幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第3章

第47話

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 次の試合も勝利した。 

 九条たちはますます熱を持つ。反対に、私は不安しか覚えない。

 別に負けたって構わない。勝てば面倒くさいことになるだけ。なのに、私は心の何処かで――負けたくないと、そう思っている。

 つくづく自分のことなのに、そのような気持ちになる理由が分からない。



 昼ご飯はいつも通りのメンバーで、いつも通りの場所で食べることにした。
 いつものベンチには藤宮が座り本を広げ、その前に広げられたレジャーシートには、私と深雪、ちび助の3人で弁当箱に箸をつける。
 
 正直、九条たちと食べていたら気が休まらないと思う。だから、このメンバーでの食事は、私に多少なりともリラックス効果を与えてくれることだろう。

「さっきも言ったけど、やっぱり奈々ちゃんの試合、凄く良かったよ。格好良かった」

 そう言って、深雪は笑う。

 ちび助はそれを見て、凄く不機嫌そうな顔を私に向けてきた。

 正直、2試合とも――私はただの脇役。だから、そんな風に褒められても、複雑な気分だ。どこか、居心地が悪くなる。

「ありがと。でも、深雪の試合も最高だったじゃん」

 時間の余裕があったため、ちび助と一緒に深雪の試合を観戦した。

 凄い試合だったと思う。

「そうですよ、その通りです。完璧でしたよ、深雪先輩!」

 ちび助は負けじと、拳を奮い立たせてくる。

 そう――完璧な試合だった。

 完璧で――完膚なき敗北を、私たちに見せてくれた。
 
 深雪の相手は、おそらく卓球部だったのだろう。深雪は手も足も出ず、翻弄された。相手は深雪を見て馬鹿にしたように笑う。ちび助が怒り狂うため、口を塞いで止めた。正直――私も駆けつけてぶん殴ってやりたかった。だけど、私は耐えることにした。耐えることにしたのだが、やっぱり我慢できそうにもない。だってあの野郎は、終始――深雪を見て笑い、あまつさえ、私たちまで嘲笑った。だから、ちび助とはどこかのタイミングで――必ず奴を痛い目に合わしてやろうと誓い合った。

「止めて……本当に、止めて」

 消え入りそうな声を出し、深雪は真っ赤になった頬を両手で押さえる。

 駄目だと思う。駄目だと思うのだが――やはり、深雪が恥ずかしがっていると、いじめたくなってくる。

「何をにやにやしているのよ、気持ち悪い」

 藤宮は本から顔を上げ、私を見て罵倒した。

「何それ、もしかして私に言ってる?」
「他に誰がいるって言うのよ」
「そうですよ、奈々先輩! 私の深雪先輩をいやらしい目で見ないでください!」
「そんな目で見るか、あんたと一緒にすんな」
「私はいいんですよ、私は。私だけがこの世界で唯一、深雪先輩をいやらしい目で見ることを許された存在ですから」
「そんなことを許したつもりはないからね!」
「またまたー」

 そう言って、ちび助はにやにやしながら深雪の二の腕を突っつく。

「こいつのほうがきもいと思うけど?」

 私はちび助の方を指差す。

「あなたよりはマシだと思うけれど?」

 ぐっ! これだから、顔面に恵まれた奴は嫌いだ。同じような表情でも、感じ方に違いが生じるのだから!

「奈々先輩、安心してください。藤宮先輩は嫉妬しているだけですから」
「ち、違うわよ!」
「あぁ、なるほどね。そう言うことか」

 私は乗っかることにした。

「違うって言ってるでしょ!」

 私はちび助と目配せしたあと、にやにやしながら藤宮を眺めた。

 彼女はこめかみをピクピクさせた――ような気がする。

 これは流石にやばいかな? とか思ったけど、彼女は怒って何処かに行くことはなく、本の世界に逃げ込んだ。

 ちび助の興味はすぐに深雪の方へと傾き、緩やかな時間が流れ出した。


 時間がきたため、ちび助はレジャーシートを丸める。
 藤宮は本を読んだまま。
 声をかけても、顔を上げることなく声だけで反応する。無視されないだけ、かなりマシだ。
 私たちは、体育館の方へ向かう。
 しばらく歩いたあと、何気なく振り向いた。
 藤宮は顔を上げており、目が合った――ような気がする。彼女は本に向かって、素早く顔を下げた。

 顔を上げていたのは――たまたまの、偶然なのだろう。

 私は少しだけ、思案する。

「悪いけど、先に行ってて」

 私がそう言うと、ちび助は含みのある顔をした。何か言おうとして、止めた。何を言ったって、言い訳にしか聞こえないような気がした。

「うん、分かったよ」

 深雪は特に気にした風もなく、笑顔で言った。

 気にされるのも嫌だが、まったく気にされないのも――何か嫌だ。

 私は複雑な気分を抱えながらも、藤宮の方へ向かった。
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