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第2章
第29話
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お腹を満たした後は、ショッピング。
熱帯魚ショップ、ペットショップなどにも寄った。
もしかして、理想のデートを聞かれたとき――水族館や動物園の名前が出たからか?
もしも本当にそうなら、とても安直だと思う。
最後はプラネタリウム。
頭上に、6月の夜空が広がった。
スピーカー越しの声が、会場全体に浸透する。
――明日から、平年よりもかなり遅く梅雨入りが始まると、耳の奥に響き、鼓膜を刺激した。
嫌なことを思い出させる。
綺麗な夜空が、ただの作り物にしか見えなくなった。
――嫌な、時期。
来週には、夏至がくる。
5年前のその日が――全ての始まり。
私は――そう、考えている。
祖母が死んだあの日から、全ては始まったのだ。
6月が嫌いだ。
だって、その日から始まった。
12月が嫌いだ。
だって、その日で終わった。
6月の誕生星座。
双子座の星。
双子座の話。
神と人から生まれた、双子のお話。
生まれる前はひとつで、生まれた後はふたつになった。
人の血を引く兄と、神の血を引く弟。
ふたつでひとつ、ひとつでふたつ。
二人は大変仲が良く、一緒に育ち、共に戦場を駆け巡る。
しかし、兄が流れ矢にあたって死んでしまう。
だって、彼は人間なのだから。
人である彼の魂は天へと還っていく。
いつも一緒にいた弟は深く嘆き悲しんだ。
だって自分は――神の血を受けついだ不死身なのだから。
死ぬことのできない自分では、永遠に逢うことはない。
ひとつがふたつになったじてんで、ふたつがひとつにもどることはありえない。
確かに、同じではなかった。
しかし、ずっと一緒だったのだ。
今まで、離れたことなどない。
だから、神に願った。
『生まれた時から一緒で――何をする時も一緒だった。それならば、死ぬ時も――どうか一緒に』
その願いは叶えられ、二人は星座になった。
嫌な話だ。
凄く、嫌な話だと思う。
二人を好きだった人間は、ただ一人――取り残される。
夜空を見上げ、二人を偲ぶだけ。
上映が終わり、辺りが明るくなった。
ちび助が喧しく音を発する。
それを、言葉に変換することが煩わしい。
上映時間は1時間程。
外へ出たとき、空が曇っていた。
入る前はあれほど天気が良かったのに。
通り雨があったのか、地面が濡れていた。
湿った匂い。
水が浸透し黒く染まった道路を、私は眺める。
隣には――深雪がいる。
触れようと思えば、触れられる距離に彼女はいる。
それなのに、私は触れることができない。
深雪の顔が、いつもより暗い気がした。
それは――私の淀んだ心のせいか、それとも、薄暗い景色のせいか。
「双子座って、冬の星座だったんですねぇ。知らなかったです」
ちび助は空を見上げている。
「だけど今の時期でも、7時から9時の間に西北の空で見つけられるみたいですね。早速今日、探さねばなりませんねー」
「こんな曇り空じゃあ、今日は無理だから」
「え? まだ5時過ぎたばかりですよ? 9時までまだまだ時間があるんですし、きっと大丈夫ですよ」
そう言って、能天気に笑った。
その考えは、正直うらやましいと思う。
深雪はちび助を見て、笑みを浮かべる。
それを見て、私は自分のポケットの中に手を入れた。
「それにしても、ふたご座の話、凄くいいお話でしたね」
そう思えるのは、星になれた側だけだ。
***
再び、電車に揺られる。
駅で、藤宮と別れる前――彼女はスマホを何度も出し入れしたあと、ちらちらと視線を向けてきた。
「何か用?」
中々帰ろうとしない藤宮に私がそう言うと、彼女は何故か私を睨みつける。
そして、嫌味を一言口にしてから帰って行った。
何と、理不尽なことか。
だって、私は何もしていないのだから。
「あーあー、奈々先輩がここまで鈍感だとは思いませんでしたねー」
ちび助はやれやれといった感じで、肩をすくめた。
「あんたにだけは言われたくないんだけど」
私としては、喧嘩をふっかけたつもりなどない。
しかし、言い争いが始まってしまった。
いつもの分かれ道。
別れの言葉を口にしようとしたとき、ちび助が声を上げた。
「やっぱり、今日は星が見られそうですね!」
空に向かって手を伸ばした先――雲の隙間が広がり、夕日が漏れ出している。
しかし、まだまだ曇り空。
「時間はまだまだあります。だからきっと、星を見ることだってできますよ!」
別に、見たいわけではない。
でも、見られないよりは――見えたほうがいいのだとは思う。
私は立ち止まったまま、しばらく空を眺めた。
熱帯魚ショップ、ペットショップなどにも寄った。
もしかして、理想のデートを聞かれたとき――水族館や動物園の名前が出たからか?
