紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第九章 錬金術師とパラサイト

オルニアルからの依頼

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 首都カラッサの研究所敷地内で薬を取り込んだ健太郎けんたろうは、人工降雨装置内で薬を複製、雨としてカラッサ周辺に降らせる事に成功した。

 いや、成功事態は喜ばしい事だけれども、薬の原材料とか何処から調達してるんだよ。

 もうもうと雲を生みながら健太郎は自らの体にツッコミを入れた。
 もしかしたら、四次元ポケット的な物に材料を貯め込んでいるのかしらん、そんな事を考えて何だか頭が痛くなってきた健太郎にミラルダが声を掛ける。

「ミシマ、アキラに調べてもらったら、降ってる雨は間違いなく自分が作った薬と同じ成分だってさ」
「シュゴーッ」

 そりゃ良かった。

 健太郎はそう答えながらも、この機能が少し怖くなった。

 水や今回の様な薬ならいい。だがもし漏斗に入れられたのが毒物だったら……そしてそれに気付かずゴーサインを出してしまったら……。

 今の体のどの力も色々危険だけど、人工降雨装置モードはこの一件が片付いたら封印だな。

 そう心に決め、一通り雲を吐き出し終わった健太郎は人型モードに姿を変えた。
 ちなみに人型モードに戻った健太郎を見て、研究所の庭にやって来たアキラがパニックを起こした。
 彼の心の傷はかなり根深いようだ。

「コホーッ」

 ごめんね、アキラ。


■◇■◇■◇■


 薬の雨を降らせることに成功した健太郎達は、カラッサに集まる被害状況を元に各地を巡り、雨を降らせていった。
 まず初めに被害の大きかったオルニアル西部、ベントを中心に雨を降らせ寄生された者達から寄生体を排除した。
 その事で寄生体に乗っ取られていた者で浸食の程度が深かった者については、寄生体から解放された事で多臓器不全を起こし死亡。
 しかし、程度の軽かった者は後遺症は残るものの、少なからず助かった者もいた。

「ミシマさん、ミラルダさん、ありがとうございます。あなた達のおかげでベントの街は救われました」



 共に戦った事で顔なじみとなった守備隊の隊長が、街のそこかしこで倒れている寄生体に乗っ取られた人々を見て、厳しい表情のまま敬礼して謝意を伝える。

「コホー……」

 被害を食い止めただけで、助けられた訳じゃないから……。

 ミラルダが健太郎の言葉を隊長に伝えると、彼は唇を噛んで、それでもと顔を上げた。

「それでも、あなた達のおかげで、この街はまたやり直す事が出来ます」
「コホー……コホーッ!」

 やり直すか……そうだよな、人は前に進む事しか出来ないもんなッ!

 健太郎は隊長にカメラアイを向け、深く頷きギュッと親指を立てた手を突き出した。
 それを見た隊長も健太郎を真似て親指を突き出す。

「おい、こいつら何処に運べばいいんだ?」
「ああ、ありがとうございますッ! その人達はこの先の病院へ運んで下さい。白い大きな建物ですからすぐわかりますよ」
「病院、白い大きな建物だねッ」
「この先か……パム、運んでいる者が瓦礫に引っ掛からない様に引き続き注意を頼む」
「了解だよッ」

 ギャガンとグリゼルダ、それにパムは野外にいて薬の雨を浴びた寄生体犠牲者の中で、まだ息がある者達を回収していた。
 グリゼルダが浮遊魔法で犠牲者を浮かせ、ギャガンが護衛を、パムがグリゼルダが浮かせた者達が瓦礫等で怪我を負わない様に全体を見て、危ない時は声を上げ、時には自分で押して瓦礫に当たらない様にしていた。

 脳に根を伸ばされた者の中には意識障害を起こしている者もいたが、それでもまだ生きている者を見捨てる事は健太郎達もそしてベントの街の住民達も選択出来なかった。

 彼らもこの街で、オルニアルという国で生きて来た人間に変わりはないのだ。

「コホー……」

 俺の力でどうにか出来れば……。

「また、自分だけでやろうとしてるのかい?」
「コホーッ」

 だって、雨だって降らせる事が出来たんだ。治す事だって……。

「そいつは多分あんたの仕事じゃないんだよ……そうだ、カラッサに戻ったらアキラに相談してみようか?」
「コホー?」

 アキラに?

