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池上の口の中は熱くて、絡まる舌は驚くほど甘かった。砂糖菓子を口の中に放り込まれたみたいに、甘く蕩けるようなキスに、匡史は動揺したまま、それでもその心地良さに溺れていく。
「課長……あの……」
唇が離れ、匡史が池上に視線を向けると、シャツだけを着た池上の太腿を雫が滑っていく様子が見えた。匡史の中に、あってはならない予想がひとつ浮かぶ。
そんな匡史の考えなど、池上にはすぐに分かったのだろう。ふ、と口の端を引き上げ池上が口を開いた。
「ヒートだよ」
「ヒート……って、え……」
「いつもなら薬で抑えられるくらい軽く済むのに……金丸くんのせいだ……あんなことするから……君の香りが体中に残ってるんだよ」
このヒートは君のせいだ、と池上がこちらを見上げる。強い香りとその艶のある表情に抗えるはずがなかった。
「待って、ください……ラットにならないように、します、から」
匡史はスーツのポケットを探り、錠剤のシートを取り出した。その中から一錠取り出しそのまま飲み下す。
「なってもいいよ……もういっそ噛んでもいい」
「バカ言わないでください」
池上が匡史の胸にしなだれるように寄り掛かる。匡史はめまいと興奮の中、池上の細い体を抱きしめた。
「触るだけです。噛みません、絶対」
匡史はそう言って池上の体を抱きあげる。既に乱れているベッドに池上を運び、シャツの裾から見える池上の中心に触れた。熱く、既に何度も吐き出したのだろう、もうドロドロになっている。匡史はこのまま抱いてしまいたいと思う気持ちを深く呼吸を繰り返すことで抑える。もう少しでさっき飲んだ鎮静剤も効いてくるはずだ。
「んっ、もっと……」
池上がこちらを見上げねだる様に腰を持ち上げる。ベッドの端に座ってそれを見下ろす匡史はこれまでに経験したことのない興奮に包まれていた。これまでそれなりに恋愛もしたし、女の子と関係も持って来たが、こんなに相手を欲しいと思ったことはない。
「そんな煽らないでください」
池上の中心を少し強めに扱き、匡史がぐっと唇を噛み締める。そうでもしないとこのまま池上の白く滑らかな肢体を転がして首筋に噛みつきながら犯したいという欲望そのままに動いてしまいそうだったのだ。
「あっ、後ろも、指でいい、から……前だけじゃイケない」
乱れた呼吸の間から池上が懇願するように言う。膝を開き、こちらに見せる後孔は、赤く色づいている花のようだった。匡史はおずおずとそれに触れる。
「あんっ……もっと、奥、入れて」
匡史は言われた通りゆっくりと池上の中へと人差し指を進めた。少し入れて、ゆっくりと出してと繰り返すと、池上の口からは、言葉が出なくなっていた。絶頂が近いのだろう。匡史は池上の蕩けた表情から目を逸らし、中心を握る手と、後ろに入れた指、両方の動きを速めた。
「あっ、あっ、いく、いっちゃっ……!」
ん、と絶頂を告げる掠れた声が響き、遅れて匡史の手の中に温かい白濁が零れる。
「……課長?」
いったと分かって匡史が池上に視線を戻すと、そこには安らかに寝息を立てる池上がいた。さっきまで充満していた香りも段々と薄れている。
「落ち着いたって、ことで、いいのかな……」
匡史は近くに転がっていたティッシュボックスを引き寄せ、それで自分の手と池上の体を簡単に拭うと、池上のシャツのボタンをきちんと留め、その体に布団を掛けてから、再びその寝顔を見つめた。訳もなく引き寄せられ、そのままキスをする。
「また、俺……」
何も考えられず自然にキスをしてしまったことに自分で驚いて、匡史は逃げるようにその部屋を飛び出した。
ドアを閉め、ほっと息を吐く。まだ池上の香りを纏っているような気はするが、さっきのように体の中心に響くようなものはない。池上が落ち着いたことと、さっき飲んだ薬が効いているのだろう。
「……マサチカ?」
