる?」
ノーキが急に質問してきたため、俺は「へ?」っと変な声を出してしまったかもしれない。
「んー顔出し……の予定はないなあ。俺……イケメンじゃないし」
というのは建前で、本音は自信が無いからの一点張りだった。平々凡々で陰キャで、人と目を合わせてまともに話せない俺が、大勢の視聴者に顔を晒すなんて言語道断だ。
しかしノーキは、俺の回答が意外だったのか──こてん、と首を傾げながら言った。
「?? 累は可愛いよ。なんでそんなに可愛いのに顔出ししないのか不思議だなって思ったんだ」
「……はっ? 俺? か……可愛くねえよ? なんだよ光輝、急に何言い出すかと思えば……。そ、そう言う光輝はどうなんだよ」
ノーキがあまりに平然と言うから、顔が熱くて仕方がない。
俺は動揺を悟られないようそっぽを向くと、話の内容をすり替えて尋ねる。
「うーん。オレは、登録者がいい感じになったら出そうかなって」
「いいじゃん! 俺は勇気ないから一生出来ないと思うけど、光輝はそれでいいと思う!」
あ、やばい。つい素の自分で返事をしてしまった。俺は慌てて作り笑いを浮かべると、何とか場を凌ごうと取り繕う。
そんな慌ただしい俺の姿に、ノーキはくすり、と笑みを零している。
「ありがとう。でもオレ、累がこんなに可愛いのに自分を過小評価してるの勿体無いと思うよ」
「え……???」
頭に?を浮かべる俺とは裏腹に、ノーキはなぜかトコトコと俺の近くまで歩み寄ってくる。無言のイケメンに顔を近付けられ、混乱のあまり顔が真っ赤になる俺とは裏腹に。
ノーキは俺の頬に手をあてると、真剣な表情で言ったのだった。
「累は、オレが今まで会ってきた人の中で一番可愛いよ」
「ちょっ……光輝さん……?」
まるで告白されているような甘い雰囲気に耐えきれず、俺の心臓がうるさく騒ぎ出す。もう意識を保っているのさえやっとだ。
なのにノーキは……瀕死の俺に追い打ちをかけるよう言葉を続けた。
「あとね、累。さっきオレが料理あんまりしないのバレちゃった時、『ダサいとこ見せて恥ずかしいな』って思ったけど──でも、そこから累ともっと距離が縮んだ気がして、嬉しかったんだ」
照れくさそうに述べるノーキに、俺は何やら嫌な予感を感じる。
「あー……秘密を共有したり、意外な一面を見たりすると距離が縮まるっていうよな。って……ん? 光輝? なんでこんなに距離が近いの!?」
何故かさっきよりも急接近され、俺はついに逃げ場のない壁に追い詰められてしまう。目の焦点が合わず、パニック状態になる俺を、ノーキは綺麗な表情で見つめていた。
「そっか。秘密の共有か……それじゃあもっと仲良くなるために、本当は言うつもり無かったけど言うね」
震える俺を予想に、ノーキは壁にそっと手を付けて、恐ろしいほどの笑みを浮かべる。
「え? なになに怖いよ……?」
ていうか……なんで壁ドン? なんでこんな近いんだよ!?
互いの視線が交差し、身体中の血が沸騰しそうになる。意味がわからず不安になる俺に対して、次の瞬間──ノーキは、はっきりこう言ったのだった。
「累って俺と同じ高校の二年だよね? この前何回か、オレと廊下でぶつかった」
あっ……やべぇ終わった。全部バレてた!!!!!!!
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