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第一章
第18話 あーん
それから俺は、ノーキが料理する様子を横でずっと覗いていた。
「累、嫌いな食べ物ある?」
黒いエプロンを身につけたノーキが尋ねてくる。彼のこのレア姿を見れるのは、きっと自分くらいだろうと思うと……なんだか胸がどきどきしてくる。
「嫌いなものない! 全部好き!」
「良かった。じゃあ、頑張るから見ててね」
「おう!」
そうして料理を始め ──開始から数分後。ノーキは俺が思っていたより、何倍も手際よく料理していった。なんなら、包丁の使い方も俺より上手いようだった。
パカッと、卵を片手で割った時は、さすがの俺も目を輝かせずにはいられなかった。
「光輝、卵片手で割れるのか? かっけえ!」
「これも練習した。累に褒められたから練習しといて良かった」
ぎゅんっと、また心臓が痛くなった。何故だろう、ノーキの笑顔を見ると無性に心臓が痛くなる。
俺がそんなことを考えているうちに、料理はもう終盤に差し掛かっていた。
美味しそうなチキンライスの上に、熱々の卵が置かれる。オムレツ状になっているソレの中心部に、ノーキは包丁で直線を引くように軽く切りとる。
すると──
「おお! やばっ、めっちゃ美味そう!」
とろとろの卵がのった、極上オムライスの完成した。見事完璧に作り終えたノーキは、嬉しそうにお皿を運んできた。
そして食卓テーブルの上にオムライスを置き、自信ありげに言ったのだった。
「はい。食べて、累」
「おう! いただきます!」
俺は両手を合わせるなり、ノーキに作ってもらったオムライスをさっそく口に運ぶことにする。さあ、味はどうだろう?
「ん! めっっちゃ美味い!!」
本当に、お世辞抜きで最高に美味かった。こんな美味しいオムライスは初めてだと、満面の笑みで答えれば──ノーキは「よかった」と嬉しそうに笑ってくれた。
しかし夢中で食べ進めていた末、俺はふと、あることに気が付く。
……まてよ、そういえば、俺だけが食べててノーキは見てるだけじゃないか!
ノーキはモグモグと食べ進める俺の姿を楽しそうに見つめていたが……俺だけいただくのは流石に申し訳ない。だから俺は、オムライスを一口すくって言ったのだった。
「なあ、光輝も一口食べれば? せっかく作ったんだからさ! はいっ! あーん」
「え? いいよ、累が食べなよ」
「だって俺ばっかり食べてると申し訳ないだろ? ほらほら、早く口開けろって」
俺がそういうと、ノーキは初めこそ遠慮していたが、やがて恥ずかしそうに口を開けた。
それを良いことに、俺は彼の元へ躊躇無くスプーンを近づける。そしてノーキは、パクっとオムライスを口にしてくれた。
「なっ! 最高に上手いだろ!?」
俺が作ったわけじゃないのに、自慢げに言ってしまった。
「うん。凄く美味しい」
目元を緩ませ、ノーキは俺を見る。
爽やかで綺麗な彼の笑顔に──俺はまたしても、どきっとしてしまった。
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