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第六章:そのお仕事、お引き受けいたします(8)
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「聖女様が現れたという話は、あっという間に広がります。ですが、そうなれば本当に現れたのか? 実在するのか? と不安になる者も出てきます。そのためにも、その姿をみなの前にお見せする必要があるのです」
そういうものなの? という意味を込めて、クライブを見れば、彼はそういうものだと言わんばかりに大きく頷いた。
「では、我々は陛下と聖女様のお披露目の儀について話し合います。イリヤ嬢は、今日は、疲れたでしょう? 帰ってゆっくりとお休みください。今後は神殿にも足を運んでもらうようになりますが、それは閣下を通して連絡いたします」
わざわざクライブを通すと発言したのは、彼が睨みをきかせていたからだ。彼がなぜこのような態度を取るのか、イリヤにはさっぱりわからない。
神官長と魔法使いたちに挨拶をして、イリヤはクライブと共に部屋を後にする。マリアンヌはいつものライブラリーで遊んでいることだろう。イリヤがいないところで、暴れていないか心配になったが、そうなったときには誰かがすぐに呼びにくるはずだ。
ライブラリーの扉の前で立ち止まると、マリアンヌのきゃっきゃとした楽しそうな声が聞こえてきた。
「失礼します」
扉を叩いて入室すると「まんま~、ぱっぱ~」とマリアンヌはおすわりしながら両手を振り回している。
その姿があまりにも愛らしくて、クライブと顔を見合わせた。
「閣下。今、マリアンヌがママって呼びましたよね?」
「ああ、パパとも呼んだな」
これではエーヴァルトと同じではないかと思いつつも、やはり親として認められたような気がして嬉しさを隠しきれない。
「マリー。ぼくはアルベルト。アルってよんで」
アルベルトが対抗心を剥き出しにしてきた。こういうところは、父親のエーヴァルトにそっくりである。
「あ~あ~」
「いま、アルってよんだよね?」
聞く者によってはそう聞こえたかもしれない。
「そうですね、アルベルト様」
イリヤは微笑みながら答えた。
「マリーは、お利口ね。みんなのことが、わかるようになったのね」
マリアンヌの顔をのぞきこむと、抱っこしてといわんばかりに両手を広げている。イリヤがマリアンヌを抱き上げると、アルベルトはつまらなさそうに見上げてきた。
「アルベルト様も抱っこしてほしいのですか?」
イリヤが尋ねると、アルベルトは恥ずかしそうにもじもじとする。
「では、私が抱っこしてもよろしいですか?」
そう言ってかがんだのはクライブである。すると、アルベルトは余計にもじもじし始めた。
「失礼します」
クライブがアルベルトを抱き上げる。
マリアンヌは自分の目の高さと同じくらいになったアルベルトに手を伸ばす。
クライブもそれに気づいて、イリヤの隣に寄り添った。抱っこされている二人は、何が楽しいのか手をつないで、きゃっきゃと笑っている。
「あれですかね? フォークが転がっても面白い年頃というものでしょうか」
イリヤの言葉に「そういうものなのか?」とクライブは首を傾げた。
そこへ乱暴に扉を開いて入室してきた人物がいる。
扉の開き方だけで、イリヤにはわかった。やってきた人物は間違いなくエーヴァルトだ。
「クライブ。いつの間に息子を産んだのだ? ってアルじゃないか。なんで君が私の息子を抱っこしている。アル、こちらに来なさい」
そういうものなの? という意味を込めて、クライブを見れば、彼はそういうものだと言わんばかりに大きく頷いた。
「では、我々は陛下と聖女様のお披露目の儀について話し合います。イリヤ嬢は、今日は、疲れたでしょう? 帰ってゆっくりとお休みください。今後は神殿にも足を運んでもらうようになりますが、それは閣下を通して連絡いたします」
わざわざクライブを通すと発言したのは、彼が睨みをきかせていたからだ。彼がなぜこのような態度を取るのか、イリヤにはさっぱりわからない。
神官長と魔法使いたちに挨拶をして、イリヤはクライブと共に部屋を後にする。マリアンヌはいつものライブラリーで遊んでいることだろう。イリヤがいないところで、暴れていないか心配になったが、そうなったときには誰かがすぐに呼びにくるはずだ。
ライブラリーの扉の前で立ち止まると、マリアンヌのきゃっきゃとした楽しそうな声が聞こえてきた。
「失礼します」
扉を叩いて入室すると「まんま~、ぱっぱ~」とマリアンヌはおすわりしながら両手を振り回している。
その姿があまりにも愛らしくて、クライブと顔を見合わせた。
「閣下。今、マリアンヌがママって呼びましたよね?」
「ああ、パパとも呼んだな」
これではエーヴァルトと同じではないかと思いつつも、やはり親として認められたような気がして嬉しさを隠しきれない。
「マリー。ぼくはアルベルト。アルってよんで」
アルベルトが対抗心を剥き出しにしてきた。こういうところは、父親のエーヴァルトにそっくりである。
「あ~あ~」
「いま、アルってよんだよね?」
聞く者によってはそう聞こえたかもしれない。
「そうですね、アルベルト様」
イリヤは微笑みながら答えた。
「マリーは、お利口ね。みんなのことが、わかるようになったのね」
マリアンヌの顔をのぞきこむと、抱っこしてといわんばかりに両手を広げている。イリヤがマリアンヌを抱き上げると、アルベルトはつまらなさそうに見上げてきた。
「アルベルト様も抱っこしてほしいのですか?」
イリヤが尋ねると、アルベルトは恥ずかしそうにもじもじとする。
「では、私が抱っこしてもよろしいですか?」
そう言ってかがんだのはクライブである。すると、アルベルトは余計にもじもじし始めた。
「失礼します」
クライブがアルベルトを抱き上げる。
マリアンヌは自分の目の高さと同じくらいになったアルベルトに手を伸ばす。
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「あれですかね? フォークが転がっても面白い年頃というものでしょうか」
イリヤの言葉に「そういうものなのか?」とクライブは首を傾げた。
そこへ乱暴に扉を開いて入室してきた人物がいる。
扉の開き方だけで、イリヤにはわかった。やってきた人物は間違いなくエーヴァルトだ。
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