3 / 29
第三話 人生のシナリオは、生まれた時に渡される
しおりを挟む
「アイラ、この子らに何か食事を与えたい。用意してくれるかい」
私は、隣にいるであろう透明な彼女にそう言う。
やるべきことが次々と頭に浮かんでくる。懐かしい感覚だ。なにせ引退して以来、良くも悪くも平静な日々を送っていたので、やるべき事など食料の調達くらいなものだったのだから。
「君達、名前は?」
まずは、と、名前を聞いてみる。
「名前は……俺がが01-3512で、この子は01-3513です」
聞き方を間違えてしまった。この子らが今言ったのは、奴隷の首輪に書かれている識別番号だ。上二桁は管理国を示し、下四桁は個体番号となっている。01というのはザインナイツ王国を示す数字なので、この子らは王国の所有物という事が分かる。
奴隷は、国によって管理されている。
食うに困ったため、住んでいた国が滅ぼされたため、一晩の酒代欲しさに親に売られたため……上げれば切りがない致し方ない理由のために、奴隷に身を落とした人間は少なくないが、多くも無いのだ。特に昨今は戦争がめったに起きず、敗戦奴隷を獲得する機会が減ったこともあり、鉱山や大規模農園での人手不足が騒がれて出している。
そのため、奴隷の管理を国で行い、無意味な奴隷の消費をしなくて済むように監視しているのだ。
「首輪についている番号では無く、両親から授かった名前だよ」
かつて宰相だった頃に行った政策によって、奴隷達に番号を割り振った影響で、名前が失われているとは思わなかった。管理する側としては、番号というのは何かと便利なのだが、名前がそのまま番号というのは悲しい。名前とは、命の次に親から貰う一生ものの大切な宝なのだから。
「……そんなものありません。僕達は奴隷になるために生まれてきたから」
私は、その一言で全てを察した。
繁殖奴隷―――奴隷と奴隷を交配させて生ませた、奴隷になるために生まれる子供。この子らは、まさに奴隷になる為に、この世に生を受けたのだ。
国際法上は、人間は元々平等に天から創り出されたものなので、奴隷の子供だからといって、むやみに奴隷にしてはならず、仮に奴隷同士の間に子供が産まれたら、孤児院で人間として育てる事になっている。
本当はそんな人道的な理由でなく、奴隷を増やし過ぎると反乱の恐れがあることと、今持っている奴隷一体あたりの価値が下がることを嫌った各国貴族どものために創られた法律なのだが……まあとにかく、法律で奴隷を家畜のように殖やす事は禁止されている。
だが、実際には使い潰せる安い労働力を得るために、目の前にいるこの子達のように名前もない生まれながらの奴隷が数多く存在しており、それをどの国も事実上黙認している。
一部貴族からは非人道行為として非難されているが、何よりも資本家達がそれを望んでいる。だから、繁殖奴隷と勘付かれていようとも、首輪さえ付ければ正式な奴隷として認められてしまう。
「そうか、わかった。取り敢えず中に入りなさい」
かけるべき適切な言葉が見つからず、私はこの子らの無垢な告白を心に留めることしかできなかった。
私の心中を知る由もない子供達は、おずおずと私の言葉に従い家の中に入ってきた。少し体が震えているのが見て取れる。やはり、そう簡単に人間への不信感は拭えないらしい。
こればかりは慣れるまで待つしかない。心の傷に効く薬も魔法もないのだから。
私は、隣にいるであろう透明な彼女にそう言う。
やるべきことが次々と頭に浮かんでくる。懐かしい感覚だ。なにせ引退して以来、良くも悪くも平静な日々を送っていたので、やるべき事など食料の調達くらいなものだったのだから。
「君達、名前は?」
まずは、と、名前を聞いてみる。
「名前は……俺がが01-3512で、この子は01-3513です」
聞き方を間違えてしまった。この子らが今言ったのは、奴隷の首輪に書かれている識別番号だ。上二桁は管理国を示し、下四桁は個体番号となっている。01というのはザインナイツ王国を示す数字なので、この子らは王国の所有物という事が分かる。
奴隷は、国によって管理されている。
食うに困ったため、住んでいた国が滅ぼされたため、一晩の酒代欲しさに親に売られたため……上げれば切りがない致し方ない理由のために、奴隷に身を落とした人間は少なくないが、多くも無いのだ。特に昨今は戦争がめったに起きず、敗戦奴隷を獲得する機会が減ったこともあり、鉱山や大規模農園での人手不足が騒がれて出している。
そのため、奴隷の管理を国で行い、無意味な奴隷の消費をしなくて済むように監視しているのだ。
「首輪についている番号では無く、両親から授かった名前だよ」
かつて宰相だった頃に行った政策によって、奴隷達に番号を割り振った影響で、名前が失われているとは思わなかった。管理する側としては、番号というのは何かと便利なのだが、名前がそのまま番号というのは悲しい。名前とは、命の次に親から貰う一生ものの大切な宝なのだから。
「……そんなものありません。僕達は奴隷になるために生まれてきたから」
私は、その一言で全てを察した。
繁殖奴隷―――奴隷と奴隷を交配させて生ませた、奴隷になるために生まれる子供。この子らは、まさに奴隷になる為に、この世に生を受けたのだ。
国際法上は、人間は元々平等に天から創り出されたものなので、奴隷の子供だからといって、むやみに奴隷にしてはならず、仮に奴隷同士の間に子供が産まれたら、孤児院で人間として育てる事になっている。
本当はそんな人道的な理由でなく、奴隷を増やし過ぎると反乱の恐れがあることと、今持っている奴隷一体あたりの価値が下がることを嫌った各国貴族どものために創られた法律なのだが……まあとにかく、法律で奴隷を家畜のように殖やす事は禁止されている。
だが、実際には使い潰せる安い労働力を得るために、目の前にいるこの子達のように名前もない生まれながらの奴隷が数多く存在しており、それをどの国も事実上黙認している。
一部貴族からは非人道行為として非難されているが、何よりも資本家達がそれを望んでいる。だから、繁殖奴隷と勘付かれていようとも、首輪さえ付ければ正式な奴隷として認められてしまう。
「そうか、わかった。取り敢えず中に入りなさい」
かけるべき適切な言葉が見つからず、私はこの子らの無垢な告白を心に留めることしかできなかった。
私の心中を知る由もない子供達は、おずおずと私の言葉に従い家の中に入ってきた。少し体が震えているのが見て取れる。やはり、そう簡単に人間への不信感は拭えないらしい。
こればかりは慣れるまで待つしかない。心の傷に効く薬も魔法もないのだから。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる