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「好きなままでも、別れを告げられれば仕方ない時もありますよね」
「まあ……でも、僕は違うよ」
「本当に?」
匡史が池上を見つめる。その視線に気づいた池上がこちらを窺う。不思議そうなその顔が何も分かってないようで、でも何を分かって欲しいのかも分からなくて、匡史は衝動のままに池上にキスをしていた。逃さないようにしっかりと肩を抱き、唇を重ねる。
その瞬間、ふわりと花が開くような甘やかな香りが漂う。やっぱりこの香りはこの人からするのだと確信した。けれど、アルファのフェロモンを同じアルファの自分がどうして感じるのだろう。それは分からなかったけれど、その香りは匡史の本能のど真ん中に作用するようで、匡史はキスを深くした。
「んっ……か、な、まるくっ……はなし、て……」
キスの隙間から池上の制止する声が洩れていたが、そんなものには構わなかった。強引に舌先を繋ぎ、嬲るように口内を舐め上げるとその背中が震えるのがわかる。上体に体重をかけ、池上の体を倒すと、ゆっくりと唇を離した。
「なん、なんだ……この間から、急に……」
「わかんないんです。ただ、こうしたいって思ったから、そうしました」
「君は考えるってことをしないのか」
「すみません、得意じゃなくて。でも……課長から香りがするんです……抗えないくらい、いい香りが」
シャツの裾から手を忍ばせると、池上の両手がそれを拒んだ。その手を剥がして、片手で纏め上げると、頭の上に押さえる。新しいソファだというのにスプリングが軋むほどに強く両手を押さえてしまい、池上が眉をしかめた。
「離せ」
池上は匡史を睨みあげて言うが、匡史に言うとおりにするつもりなど一切ない。
「大声でも出しますか? 瑛蒔、起きますよ」
「やめろ……君とはこんな風に……なりたくない」
見下ろす目が真剣に訴える。けれど匡史は緩く首を振った。
「無理です。俺は、あなたを抱きたい」
匡史はそれだけ言うと池上の素肌に指を滑らせた。暖かく滑らかな肌は、するりと匡史の指を受け入れ、粟立ち熱を上げる。尖った胸の粒を指の腹で弄ぶと池上の顎の先が反り返る。パンツの前を寛げ下着の上から中心を撫でると池上が驚いたように小さく声を立てた。
「やめ……」
「感じますか? 好きじゃなくても、こんな風になりたくない相手でも」
「違う、ちがっ……んっ……」
匡史が下着ごと中心を扱くと池上が腰を跳ね上げた。辛そうな表情は匡史の中の嗜虐心を煽り、もっとどうにかしてやりたいと思ってしまう。苛めたいわけでもないし、なにか恨みがあるわけでもない。ただ、池上のその表情が見たいだけだった。匡史は池上の中心に直接触れ、愛撫を始めた。静かなリビングに、次第に淫らな水音が響き始める。熱を散らすような短い呼吸を繰り返す池上の表情はそれだけでこっちが煽られるほどに妖艶だった。
「かな……も、無理っ……」
「いいですよ。このまま手で受け止めます? それとも口の方が好きですか?」
「そんなの……っ」
その言葉が途切れる前に池上は匡史の手の中に精を吐き出した。匡史はぼんやりと手のひらを見つめる。舌先で舐めると、苦くて男のものに違いなかった。なのに、ひとつも嫌ではない。
しかし次の瞬間、匡史の手は、池上のシャツに包まれてしまった。見ると、真っ赤な顔で池上がこちらを見ている。羞恥と憤怒が混ざったようなその顔に、匡史は笑いかけた。
「そんな顔しなくてもいいじゃないですか」
「手、洗って帰れ」
「そんな冷たいこと言わないでください」
「最後までさせろっていうんじゃないだろ? だったらもう帰ってくれ」
池上は衣服を直すと、すっと立ち上がって別の部屋へと消えた。匡史はその背中を見送ってから、拭われた右手に視線を落とす。徐々に冷静になっていくにつれ、直前までの自分に動揺し始めていた。衝動とはいえ、アルファの男上司になんてことをしてしまったのだ……そう思うと居たたまれなくて、匡史は荷物を纏めてすぐに部屋を後にした。少し冷静になった匡史は大きく息を吐いてから、マンションを一度振り返る。
「……もっと触れたかったな」
ふと、そんな言葉が漏れて、匡史は首を振った。
バカなことを思うなと自分を叱咤して、匡史はようやく家路についた。