こちらのドアが開く音を感じたのだろう。リビングの入り口で、心配そうにこちらを窺う瑛蒔が佇んでいた。匡史はそれを見てふと笑顔を作る。
「瑛蒔、飯にしないか?」
「こんな時になんだよ、マサチカ。ソウジが心配じゃねーの?」
「課長ならもう大丈夫だよ。それより、昨日から飯食ってないんだろ? 病み上がりにそれはよくない」
「オレのことなんて、どうでも……」
「よくないよ。俺の心配を二人分に増やすつもりか?」
匡史が諭すように言うと、仕方なく瑛蒔が頷いた。
それを見た匡史はそのままキッチンへと向かった。冷蔵庫を開けて何が作れるか考える。
「マサチカ、料理できんの?」
ちょこちょことついて来た瑛蒔がそっと様子を窺う。
「簡単なのならなー。オムライス、好きか?」
「好き!」
「そっか。じゃあ、ひき肉あるからハンバーグとオムライスに使って……瑛蒔はサラダ担当な」
「オレも?」
「そう。レタスちぎって、ミニトマトのヘタを取って、ベビーコーンの缶詰を開ける。大変だぞ、出来るか?」
匡史が笑って聞くと、やれるよ、と気鋭な返事が返ってきた。よし、と瑛蒔の頭を撫でてから、匡史は料理へと入った。
三十分後、不恰好なサラダと、オムライスにハンバーグが出来上がった。
「すげー、美味そう!」
瑛蒔は目を輝かせ、食卓に並ぶ皿を見つめた。自分で作ったサラダにも満足しているようだ。
その顔を見てから、匡史は自分の腕時計に視線を向けた。午後二時を過ぎたところだ。さすがにそろそろ仕事に戻らなければならない。
「瑛蒔、悪いけど俺仕事戻るから……一人で食べれるか?」
「……いいけど……二人分あるじゃん」
ダイニングテーブルに置かれた皿を見つめ、瑛蒔が首を傾げる。
「それは課長の分。今寝てるから、起きたらお腹空いてるだろうしな」
匡史がそう言って瑛蒔の頭を撫でる。少し不満そうな顔をしていたが、やがて、分かった、と頷いた。
「ソウジのことは、オレに任せろよ」
「ああ、任せたよ」
そう言うと匡史は瑛蒔に笑顔を向けてからその場を後にした。
「課長……あの……」
唇が離れ、匡史が池上に視線を向けると、シャツだけを着た池上の太腿を雫が滑っていく様子が見えた。匡史の中に、あってはならない予想がひとつ浮かぶ。
そんな匡史の考えなど、池上にはすぐに分かったのだろう。ふ、と口の端を引き上げ池上が口を開いた。
「ヒートだよ」
「ヒート……って、え……」
「いつもなら薬で抑えられるくらい軽く済むのに……金丸くんのせいだ……あんなことするから……君の香りが体中に残ってるんだよ」
このヒートは君のせいだ、と池上がこちらを見上げる。強い香りとその艶のある表情に抗えるはずがなかった。
「待って、ください……ラットにならないように、します、から」
匡史はスーツのポケットを探り、錠剤のシートを取り出した。その中から一錠取り出しそのまま飲み下す。
「なってもいいよ……もういっそ噛んでもいい」
「バカ言わないでください」
池上が匡史の胸にしなだれるように寄り掛かる。匡史はめまいと興奮の中、池上の細い体を抱きしめた。
「触るだけです。噛みません、絶対」
匡史はそう言って池上の体を抱きあげる。既に乱れているベッドに池上を運び、シャツの裾から見える池上の中心に触れた。熱く、既に何度も吐き出したのだろう、もうドロドロになっている。匡史はこのまま抱いてしまいたいと思う気持ちを深く呼吸を繰り返すことで抑える。もう少しでさっき飲んだ鎮静剤も効いてくるはずだ。
「んっ、もっと……」
池上がこちらを見上げねだる様に腰を持ち上げる。ベッドの端に座ってそれを見下ろす匡史はこれまでに経験したことのない興奮に包まれていた。これまでそれなりに恋愛もしたし、女の子と関係も持って来たが、こんなに相手を欲しいと思ったことはない。
「そんな煽らないでください」
池上の中心を少し強めに扱き、匡史がぐっと唇を噛み締める。そうでもしないとこのまま池上の白く滑らかな肢体を転がして首筋に噛みつきながら犯したいという欲望そのままに動いてしまいそうだったのだ。