もしも本当にそうなら、とても安直だと思う。
最後はプラネタリウム。
頭上に、6月の夜空が広がった。
スピーカー越しの声が、会場全体に浸透する。
――明日から、平年よりもかなり遅く梅雨入りが始まると、耳の奥に響き、鼓膜を刺激した。
嫌なことを思い出させる。
綺麗な夜空が、ただの作り物にしか見えなくなった。
――嫌な、時期。
来週には、夏至がくる。
5年前のその日が――全ての始まり。
私は――そう、考えている。
祖母が死んだあの日から、全ては始まったのだ。
6月が嫌いだ。
だって、その日から始まった。
12月が嫌いだ。
だって、その日で終わった。
6月の誕生星座。
双子座の星。
双子座の話。
神と人から生まれた、双子のお話。
生まれる前はひとつで、生まれた後はふたつになった。
人の血を引く兄と、神の血を引く弟。
ふたつでひとつ、ひとつでふたつ。
二人は大変仲が良く、一緒に育ち、共に戦場を駆け巡る。
しかし、兄が流れ矢にあたって死んでしまう。
だって、彼は人間なのだから。
人である彼の魂は天へと還っていく。
いつも一緒にいた弟は深く嘆き悲しんだ。
だって自分は――神の血を受けついだ不死身なのだから。
死ぬことのできない自分では、永遠に逢うことはない。
ひとつがふたつになったじてんで、ふたつがひとつにもどることはありえない。
確かに、同じではなかった。
しかし、ずっと一緒だったのだ。
今まで、離れたことなどない。
だから、神に願った。
『生まれた時から一緒で――何をする時も一緒だった。それならば、死ぬ時も――どうか一緒に』
その願いは叶えられ、二人は星座になった。
嫌な話だ。
凄く、嫌な話だと思う。
二人を好きだった人間は、ただ一人――取り残される。
夜空を見上げ、二人を偲ぶだけ。
上映が終わり、辺りが明るくなった。
ちび助が喧しく音を発する。
それを、言葉に変換することが煩わしい。
上映時間は1時間程。
外へ出たとき、空が曇っていた。
入る前はあれほど天気が良かったのに。
通り雨があったのか、地面が濡れていた。
湿った匂い。
水が浸透し黒く染まった道路を、私は眺める。
隣には――深雪がいる。
触れようと思えば、触れられる距離に彼女はいる。
それなのに、私は触れることができない。
深雪の顔が、いつもより暗い気がした。
それは――私の淀んだ心のせいか、それとも、薄暗い景色のせいか。
「双子座って、冬の星座だったんですねぇ。知らなかったです」
ちび助は空を見上げている。
「だけど今の時期でも、7時から9時の間に西北の空で見つけられるみたいですね。早速今日、探さねばなりませんねー」
「こんな曇り空じゃあ、今日は無理だから」
「え? まだ5時過ぎたばかりですよ? 9時までまだまだ時間があるんですし、きっと大丈夫ですよ」
そう言って、能天気に笑った。
その考えは、正直うらやましいと思う。
深雪はちび助を見て、笑みを浮かべる。
それを見て、私は自分のポケットの中に手を入れた。
「それにしても、ふたご座の話、凄くいいお話でしたね」
そう思えるのは、星になれた側だけだ。
***
再び、電車に揺られる。
駅で、藤宮と別れる前――彼女はスマホを何度も出し入れしたあと、ちらちらと視線を向けてきた。
「何か用?」
中々帰ろうとしない藤宮に私がそう言うと、彼女は何故か私を睨みつける。
そして、嫌味を一言口にしてから帰って行った。
何と、理不尽なことか。
だって、私は何もしていないのだから。
「あーあー、奈々先輩がここまで鈍感だとは思いませんでしたねー」
ちび助はやれやれといった感じで、肩をすくめた。
「あんたにだけは言われたくないんだけど」
私としては、喧嘩をふっかけたつもりなどない。
しかし、言い争いが始まってしまった。
いつもの分かれ道。
別れの言葉を口にしようとしたとき、ちび助が声を上げた。
「やっぱり、今日は星が見られそうですね!」
空に向かって手を伸ばした先――雲の隙間が広がり、夕日が漏れ出している。
しかし、まだまだ曇り空。
「時間はまだまだあります。だからきっと、星を見ることだってできますよ!」
別に、見たいわけではない。
でも、見られないよりは――見えたほうがいいのだとは思う。
私は立ち止まったまま、しばらく空を眺めた。
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