「まあ……でも、僕は違うよ」
「本当に?」
匡史が池上を見つめる。その視線に気づいた池上がこちらを窺う。不思議そうなその顔が何も分かってないようで、でも何を分かって欲しいのかも分からなくて、匡史は衝動のままに池上にキスをしていた。逃さないようにしっかりと肩を抱き、唇を重ねる。
その瞬間、ふわりと花が開くような甘やかな香りが漂う。やっぱりこの香りはこの人からするのだと確信した。けれど、アルファのフェロモンを同じアルファの自分がどうして感じるのだろう。それは分からなかったけれど、その香りは匡史の本能のど真ん中に作用するようで、匡史はキスを深くした。
「んっ……か、な、まるくっ……はなし、て……」
キスの隙間から池上の制止する声が洩れていたが、そんなものには構わなかった。強引に舌先を繋ぎ、嬲るように口内を舐め上げるとその背中が震えるのがわかる。上体に体重をかけ、池上の体を倒すと、ゆっくりと唇を離した。
「なん、なんだ……この間から、急に……」
「わかんないんです。ただ、こうしたいって思ったから、そうしました」
「君は考えるってことをしないのか」
「すみません、得意じゃなくて。でも……課長から香りがするんです……抗えないくらい、いい香りが」
シャツの裾から手を忍ばせると、池上の両手がそれを拒んだ。その手を剥がして、片手で纏め上げると、頭の上に押さえる。新しいソファだというのにスプリングが軋むほどに強く両手を押さえてしまい、池上が眉をしかめた。
「離せ」
池上は匡史を睨みあげて言うが、匡史に言うとおりにするつもりなど一切ない。
「大声でも出しますか? 瑛蒔、起きますよ」
「やめろ……君とはこんな風に……なりたくない」
見下ろす目が真剣に訴える。けれど匡史は緩く首を振った。
「無理です。俺は、あなたを抱きたい」
匡史はそれだけ言うと池上の素肌に指を滑らせた。暖かく滑らかな肌は、するりと匡史の指を受け入れ、粟立ち熱を上げる。尖った胸の粒を指の腹で弄ぶと池上の顎の先が反り返る。パンツの前を寛げ下着の上から中心を撫でると池上が驚いたように小さく声を立てた。
「やめ……」
「感じますか? 好きじゃなくても、こんな風になりたくない相手でも」
「違う、ちがっ……んっ……」
匡史が下着ごと中心を扱くと池上が腰を跳ね上げた。辛そうな表情は匡史の中の嗜虐心を煽り、もっとどうにかしてやりたいと思ってしまう。苛めたいわけでもないし、なにか恨みがあるわけでもない。ただ、池上のその表情が見たいだけだった。匡史は池上の中心に直接触れ、愛撫を始めた。静かなリビングに、次第に淫らな水音が響き始める。熱を散らすような短い呼吸を繰り返す池上の表情はそれだけでこっちが煽られるほどに妖艶だった。
「かな……も、無理っ……」
「いいですよ。このまま手で受け止めます? それとも口の方が好きですか?」
「そんなの……っ」
その言葉が途切れる前に池上は匡史の手の中に精を吐き出した。匡史はぼんやりと手のひらを見つめる。舌先で舐めると、苦くて男のものに違いなかった。なのに、ひとつも嫌ではない。
しかし次の瞬間、匡史の手は、池上のシャツに包まれてしまった。見ると、真っ赤な顔で池上がこちらを見ている。羞恥と憤怒が混ざったようなその顔に、匡史は笑いかけた。
「そんな顔しなくてもいいじゃないですか」
「手、洗って帰れ」
「そんな冷たいこと言わないでください」
「最後までさせろっていうんじゃないだろ? だったらもう帰ってくれ」
池上は衣服を直すと、すっと立ち上がって別の部屋へと消えた。匡史はその背中を見送ってから、拭われた右手に視線を落とす。徐々に冷静になっていくにつれ、直前までの自分に動揺し始めていた。衝動とはいえ、アルファの男上司になんてことをしてしまったのだ……そう思うと居たたまれなくて、匡史は荷物を纏めてすぐに部屋を後にした。少し冷静になった匡史は大きく息を吐いてから、マンションを一度振り返る。
「……もっと触れたかったな」
ふと、そんな言葉が漏れて、匡史は首を振った。
バカなことを思うなと自分を叱咤して、匡史はようやく家路についた。
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