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匡史はその言葉に記憶を辿った。営業は全部で三つ課がある。しかしソウジなんて名前の人はいなかったような気がする。誰だろう、と答えようとしたその時、いつか聞き流していた優子の言葉が蘇ってきた。池上課長って聡二さんって言うんだって、と言っていた気がする。
「池上、聡二……課長のこと、かな?」
ぎこちなく答える匡史に対し、男の子は嬉しそうに破顔して頷いた。
「ソウジ知ってるんだ。おにいさん」
「ああ、同じ場所で働いてるよ。部下なんだ」
そう言って匡史はしゃがみ込むと、名刺を一枚取り出して名前の上にふり仮名をつけると男の子に差し出した。
「……かなまる、まさちか? マサチカ」
「君は?」
「瑛蒔。ソウジはオレのホゴシャなんだ」
その名前を聞いて、一瞬匡史は眉をしかめた。例の彼氏の名前ではないか。まさか池上がこんなお稚児趣味とも考えられない。となれば、匡史の勘違いを利用して適当にあしらわれていたのだろう。腹が立つ反面、匡史の中に言いようのない寂しさが生まれる。
「そうなんだ。じゃあ、瑛蒔もこっち来たばっかりなのか?」
「うん……」
瑛蒔は頷くと、遠く同じスモックを着た子たちを見つめた。たしかに瑛蒔の真新しいスモックは、どこか寂しげで切なかった。彼だって、みんなと泥だらけになって遊びたいに違いない。
「実は、俺な、魔法使えるんだよ」
「……マサチカ、オレが子供だからってバカにしてんだろ」
眇めた目で見られ、匡史は一瞬怯んだが、ほんとだよ、と笑顔を返す。
「瑛蒔、みんなと仲良くなりたくね?」
「なりたい、けど……もうみんな友達いるし」
「そんなの関係ねーじゃん。仲良しなんて何人居たっていいだろ」
俯いて唇を尖らせる瑛蒔の頭を匡史はがしがしと撫でてから、一言耳元で囁いた。
「なにそれ」
「だから、魔法の言葉。今から使ってこいよ」
背中を押す匡史を振り返り、瑛蒔は不安そうな顔で、ほんとかよ、と言う。匡史が頷いて、ほらほら、と背中を押して砂場まで連れて行くと数人の子供が瑛蒔を見上げた。竦むように瑛蒔が両足に力を入れたのが分かる。
「あ、……あそぼ!」
握り締めた小さな拳を手が真っ白になるまで握りこんで瑛蒔が言い放つ。一瞬の後、見守っていた子供たちは笑顔になって、いいよ、と声を合わせた。
「えーじくんあそぼー。トンネルしようよー」
「あたしとお団子作ろうよー」
子供たちの楽しそうな声に囲まれ、照れたような瑛蒔の姿を確認した匡史は満足気に頷くと公園を出て行った。
「やればできる男じゃん、瑛蒔」
さすが池上の子だな、と思ってから、ふと瑛蒔の言葉を思い出した。
「あいつ、課長のこと保護者って言わなかったか?」
父さん、パパ、父上――どんな呼び方でも父親を示すそれではなく、保護者だった。そういう難しい言葉を使う家もあるかもしれないし、親戚の子かなにかなのかもしれないと思い匡史は気にすることもなくその場を後にした。
「池上、聡二……課長のこと、かな?」
ぎこちなく答える匡史に対し、男の子は嬉しそうに破顔して頷いた。
「ソウジ知ってるんだ。おにいさん」
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そう言って匡史はしゃがみ込むと、名刺を一枚取り出して名前の上にふり仮名をつけると男の子に差し出した。
「……かなまる、まさちか? マサチカ」
「君は?」
「瑛蒔。ソウジはオレのホゴシャなんだ」
その名前を聞いて、一瞬匡史は眉をしかめた。例の彼氏の名前ではないか。まさか池上がこんなお稚児趣味とも考えられない。となれば、匡史の勘違いを利用して適当にあしらわれていたのだろう。腹が立つ反面、匡史の中に言いようのない寂しさが生まれる。
「そうなんだ。じゃあ、瑛蒔もこっち来たばっかりなのか?」
「うん……」
瑛蒔は頷くと、遠く同じスモックを着た子たちを見つめた。たしかに瑛蒔の真新しいスモックは、どこか寂しげで切なかった。彼だって、みんなと泥だらけになって遊びたいに違いない。
「実は、俺な、魔法使えるんだよ」
「……マサチカ、オレが子供だからってバカにしてんだろ」
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「瑛蒔、みんなと仲良くなりたくね?」
「なりたい、けど……もうみんな友達いるし」
「そんなの関係ねーじゃん。仲良しなんて何人居たっていいだろ」
俯いて唇を尖らせる瑛蒔の頭を匡史はがしがしと撫でてから、一言耳元で囁いた。
「なにそれ」
「だから、魔法の言葉。今から使ってこいよ」
背中を押す匡史を振り返り、瑛蒔は不安そうな顔で、ほんとかよ、と言う。匡史が頷いて、ほらほら、と背中を押して砂場まで連れて行くと数人の子供が瑛蒔を見上げた。竦むように瑛蒔が両足に力を入れたのが分かる。
「あ、……あそぼ!」
握り締めた小さな拳を手が真っ白になるまで握りこんで瑛蒔が言い放つ。一瞬の後、見守っていた子供たちは笑顔になって、いいよ、と声を合わせた。
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父さん、パパ、父上――どんな呼び方でも父親を示すそれではなく、保護者だった。そういう難しい言葉を使う家もあるかもしれないし、親戚の子かなにかなのかもしれないと思い匡史は気にすることもなくその場を後にした。
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