幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第2章

第28話

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 深雪達と合流し、最後に4人でプリクラを撮って店を後にした。

 ちび助はかなりご機嫌なご様子。ルンルン気分で、商店街を歩いて行く。

 時々、私に向かってニマニマと笑い、煽ってくる。

「さっきから一体なんなのよ、あんたは」
「聞きたいですか? 私のこの喜びの正体を聞いちゃいますか?」

 うざい。かなり、うざい。

「じゃあ、聞かない」
「本当に、奈々先輩は素直じゃないですねー。仕方がないから、教えてあげますよ」

 やれやれ、といった感じ。

 正直、イライラしてくる。

「今、私のスマホの中には色んな深雪先輩がいます。超ー萌え萌えであり、超ー鼻血ものです。とんでもなく――アダルトチックなものでありながら、とても神聖なものです。奈々先輩がその写真を見てしまえば、おそらくは昇天することとなります」
「は? もしかして、18禁コーナーに入ったりした?」

 私は深雪の方に視線を向けた。

「そんなことないからね! 普通の格好だからね!」
「深雪先輩……あれが普通の格好だと言うんですか? あれだけ、私を誘惑したのにですか?」
「言い方!? それ、言い方に問題あると思うよ!」
「そんなことはありません。私の素直な感想です」
「そう思うのは、小春ちゃんだけだからね」
「深雪先輩は本当に謙虚ですねー。私の感覚は世間一般的ですから」

 ちび助は冗談ではなく、本気でそんな戯言を口にした。それを分かったからか、下手に否定も出来ず――深雪は口元をもごもごとさせる。

「私の感覚が間違えていないことを証明しなければならないみたいですねぇ」

 そう言って、ちび助はスマホを取り出した。

「私のスマホの中には、プリクラの写真だけでなく――私が先程、自ら撮った写真が100枚以上存在しています。奈々先輩、ハンカチで鼻を押さえてください。きっと――鼻血が吹き出すことになりますよ」

 ちび助はニヤリと笑みを浮かべる。
 スマホを私の方に差し出す――ところで、深雪に止められた。

 そして深雪はちび助ではなくあろうことか私を睨み、何故か藤宮まで私を責めるような目を向けてくる。

 ちび助がスマホを差し出そうとしたから、反射的に顔を向けただけなのだが……。

 これ、私が悪いのか?



 ***


 
 お昼は、ファミレス。

 混むような時間帯だが、特に並ぶことなく案内される。

 ちび助は窓際に座り、深雪の手を引っ張って隣に座らせた。
 私は向かい側の窓際に座る。
 藤宮は何故か突っ立ったまま、座ろうとしない。

「もしかして、窓側が良かったとか?」
「……そんなこと、あるわけないわ」

 そう言って、藤宮は私の方へ詰めることなく端の方に座る。ソファーが狭いため普通に座ると肘が当たってしまうぐらい窮屈だ。とはいえ、そんな風に明らかに距離を取られると――流石に傷つく。

「目新しさがないんだけど」

 この店を選んだ後輩に、私は文句を言った。先程の恨みと今の苦しみを、ちび助へ押し付けるために。

「皆さんの意見を聞いた上で、ここがベストだと判断したんですー」

 私は鼻で笑った後、メニュー表が2つあるため、深雪と藤宮にそれぞれ手渡した。

「あ、今、鼻で笑いました? 笑いましたよね? 馬鹿にしてるんですか?」

 絡まれた。

 凄く、うざい。

 私はハエを払うように、ちび助に向かって手を動かした。

「むきー! 何ですかその手の動きは! 私が邪魔ですか? 邪魔なんですか!?」

 そんな、いちいち反応されても困る。

 よく疲れないなーと、私は感心してしまった。

 深雪がちび助の頭を撫でると徐々に落ち着きを取り戻していく。

 何故か、深雪は私を非難するような目を向けてきた。これまた、私が悪いのか?

 藤宮は我関せずに、メニュー表を眺めている。かなり、興味深そうだ。

「……もしかして、ファミレス――初めてとか?」

 まさかなーと思いつつも、尋ねてみた。

「そうね、初めてだわ」

 私は驚愕した。
 漫画でよくある、お嬢様あるあるだ。
 まさか、生で拝見するとは思わなかった。
 しかし、ファミレスよりマックのほうが正しいパターンな気がした。

「因みになんだけど、マックって行ったことある?」
「ないわね」

 やはりか――私は舌打ちを打ちたくなった。
 
 ファミレスより、マックのほうが正しい選択だった。つまりは、全て――ちび助が悪い。

 藤宮はページを捲る。

「メニュー表を見て、何か不満とかある?」

 私の言葉に、藤宮は眉を顰める。

「何故?」
「このお値段でまともなものを提供できるとはとても思えないわ――シェフを呼びなさい!」

 ちび助はそう言って、私に向かって指を突きつけた。

「――とか、言いそうな気がするってことですよね? 奈々先輩」

 ちび助は指を下ろすと、深雪が手に持ったメニュー表へ視線を向ける。
 
「あなた、馬鹿なんじゃない?」

 私が言ったわけじゃないのに、何故か私に向かって、藤宮は口にした。

 ――だが、ちび助が言ったこととほぼ同じことを思い浮かべたため、何も言い返すことはできない。



 藤宮はトマトパスタを頼み、口にした。
 実にお手本のような綺麗な食べ方。実に優雅だ。

 私は味の感想を求めたが――

「特に、不満なんてないわ」

 ――と、実にお優しいお言葉をいただいた。

 これは、シェフを呼ぶべきかもしれない。
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