「あっ、後ろも、指でいい、から……前だけじゃイケない」
乱れた呼吸の間から池上が懇願するように言う。膝を開き、こちらに見せる後孔は、赤く色づいている花のようだった。匡史はおずおずとそれに触れる。
「あんっ……もっと、奥、入れて」
匡史は言われた通りゆっくりと池上の中へと人差し指を進めた。少し入れて、ゆっくりと出してと繰り返すと、池上の口からは、言葉が出なくなっていた。絶頂が近いのだろう。匡史は池上の蕩けた表情から目を逸らし、中心を握る手と、後ろに入れた指、両方の動きを速めた。
「あっ、あっ、いく、いっちゃっ……!」
ん、と絶頂を告げる掠れた声が響き、遅れて匡史の手の中に温かい白濁が零れる。
「……課長?」
いったと分かって匡史が池上に視線を戻すと、そこには安らかに寝息を立てる池上がいた。さっきまで充満していた香りも段々と薄れている。
「落ち着いたって、ことで、いいのかな……」
匡史は近くに転がっていたティッシュボックスを引き寄せ、それで自分の手と池上の体を簡単に拭うと、池上のシャツのボタンをきちんと留め、その体に布団を掛けてから、再びその寝顔を見つめた。訳もなく引き寄せられ、そのままキスをする。
「また、俺……」
何も考えられず自然にキスをしてしまったことに自分で驚いて、匡史は逃げるようにその部屋を飛び出した。
ドアを閉め、ほっと息を吐く。まだ池上の香りを纏っているような気はするが、さっきのように体の中心に響くようなものはない。池上が落ち着いたことと、さっき飲んだ薬が効いているのだろう。
「……マサチカ?」
こちらのドアが開く音を感じたのだろう。リビングの入り口で、心配そうにこちらを窺う瑛蒔が佇んでいた。匡史はそれを見てふと笑顔を作る。
「瑛蒔、飯にしないか?」
「こんな時になんだよ、マサチカ。ソウジが心配じゃねーの?」
「課長ならもう大丈夫だよ。それより、昨日から飯食ってないんだろ? 病み上がりにそれはよくない」
「オレのことなんて、どうでも……」
「よくないよ。俺の心配を二人分に増やすつもりか?」
匡史が諭すように言うと、仕方なく瑛蒔が頷いた。
それを見た匡史はそのままキッチンへと向かった。冷蔵庫を開けて何が作れるか考える。
「マサチカ、料理できんの?」
ちょこちょことついて来た瑛蒔がそっと様子を窺う。
「簡単なのならなー。オムライス、好きか?」
「好き!」
「そっか。じゃあ、ひき肉あるからハンバーグとオムライスに使って……瑛蒔はサラダ担当な」
「オレも?」
「そう。レタスちぎって、ミニトマトのヘタを取って、ベビーコーンの缶詰を開ける。大変だぞ、出来るか?」
匡史が笑って聞くと、やれるよ、と気鋭な返事が返ってきた。よし、と瑛蒔の頭を撫でてから、匡史は料理へと入った。
三十分後、不恰好なサラダと、オムライスにハンバーグが出来上がった。
「すげー、美味そう!」
瑛蒔は目を輝かせ、食卓に並ぶ皿を見つめた。自分で作ったサラダにも満足しているようだ。
その顔を見てから、匡史は自分の腕時計に視線を向けた。午後二時を過ぎたところだ。さすがにそろそろ仕事に戻らなければならない。
「瑛蒔、悪いけど俺仕事戻るから……一人で食べれるか?」
「……いいけど……二人分あるじゃん」
ダイニングテーブルに置かれた皿を見つめ、瑛蒔が首を傾げる。
「それは課長の分。今寝てるから、起きたらお腹空いてるだろうしな」
匡史がそう言って瑛蒔の頭を撫でる。少し不満そうな顔をしていたが、やがて、分かった、と頷いた。
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「ああ、任せたよ」
そう言うと匡史は瑛蒔に笑顔を向けてからその場を後にした。
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