「ああ、グリゼルダの話じゃアキラは錬金術師として人の体の治療も研究していたみたいなんだ。後遺症の軽減も出来るかもしれない。それに元々、こんな事になったのはアイツが寄生生物なんて物を作った事が原因だからね」
「……コホー……」

 ……そうだな……治ればいいな。

「だね」

 その後も健太郎達は各地を巡り、寄生体は順調に駆逐されていった。

 報告のあった地域に薬の雨を降らせ終え、ようやく一息ついた、そんな時、ミラルダの持っていた水晶球に通信が入る。

「聞こえるかね?」
「あ、はいはい。こちらミラルダ」
「君がブラックウッド公爵が言っていた凄腕冒険者のリーダー、ミラルダか」
「凄腕冒険者……そんなモノになった覚えはないけど、たしかにあたしゃミラルダだよ。それであんたは?」
「私はオーグル・ランデルマン。今回の事態で臨時で議員長官をやっている政治家だ」
「議員長官って……確かこの国じゃ一番偉い人じゃ……」

 ミラルダがそう言って首を捻ると、隣にいたグリゼルダが頷きを返した。

「それであっている、この国は上級錬金術師が国政議員を務め国を運営している、議員長官はその国政議員の長だ」
「んで、その偉い長官が一体何の用だい?」
「……この国の北西、湖と草原が多い湖水地方で、眠っていたベヒモスが目を覚ましたと報告があった」
「何、ベヒモス……トラスの叙事詩にもある伝説の巨獣だな……」

 グリゼルダはベヒモスと聞き、表情を明るくしたがその一瞬後にはレベッカの事を思い出し、表情を曇らせていた。

「ねぇねぇ、ギャガン、グリゼルダは何で残念そうなの?」
「パム、世の中にゃあ、知らなくていい事もあんだよ」
「うーん、そう言われると余計に聞きたくなるねぇ」

 ギャガン達のやり取りを聞き苦笑を浮かべながら、ミラルダはオーグルに続きを促す。

「それでベヒモスがどうしたのさ。ありゃ確かに迷惑な魔物だけど、基本、歩くか眠るかだけだろ?」
「……真っすぐにカラッサに向かっている。しかもベヒモスが移動した地域で再度、寄生体の被害が増えているんだ」
「まさか……行方不明だったシリンダーのッ!?」
「寄生体を操っていたアウルという粘菌だな。報告を受けて我々もその可能性が高いと判断した」
「……私達にどうして欲しいんだい?」
「雨をベヒモスにぶつけてみて欲しい。それで巨獣から寄生体を排除出来れば、被害を最小に出来るかもしれん」
「コホーッ」

 分かった、やろう。

「いいのかいミシマ? ベヒモスは生きた災害って呼ばれれて、あんたでも危険かもしれないよ?」
「コホー……」

 あいつを取り逃がしたのは俺達だしな……それに人が死ぬのはもう見たくないよ……。

「そうだね……あたしはミシマと一緒に行くとして、みんなはどうする?」
「あん? お前らが行くなら、行くに決まってんだろ?」
「当然だ。仲間だろう、私達は」
「だねだね。まぁ、ベヒモス相手に何が出来るって訳でもないだろうけど……」
「……決まりだね」

 ミラルダは仲間の顔を順繰りに眺めてから、掌の上の水晶球に視線を落とした。

「オーグルさん、その依頼、たしかに引き受けた」
「そうか……感謝する。現状でベヒモスはカラッサの北西、千キロを南東に向かい進行中。軍を派遣しベヒモスの進行を押さえようとはしているが、効果は出ていない。頼む、何とか奴を止めてくれ」

 憔悴した様子のオーグルにミラルダは静かに頷きを返した。
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