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第二章:契約結婚? いえ、雇用関係です!(7)
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「興味ないって? 結婚したその日のうちにヤるとか、そういった情報をオレに流したやつは誰ですかね?」
間違いなく目の前の男だ。そしてその言葉を鵜呑みにして、彼女に迫ったら魔法でぶっ飛ばされた挙げ句、チャールズにもこっぴどく説教された。
「はぁ? そんなの一般常識だろ? 結婚したんだ。何が悪い?」
「心が伴わない行為は強姦と同じだと、チャールズからきつく叱られたのですが? お前のせいだろ!」
「それも常識だろ? 求めて拒まれたらあきらめろ! 先に彼女の心をつかめ! って、何? お前、イリヤ嬢を襲ったの? え? お前が? そして、拒まれた? お前たちは契約結婚みたいなものだろ?」
クライブは何も答えていないというのに、なぜか昨夜のことが知られている。
だが、何を言っても、彼は都合よく解釈するにちがいない。
「……これだから、ど――」
「おい。それ以上言うなら。マリアンヌは二度とお前に会わせない」
エーヴァルトは言いかけた言葉を、素直に呑み込んだ。
「ごめんなさい」
マリアンヌの効果は絶大であった。急にエーヴァルトはしおらしくなる。
クライブは目の前の書類の山に、黙って手を伸ばす。
最近、増えているのが魔物討伐の依頼である。昔から魔物はちょこちょこと出現していたが、やはり一年前の時空のゆがみが確認されてからは、その数がぐっと増えているように思える。
「ところで、どうする予定ですか? これ……」
依頼には全部応えたいが、それをこなすだけの人がいないというのが現状である。
「困ったよね。被害のひどいところには、騎士団とか魔法使いたちを派遣しているけど、そろそろ追いつかないんだよね」
そのための聖女召喚だったのだ。そしてそれは成功した。聖女が赤ん坊だったということを除いては。
「……マリアンヌは聖女なのだろう?」
「赤ん坊ですが」
クライブは眼鏡を押し上げながら答える。
「赤ん坊だけど、聖なる力はもっているのだろう?」
「聖なる力か魔力かはわかりませんが、少なくとも部屋一つ破壊するだけの力はお持ちかと……」
「困ったね」
「困りましたね」
聖女はいるが、聖女の役目が務まらない。
「マリアンヌの成長を待っていたら、この国は……」
「どうなるかはわかりませんね」
それはあの召喚の儀に立ち会った者たちの誰もが思っている。みな、口には出さないだけで。
だけど、もう一度、召喚の議を行うことはできない。聖女は、同時に二人は存在しないと言われているからだ。
異界からやってくる聖女は、一人のみ。
「もしかして……マリーを異界に戻したら、新しい聖女がやってくる?」
クライブはそう考えた。
「駄目だ……駄目だ、駄目だ、駄目だ。駄目に決まっている。マリアンヌを異界に戻すなど、あってはならない」
エーヴァルトがご乱心である。妄想の酷い男なのだ。仮に、本当にマリアンヌがいなくなったとしたら、彼は国王の職務を放棄するかもしれない。あってはならないことだが、あり得そうで怖い。
それに、マリアンヌを本当に異界に戻せるかどうかもわからない。そして、二度目の召喚の議を行ったとしても、必ずしも成功する保証もない。
それよりも何よりも、クライブ自身が、それをどこかで拒んでいた。
マリアンヌがいなくなったら、イリヤもあそこにいる意味がなくなるだろう。それが気になったのだ。
「自警団にも頼るか、もしくは仕事を探している者をそれとなく使うか、ですかね」
クライブの呟きに、エーヴァルトも思案を巡らせているようだ。
「追加予算。考えたほうがよさそうだな」
「そうですね。各地の魔物討伐費用、これは追加で必要でしょう」
「そうなるな……」
エーヴァルトが頭を抱え込んだ。
間違いなく目の前の男だ。そしてその言葉を鵜呑みにして、彼女に迫ったら魔法でぶっ飛ばされた挙げ句、チャールズにもこっぴどく説教された。
「はぁ? そんなの一般常識だろ? 結婚したんだ。何が悪い?」
「心が伴わない行為は強姦と同じだと、チャールズからきつく叱られたのですが? お前のせいだろ!」
「それも常識だろ? 求めて拒まれたらあきらめろ! 先に彼女の心をつかめ! って、何? お前、イリヤ嬢を襲ったの? え? お前が? そして、拒まれた? お前たちは契約結婚みたいなものだろ?」
クライブは何も答えていないというのに、なぜか昨夜のことが知られている。
だが、何を言っても、彼は都合よく解釈するにちがいない。
「……これだから、ど――」
「おい。それ以上言うなら。マリアンヌは二度とお前に会わせない」
エーヴァルトは言いかけた言葉を、素直に呑み込んだ。
「ごめんなさい」
マリアンヌの効果は絶大であった。急にエーヴァルトはしおらしくなる。
クライブは目の前の書類の山に、黙って手を伸ばす。
最近、増えているのが魔物討伐の依頼である。昔から魔物はちょこちょこと出現していたが、やはり一年前の時空のゆがみが確認されてからは、その数がぐっと増えているように思える。
「ところで、どうする予定ですか? これ……」
依頼には全部応えたいが、それをこなすだけの人がいないというのが現状である。
「困ったよね。被害のひどいところには、騎士団とか魔法使いたちを派遣しているけど、そろそろ追いつかないんだよね」
そのための聖女召喚だったのだ。そしてそれは成功した。聖女が赤ん坊だったということを除いては。
「……マリアンヌは聖女なのだろう?」
「赤ん坊ですが」
クライブは眼鏡を押し上げながら答える。
「赤ん坊だけど、聖なる力はもっているのだろう?」
「聖なる力か魔力かはわかりませんが、少なくとも部屋一つ破壊するだけの力はお持ちかと……」
「困ったね」
「困りましたね」
聖女はいるが、聖女の役目が務まらない。
「マリアンヌの成長を待っていたら、この国は……」
「どうなるかはわかりませんね」
それはあの召喚の儀に立ち会った者たちの誰もが思っている。みな、口には出さないだけで。
だけど、もう一度、召喚の議を行うことはできない。聖女は、同時に二人は存在しないと言われているからだ。
異界からやってくる聖女は、一人のみ。
「もしかして……マリーを異界に戻したら、新しい聖女がやってくる?」
クライブはそう考えた。
「駄目だ……駄目だ、駄目だ、駄目だ。駄目に決まっている。マリアンヌを異界に戻すなど、あってはならない」
エーヴァルトがご乱心である。妄想の酷い男なのだ。仮に、本当にマリアンヌがいなくなったとしたら、彼は国王の職務を放棄するかもしれない。あってはならないことだが、あり得そうで怖い。
それに、マリアンヌを本当に異界に戻せるかどうかもわからない。そして、二度目の召喚の議を行ったとしても、必ずしも成功する保証もない。
それよりも何よりも、クライブ自身が、それをどこかで拒んでいた。
マリアンヌがいなくなったら、イリヤもあそこにいる意味がなくなるだろう。それが気になったのだ。
「自警団にも頼るか、もしくは仕事を探している者をそれとなく使うか、ですかね」
クライブの呟きに、エーヴァルトも思案を巡らせているようだ。
「追加予算。考えたほうがよさそうだな」
「そうですね。各地の魔物討伐費用、これは追加で必要でしょう」
「そうなるな……」
エーヴァルトが頭を抱え込んだ。
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