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しおりを挟む展示会の打ち上げには店を借り切るほどの人が集まっていた。聞けば、企画部の人たちから組み立ての倉庫作業員まで集まっているらしい。やっぱ本社ってすげーよ、と思っていると傍から、あの、という声が聞こえてきた。
「よかったら、こっちに座りません?」
長いテーブル席がいくつか並んでいる店内の真ん中に突っ立っていた匡史はその声に、すみません、と謝る。
「邪魔ですよね、こんなとこ立ってたら」
笑顔で頭を下げると、いえ、と女の子たちがかぶりを振った。見れば、その辺りにはキレイな女の子ばかりが集まっていて、一様に匡史、そして隣の安藤を見上げている。
「もし、席がお決まりでなかったらご一緒したいなと思って。札幌からいらしてる方たちですよね? 会場でもお話しようと思ったんですけど、すぐ帰られてしまったから……」
さすがに女の子は耳ざとい。このへんは、本部も地方も変わらないらしい。匡史は、どうしようかと安藤を見上げた。この機に本社の男性社員と情報交換をする予定だったのだ。
「金丸の好きにしたらいいよ」
匡史は少し考えてから、お言葉に甘えて、と近くの椅子を引いた。どうせすぐには終わらない会だから、酒が入って口が軽くなった頃に場所を移動すればいい、それまでは女の子たちに構うのも悪くないと思ったのだ。ただ、今までの匡史とは違っていて、ここに運命の人が居るかも、なんてことは思わなかった。気持ちは未だ、池上のところへと置いてきてしまっているのだろう。
席に着いてからは、質問責めに遭い、名刺も大分用意していたはずなのに半分以下になってしまっていた。安藤も同じようで、次からは女に配るな、と釘を刺されてしまった。一時間ほど、面接かオーディションかという気分を味わったところで、安藤が立ち上がった。
「金丸、本田さんのところへ挨拶に行かないか?」
それは、ここを離脱しようという合図だとすぐにわかった。匡史は、忘れてたな、と言いながら立ち上がる。
「え、もう行っちゃうんですか?」
「戻ってきます?」
周りから、もっと話したい、つまんない、と言われながら、ごめんね、と匡史は笑顔のまま眉を下げる。
「戻れたら戻るから、必ず」
そう言いながら、匡史は煙草をしっかりスーツの中に収め、忘れ物がないかをきっちり確認してから席を離れた。当然安藤も同じく、彼はしっかりビールも飲みきっていた。もう戻らないよ、と暗に知らせているあたり、安藤の方がやっぱり上手なのだと思う。
「で、どのあたり行きます? 安藤サン」
「そうだな……まずは営業部、かな。それから企画とも話してみたい」
「あら、奇遇。俺もそのルート賛成」
行くか、と安藤が目顔で言う。匡史はそれに頷いて、さっき女の子たちから得た情報を元に店内を歩き始めた。そこへ、金丸くん安藤くん、と声が掛かった。本田が笑顔で手招きをしている。
「あの辺、企画か?」
安藤が聞くので、おそらく、と小さく答える。本田はたしか企画課の主任だったはずだ。
順番は変わってしまうが、いずれ話をしたいと思っていた人たちだ。予定変更、と小さく安藤が呟き、匡史はそれに従った。
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